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男は悪魔を食った。  作者: 満たされたい心
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第7話 悪魔の報告。







 悪魔との戦いを経て、同じビジネスホテルに泊まった。


 ・・改めて考えた。・・インプから新しく聞いた情報。低級悪霊でもレベルが上がるという私に嬉しい情報。・・・だが微々たるもので効率が悪いらしい。・・・しかし、悪魔と戦う危険は少ない。

 ・・ならば、地味でも上げるしか無い。


 ・・・レベル七。

 ・・最低でも十五ぐらいは欲しい。


 ・・・出なければ勝てない。・・・後はスキルの確保。


 ・・これも組み合わせによって応用が利く。先の戦いでも戦場が倉庫街だから良かった。もし、次に戦う場所に何も無かったら絶対に死ぬ。・・それだけは嫌である。・・ならば、どこにいても通じるスキル獲得する必要がある。・・・それも多くのスキルが。


 ・・無職というのは気になるが、恐らく、種族の可能性がある。・・・ゲームでもよくあるシステムだ。例えば、ある一定のレベルに達すると職業を選ぶことができ、それに見合った力が手に入る。・・・RPGによくあるキャラを強くする方法だ。


 とすると、ここからが大変だ。・・あいつが新人を潰す辺り、強い存在では無いだろうが、問題は、どれだけの悪魔達があいつのことを知っているのか。

 ・・・いきなり現れた新人が、少しだけ上の先輩を倒した。


 話題に飢えている奴なら食いつく可能性が高い。


 ・・・しばらく、浮遊霊を相手にしながら身を隠すか。・・・悪魔に寿命は無い。・・・それを利用する。


 そう思い、私はベッドに寝た。






 場所は変わり、とある武家屋敷。


 鹿威しの音が響く庭園。・・その一室。


 畳のみが埋め尽くす部屋。その広さは三十人は楽勝に入るスペース。


 ・・掛け軸が掛けられている前に胡座で座る一人の男。


 四十代後半、和服を着て、髪は黒で少し白が入っている。・・厳つい顔をしたヤクザの親分のような存在感。

 ・・その人の前に五人の若い衆が正座で座っていた。


 親分はキセルを吹かしながら。


「・・何?・・新人潰しが返り討ちに?」


 この言葉に若い衆の一人が。


「・・はい。・・使い魔からの情報ですが、死んだのは確かだそうです。・・・それも、妙な勝ち方だったという話です。」


 少し淀んだ報告に親分が。


「・・妙な勝ち方?・・・何が妙なんだ?」


 この疑問に一人が。


「・・・その場にある道具を使い、言葉巧みに誘導したとかで。・・・・人間を利用するならまだしも、戦いでは、悪魔らしくないというか。・・・人間みたいなとか。・・・曖昧なものでして。」


 そう言って冷や汗を掻いていた。


 ・・他の若い衆も同様に汗を掻いていた。・・それも仕方ない。


 報告は、迅速かつ詳細に言うもの。


 ・・こんなしどろもどろの報告など上司を怒らせるだけである。


 ましてや、相手は怒らせれば、若い衆五人を一瞬で殺すことができる。・・()()()()を得た悪魔。・・・しかし、報告を纏めようにも、うまく纏まらず、こんな曖昧になってしまった。

 ・・親分はキセルを灰皿に叩いた。


 ・・その音にビクつく若い衆。


 親分は。


「・・・ふん。・・・お前達は知らないから教えてやる。・・・最近現れた悪魔は、人間の体を奪うことに失敗し、逆に力を奪われたと聞く。・・・インプからの情報だ。・・間違いは無い。」


 そう言いながらキセルを吸う親分。


 ・・・インプの情報。奴らはウソをつくことは許されない。・・もし、ウソをつけばその場で砂となり死ぬからだ。

 情報を得るのに苦労はしない。・・聞かれれば答える。ただそれだけである。


 ・・親分がこれを知ったのも、インプに現れた悪魔について聞いたからである。・・最初は半信半疑だが、インプの存在上、偽は有り得ない。

 だが、大ぴら言う必要も無く、新人潰しが動いたのを知って、部下に監視を命じた。


 ・・若い衆の一人が。


「・・し、しかし、そんなことがあるのですか?・・・人間が悪魔の力を奪うなんて・・・」


 その疑問に親分は。


「・・昔はそれなりにあったな。・・精神力は昔の連中の方が強かった。・・・俺も、若い頃、何人か相手にしたことがある。・・・もう五百年と昔だがな。・・」


 そう言って遠い目をする親分。


「・・だが、今の世は軟弱だ。・・悪魔に簡単に乗っ取られる時代だ。・・お前らもそうだろう?」


 そう言って笑った。


 ・・若い衆も同じように少しほくそ笑んだ。


 彼らは生まれて五十年とちょっとだが、今の人間がどれだけ弱いのかよく知っている方である。


 ・・その一人が。


「・・・まぁ、そうですね。・・とすると、今回現れた新人は、精神力が強いと?」


 この疑問に親分が。


「・・かもしれんな。・・とすると、ちょっと厄介だな。・・あいつらは悪魔とは違い、己の力を過信したりはしない。・・常に冷静に、最速最短の動きをする。・・あれが一番うっとしい。・・搦め手で来るんだからな。・・・ふふっ。」


 嫌な気持ちのはずだが、逆に面白いという感想を述べた。


 ・・親分は。


「・・・お前ら。・・・命を下す。・・そいつを連れこい。・・・今回でレベルが上がったようだが、お前らのレベルなら対処はできる。・・生かして連れてこい。」


 この命令に一人が。


「・・・部下にするのですか?」


 この質問に親分は。


「・・・できたらそうする。・・・できねぇんなら、地獄の苦しみを与えるだけだ。・・一生な。」


 かなりエグい笑みを浮かべた。


 ・・若い衆達は一礼をして、退出した。


 一人になった親分は。


「・・まぁ、すぐには無理だろうな。・・・己の力が低いと分かれば、姿を消してコツコツとレベルを上げるだろうな。・・昔の連中のように。」


 そう言いながらキセルを再び灰皿に叩いた。







 高層ビルが建ち並ぶ地域。


 一つの高層ビル、最上階。


 ・・そこは一言で言えば豪華絢爛な造り。・・一級の金持ちしか住むことが許されない高級な部屋。

 

 その部屋の中央、高級感あるソファに座る美女がいる。


 ・・見た目は三十代前半、金髪に、赤いビジネススーツを着て、右手にシャンパンの入ったグラスを掲げていた。

 ・・その後ろにいる黒髪のメガネを掛けた秘書のような女性からある報告を聞いた。


 美女は。


「・・・新人潰しがねぇ。・・・まぁいいんじゃない。あんな小物。・・積極的な所は良かったけど、所詮は無職。・・・死んでも驚かないわ。」


 そう言いながら興味が無いようにシャンパンを飲む。


 秘書は。


「・・では会長。・・・今回、現れた新人の悪魔はいかがいたしますか?」

 

 この質問に会長は。


「・・無視でいいでしょう。・・・そんな奴。・・・どうせ、年季のある悪魔に潰されるだけ。・・・どうでもいいわ。」


 そう言って書類を見ていた。


 中身は仕事関連か、化粧品やら飲料、装飾品のことが書かれていた。


 秘書は。


「・・では、監視は無しにいたします。・・後、会長。・・それらの書類は明日、定例会の議題になりますので、目を通して置いてください。」


 この言葉に会長は。


「・・分かってるわよ。・・あなたもご苦労様。・・下がっていいわ。」


 そう言って仕事に入った会長。


 秘書は`失礼します`と言い、部屋を出た。


 ・・・秘書は報告しなかったが、新人の悪魔は、力を手に入れた人間である。という話を会長にはしなかった。

 ・・何故なら、会長が珍しい物としてコレクションする為に自ら動く可能性が高いからである。


 ・・・仕事が山積みなのを無視して。


 ・・それだけは阻止したい。・・しかし、会長は五百年は生きている()()()()()()。・・一介の悪魔である秘書では絶対に無理である。

 ・・ならば、報告はせずに、ただの悪魔として放置する。


 それがベストの選択。


 実際、新人が生き残るには難しい。・・会長のおっしゃる通り、他の悪魔に倒されることを願うばかりである。







 日本のとある教会。


 そこには五歳くらいの少女がいた。


 ・・少女は信心深く、神はいると信じている。

 ・・・純粋な心を持つ少女は空を見上げた。

 ・・・将来はエクソシストになると、悪魔をやっつけるんだ。


 という思いを抱いて。








 仁朗の知らない所で起きた出来事。


 そんなことになっているとは知らずに彼は翌朝、街から姿を消した。





 そして、二十年の時が流れた。





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