第8話 今までの行動。
私はとある田舎に身を置いていた。
木々が多い村、都会から五時間はかかる距離。
のどかな風景。・・そこで私は一軒家に住んでいた。・・昔に作られ放棄された洋館。・・住むだけなら問題ない。
・・私はテラスの椅子に座って二十年の生を思い出していた。
・・新人潰しを倒したことで目立つ恐れを感じ、その場から逃走。・・・次の街で資金集めとして競馬をし、稼いだ金額は二千万。
・・当面は大丈夫だと判断し、次の行動である浮遊霊の経験値集めをした。
・・それを知ったときから、町中に多くの浮遊霊を目撃した。
・・最初の一体を倒したが歯ごたえがなさ過ぎる、まるで空気を斬った感触である。・・だが、経験値になったのは少しだけ感じた。
それからは浮遊霊狩りをしながら資金集めをしていた。
・・競馬で稼ぎに稼いで、その金額は一億まで上がった。・・さすがに現金で持ち歩くには多すぎるので銀行口座を作った。・・・身分証明書に運転免許証を提示した。
・・偽造書で作った免許証、戻せば、免許証に関する資料が消えるが、一度作れば余程の事が無い限り本人確認を求めることはない。・・はずだったが、一度消した後、再び免許証にした時。
銀行の口座が一時期、使えない状況になった。
・・・調べたら、銀行は定期的に書類を送ることが判明。・・住所がない口座があれば一時凍結になってしまうらしい。
・・幸い、金は百万しか入っていないので困ることはなかった。・・万が一に備えて、ほとんど出しておいて正解であった。
以来、免許証の更新が近づく頃には銀行を解約して、新しく作る日々に変わった。
私はそんな生活を繰り返していた。
・・そして、金が貯まった頃、次に実行したのが拠点作りである。
今までの住まいはビジネスホテルを転々としていた。・・だが、このままではいけない。長く、安心して暮らせる家が必要。
・・何時、何が起こるか分からない世界に入った以上。・・備えておく必要がある。
私は人がほとんど来ない廃墟を探した。
・・そこなら安いし、不気味だが悪魔の力を手に入れた私に怖いものはない。
・・・不動産を探していた時に見つけた。・・田舎にある棄てられた洋館。
・・何でも昔、とある金持ちが住んでいた屋敷で、かなりの贅沢をしていた。・・しかし、その洋館では謎の殺人事件があり、最初は不注意による事故だと言われていたが。・・・疑問に思った一家の娘が探偵を雇い、調査を依頼した。
その結果、家の主人である父親と母親が地下室で何人かの女性が監禁、拷問を受けていた。
・・警察に通報し逮捕された後、取り調べで、ただの趣味であったことが判明。
・・娘は居づらくなり、匿うという名目で探偵の助手になったという。
・・それ以降、何人かの人が好奇心で買った後、夜な夜な不気味な声が響いていたようで、すぐに売却された。・・以来、買い手がつかず、ずっと放置されていた。
不動産も厄介払いができた思いで、格安の千円で売ってくれた。
・・・着いた早々、かなりの浮遊霊がいた。
・・・生きている人間が少ない田舎なのに何故かと思ったが、洋館の周囲を見て分かった。・・土地の力、霊脈が異様に多い。・・その流れに乗って浮遊霊がこっちに来た。
・・霊脈についてはインプからの説明にはないが、あれからオカルト本を調べていく内に、`調査`のスキルを獲得。
・・これは見ただけで周囲にある目に見えない力の流れや中の構造が分かる。但し、無機物のみだが。
・・私は早速、浮遊霊狩りをした。・・洋館にいる全ての浮遊霊を狩った後、洋館の修繕を実行した。
・・最初は業者に頼もうとしたが、場所のことを教えた時、誰もが断った。
・・噂を知っていったようである。
・・・仕方なく、私が修繕することにした。・・幸い、時間もあるし、道具を買う金もある。・・本をいくつか買い、やることにした。・・壁の修繕や扉の金具が錆びていたので直していたが、雑で、失敗したりと苦労したが、諦めなかった。
・・ここを拠点にする以上、修理技術は絶対に必要だ。
・・その時、スキル`修復`を覚えた。
・・そこからはまるで息をするかのように次々と修繕していった。
・・水道関連であるキッチン、トイレ、風呂場。水道の修繕も完了した。・・水は貯水タンクが最初から置いてあり、雨水や近くの川から引き入れることもできる。
ガスはプロパンガスのボンベを買い、設置完了。
・・・エアコンやテレビ、パソコンの設備も終わった。・・後は電気を通すだけだが、電力会社が断っていた。
・・ここの噂はどこまで浸透しているんだと思ってしまった。
・・自家発電を作ることにした。
最初は自転車で電気を作れるかもと思い、自作したが失敗の連続、しかし、これも諦めることなく作り続けたら、スキル`開発`を覚えた。
・・そこからも頭の中に色々な情報が入り、自家発電作りは成功した。
・・一時間回せば二十四時間分の電力を得られた。
・・最初は面白いからやっていたが、段々と面倒くさくなり、次の発電機を作ることにした。
今度は水車を作った。・・・水は貯水タンクの水を利用して回し、流した水は別のタンクに入れ、第二のタンクとして一階用に設置した。
最初のタンクは水車を回す為に改良した。
こうして、洋館での生活は寂れたものから充実した日々に変わった。・・しかし、仕事を諦めずにやり続ければ習得とは。・・・悪魔になって良かった気がする。
・・人間ならば習得できたか、分からないのだから。
・・・拠点作りが完了し、防犯カメラもつけた。
・・そろそろ次の行動。・・ポイント集めである。
・・拠点作りから五年。
・・新人潰しのいた街から少し離れた場所で獲物探しをした。・・殺人犯が逃走したというのですぐに見つけて狩った。
・・・その中で、一番印象に残っているのが、あの事件。
・・人身売買のオークションである。
・・・日本で?と思ったが事実である。
・・この情報を知ったのはとある雑誌記者が瀕死の重傷で路地裏に倒れているのを私が発見した。
病院に連絡しようとしたが、記者が。
「・・や、やめておけ。・・びょ、びょう、いん、にも、やつらの手が、ま、わ、っ・・・」
それを最後に息を引き取った。
私は遺体を焼き、骨を粉々にした後、川に流した。
・・せめて、海に帰れるように。・・・私は記者が残した記録を見た。
・・若い女を見つけては犯罪者に仕立て上げて、警察が逮捕。・・その後、護送中に事故死したとして、世間に公表した。
・・地下での監禁生活で逆らえないように教育し、オークションに掛ける。
・・無法の国だなと思わせる所業であった。
私はそこに向かった。・・・警察には当然、通報しない。・・同じ悪人だから。
・・・私自身も正義の味方を名乗るつもりはない。
・・人殺しはどこまでいっても汚名が消えることはない。
・・・ビルに潜入し、息を潜めながら移動した。・・狙うは首謀者と協力者。・・この二人はポイントが高そうだし、そして、生かしておく必要もない。
・・オークションが開催される直前、VIP席に座る二人がいた。
・・一人は、主催者の警察署署長。もう一人は融通を利かせ、資金援助している政治家。・・後の連中はボディーガードのようだ。・・当然銃は携帯している。
さてと、オークションが終わる頃に、あの二人が至福の時を満喫したら殺すか。・・最後くらいは良い夢を見させてやる。・・・底意地の悪い笑顔で思った。
開始してしばらくすると。
「動くな!!!警察だ!!」
その叫びと同時に警官隊が突入してきた。
・・署長がいるのに突入とは、知らない末端の警官が仲間を引き連れてきたと言った所か。
・・・さすがの客達も大慌てで逃げようしていた。
複数のボディーガード達が銃を抜こうとしたが、誰も抜かなかった。・・警官隊が来た以上、余計な銃撃戦はしない、といった感じである。
・・・VIP席にいた二人はそそくさと逃げていった。
それを警官隊を率いていた上官が分かっていながら見逃した。
・・・なるほど、オークションの存在は知っていたが、主催者が誰か知らなかったと言うこと。・・本来なら上の人間に報告して許可を貰うのだが、今回は独断で動いたようだ。
正義感が強いようでご苦労なことだ。
・・さてと、私は仕事に移ることにした。
地下通路を歩く二人。
ボディーガード達に護衛されながら進んでいた。
政治家が。
「・・全く!!何をやっているのだ!?・・こういう事態にならないように君を主催者にしただろうが?!」
この叱責に署長は。
「も、申し訳ありません!!・・あの者は署の巡査部長です。・・頭の硬い堅物で、こちらに引き込むには不可能だったので、関わることのない場所で勤務させていたのですか。・・一体、どこから情報を・・」
この言い訳に政治家は。
「ええい!!うるさい!!・・こうなってしまった以上。・・君には責任を取って貰うことになるが?」
脅迫とも言える言葉に青ざめた署長は。
「お、お待ちください!!・・奴は私の顔を見て見逃しました。・・逮捕する気ならその場でやっています。・・・しなかったのは、私だと知らなかったのでしょう。」
「・・でしたらやり用はいくらでもあります。・・まず、奴を職務違反とかにして、どこかに飛ばします。・・その後に風評を流せば、奴を信じる人間はおりません。・・・まだ、私は街では民衆の味方と呼ばれています。」
引きつった笑顔で今後の事を話した。
政治家はムカつきながらも安心した表情で。
「・・ふん。・・以後、気をつけるように。」
この言葉に署長は頭を下げた。
・・巡査部長の未来が暗闇になり、また新しい場所でオークションをすればいい。
・・そう思っていた二人に。
「・・残念だが、それはできないようだ。」
どこからか声がした。
全員立ち止まり、周囲を警戒。・・ボディーガード達は銃を抜いた。
二人は真ん中で震えて立っていた。
・・・沈黙する空間。・・その時、天井の壁が壊れた。
瓦礫が降ってきたことで二人を守るボディーガード達。
そこから降りた私は。
「・・立派な行動だ。・・仕える相手がクズじゃなければ良かったのに。」
そう言って私は右拳を腹にめり込んだ。
グローブの力を解放し、衝撃を放った。・・・ボディーガードは口から血を吹き出し、絶命した。
・・人間相手では即死級の威力だな。
・・他の三人も同様に殴り殺した。
残った二人。署長と政治家のみである。
・・・私だけになると署長は。
「・・き、貴様。・・こんなことしてただで済むと思っているのか!?・・このお方をどなたと心得る!!この方はこの国を支える国会議員の一人で在らせられるぞ!!・・その方の護衛達を殺して、軽い罪になると思っているのか!?」
強気発言の署長。
相手が警官でない一般人だと知ると偉そうにする。・・・ムカつくので一発殴った。
・・・飛ばされて壁にぶち当たる署長。
それを見た政治家が。
「・・お、お前、何てことを!!警察署長を殴るとは!!守って貰っている恩を忘れる愚行だぞ!!」
ふざけた事を言う政治家。
ムカつくので一発殴った。
同じように壁にぶち当たる。
・・少し呆けた二人に私は。
「・・お前らのことなど知るか。・・・ここで死んだ所でお前らの代わりなどいくらでいる。」
その言葉を最後に二人を殺した。
・・・遺体は`発火`で燃やした。・・燃え上がる通路、それが広がっていき、建物を焼き尽くしていった。
私はそれを外の隣ビルから眺めていた。
・・・ポイントは七百。
・・六人合わせて百五十か。・・詳細には、署長と政治家、二人合わせて百。・・随分と悪いことをやっている。
・・・世の中の不条理を感じた。
・・国を守る存在が、犯罪に手を染める。この事実に。
・・・私は、今は亡き、記者に、`終わったよ`と呟いて、その場から去った。
・・・あの出来事以来、大きな悪事をする人間はおらず、地味に狩っていった。
・・現在のポイントは一千七百。・・コツコツ貯めた成果である。
・・レベルは二十三。・・これも浮遊霊狩りをコツコツとやってきた成果である。
・・浮遊霊はこの拠点にいるだけで勝手に来るのだから探す苦労もない。・・狩らない時は放っている。・・どうせ自然に消えるし、何かしてきても声を出すだけで、実害も無し。
・・私は落ち着ける場所を手に入れた。
・・・さてと、振り返るのはここまで。
・・ここから次の行動だ。