第9話 戦闘訓練。
次の行動。・・・グローブの性能を上げること。
この二十年、ずっと使い続けている。・・・その間、グローブが進化を促すような部分があり、どの部分をするべきか、迷っていた。
・・その為に、この件は一旦保留にし、拠点作りを優先した。
・・それが終わった今、グローブに移ることにした。
・・正直、殴る方をするべきかと思ったが。・・・もし、打撃無効化のスキルを持つ敵に遭遇したらアウト。・・ならば、斬撃、つまり爪の部分を進化させようとした。
・・と言うよりも指の部分はない、だが、試しにやってみた。
すると、グローブから小さい鎖が五本指に伸び、爪の先に到達すると淡い光を出し、消えると鋼鉄制の爪ができていた。・・・さながらクローである。
これならば斬撃攻撃も可能だ。・・後は、これに有効な攻撃スキルを獲得するだけだ。
・・私は人気の無い森に入った。・・・攻撃の修行は精神集中できる森に限る。しかし、中々上手くいかない。
・・攻撃は、`修理`や`開発`みたいな日常で習得する物ではない。
・・どれだけ思い描こうと実行する難しさというかやりにくさを感じる。
・・・まさに、言うは易く行うは難し。だな。
・・・そう思っていると、気配を感じた。振り向くと、野犬がいた。それも複数。・・・いい練習相手である。
・・・・襲ってくる野犬の群れに私は、グローブの爪で攻撃。
・・・右手刀からの斬撃、そこからの突きの攻撃。・・・様々な攻撃手段を用いて野犬の群れを倒していった。・・・その時である。
・・`斬爪`というスキルを獲得。・・効果は斬撃の威力が上がっている。
・・習得前は成熟した木を引っ掻くだけだったが、習得後は木を斬り倒すほどの威力になった。・・更には、離れた場所から斬撃を飛ばすこともできた。
・・・だが、一度何かに当ると切り傷を与えるがすぐに消える。
・・そのままの勢いで斬り続けることはない。・・範囲も十メートルが限界のようだ。だが、習得できる。それだけは確かだ。
・・私はそのまま修行を続けた。
・・ある時はサルを相手に動きの俊敏さと奇襲の対処。・・ある時は毒蛇が音もなく近づいてきたときの対処。・・・森に生きる動物相手に戦ってきた。
・・中でもこれは大きいと感じたのはイノシシと戦いである。
・・あの突進力は相当な威力であった。人間ならば即死の攻撃。・・悪魔の力を得た私でも受け止めるのが精一杯であった。
最初はさすがに無理で避けたが、次こそはと思い、身構えていた。
・・何とか角を掴むことができたが、それ以降動けずにいた。・・力一杯右横に体を動かし、イノシシを投げた。・・木にぶつかるイノシシ、すぐに起き上がりこちらを睨んだ。
・・ノーダメージか、さすがにタフである。・・・私は、再び身構えた。・・イノシシは突進してきた。それを受け止める私。先ほどと同じ事である。
このままでは埒があかない。もっと力を。
・・そう思った時、`怪力`を覚えた。
・・・発動すると、先ほどとは違い、まるで羽のように軽かった。イノシシは上空に投げだされ、落下してきた所を腹に右ストレートを放った。・・イノシシは再び木に激突。・・今度は動かなくなった。
・・私はイノシシを持ち帰り、美味しくいただいた。
・・・やはり、実際にやってこそスキルを習得できるようだ。・・しかし、まだ心配だ。
・・新人潰しがやっていたことを考えると私に近い浅い寿命を生きた存在はいないと考えるべきだ。・・・とすると、最低でも百年は生きている悪魔が多数いるべきだな。
正直、関わりたくない。
・・何かしらのイベントや倒せば特典が貰えるならともかく、ただ相手が集めたポイントとレベルが一気に上がるだけ。
・・・メリットが少なすぎる。
・・・いや、他にもあるが、私のレベルでは知る権利がないだけか。・・・いずれにしてもこちらから打って出る必要は無い。
・・・もう少し、攻撃系のスキルを獲得してから日本中を散策してみるか。
・・・あまりにも無知すぎると何もできない。・・現に、今まで使っていた携帯が、iponeなる物に変わっていて、私の携帯がガラパゴス携帯と呼ばれ、かなり蔑まれていた。
・・・今ではiponeに変えているし、テレビでの最新情報も入手している。・・だが、本当にそれで合っているのかと言われれば自信がない。
・・・この目と耳で感じてこその真実である。
・・・修行を続けることにした。
・・・同日、昼頃。
田んぼが広がる田舎。・・目立った観光名所がなく、誰も来ることのない寂しい村。・・住んでいるのは都会での暮らしに疲れ、残りの余生をのんびり過ごす年老いた人達ばかりである。
・・・そこに場違いな女性がやって来た。
・・美しい金色の短髪、蒼い瞳、スレンダーな体格、少し大人びているがまだ子供っぽい顔をしている。シスター服に身を包んだ可憐な女性。
・・・男は勿論、女性でさえも見惚れてしまうほどの美女である。
・・・シスターは。
「・・こんにちは、私はレナと申します。・・・この辺りに不吉な洋館があると聞き、調べに来たのですが?・・・ご存じでしょうか?」
この質問に男老人は。
「・・・ん?・・・あぁ~~、あの屋敷ね。確かに近寄りたくない屋敷だが、・・・あそこは、ほれ、もう誰か住んでいなかったか?」
この質問にばあさんは。
「・・ん~~~。あ~~~、いるね。・・・十年以上前から住んでいる変わった青年。・・・昔は、時々、来ては手伝ってくれているが。・・・今では、姿見せてないね。・・・まだ居るんだったか?」
この質問に他の老人は首を傾げていた。
シスターは。
「・・分かりました。・・どうも、ありがとうございます。」
お礼を言って屋敷に向かった。
・・・あそこに誰か住んでいる。・・しかも長いこと。・・だとすればその方は彼女と同じ霊感が強く、対処法も知っていると言うことになります。
・・・なれば、共に協力して屋敷を浄化しなければなりません。
・・・しかし、住んでいる人がいるとは、シスターの情報はあまりにも古すぎていたようである。
・・・・それも仕方ない。
・・何しろ彼女にとってこれは初めての仕事なのだから。