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男は悪魔を食った。  作者: 満たされたい心
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第4話 怒りのままに。







 銀行強盗の騒動に巻き込まれ、その場から離脱した後。


 私は走ること無く歩いていた。・・いくらあの場所から離れたいとは言え、走れば絶対に怪しまれる。

 

 ・・しばらくして人気のあまりない公園に到着。


 そこで一本の缶コーヒーを買い、一服した。


 ・・・一息ついた後、私は`表示`と唱えた。


 ・・内容は変わらない。悪人を三人も殺したのにポイントが入らない。・・インプを呼ぼうかと思ったが、まだ調べていない物があった。

 ・・・`カタログ`を出し、一覧を見た後、最後のページに手形と説明文が書かれていた。


 ・・読むと、ポイントを入れるには手形に手を合わせる、するとポイントがいくら入るのかが表示され、自動的にポイントが加算されます。

 因みに、一人一つの犯罪につき十ポイント、軽、並びに重犯罪は関係無しです。


 ・・と書かれていた。


 ・・早速試してみた。・・・右手を置いた後少しだけ光った後すぐに消えた。


 ・・そして、三十ポイントと表示され、そのまま消えた。


 ・・・三人合わせて三十。・・初犯だったという事か。


 ・・・あまり罪悪感が湧かない、心までも悪魔になったのか、それとも元々こうだったのか。・・今では分からない。

 ・・しかし、どうでもいい。


 ・・私は`表示`と唱えた。ポイントが五十になっている。


 ・・早速カタログの偽造書を購入することにした。


 ・・項目をタッチすると、インプが現れた。


「・・偽造書でいいのか?」


 この確認に私は頷いた。


 すると、インプの両手が光り、A4の紙一枚出てきた。


 インプは。


「・・そこに名前や住所、後は資格が欲しければ、書いてもいい。顔写真は枠内の部分を見つめればいい。・・・後は、変えたい物を唱えれば変わる。・・・解除したい時は手に持って`解放`と唱えれば良い。・・・じゃ~~な。」


 そう言って消えた。


 ・・住所か、今まで使っていた所は使えない。・・とすると、偽造住所?・・・調べられれば分かることだが。

 それは犯罪を犯した人間の時のみ、何もしていない人間を調べようとは警察は思わない。

 

 さて、名前は、紅川仁朗。


 ・・高島という名は捨てる。


 悪魔となった以上、こだわる必要は無い。


 ・・住所はあまりにも遠い所はダメだ。いくらなんでも怪しすぎる。・・遠くも近くも無い、手頃な場所。・・・その時、六階建てのマンションの前にいた。

 ・・表式には空き室ありますと書かれていた。


 ・・このマンションにすることにした。・・ここなら部屋数があるから何十人いても普通。・・住所として書くにはうってつけである。

 ・・後は、資格か。


 ・・・折角だし、大型バイクの免許習得にすることにした。


 ・・何故なら、バイクに乗るのは子供の頃から憧れだった。・・金銭の都合で買う所か免許センターにも行けなかった。

 ・・・明らかに違法だが、悪魔の私には関係ない。・・・書き込んだ後、顔写真を作成。


 ・・後は。


「・・・免許証。」


 唱えた瞬間、手のひらの紙が運転免許証に変わった。


 内容も書かれたとおり、本物そのものである。


 かなり喜んだ。これさえあればバイクが買える。・・幸いにも八十三万はある。中古でも五十万で買える。・・・私は早速、中古販売店を探した。

 ・・・カワサキを専門に扱う店を見つけた。


 ・・このバイクはカッコいい物が多い。・・見て回ると、カワサキw800を見つけた。


 ・・手頃の金額。・・これにすることにした。


 ・・店長は。


「・・お買い上げありがとうございます。・・失礼ながら免許証を拝見してもよろしいでしょうか。」


 私は頷いて見せた。

 

 ・・緊張する場面。


 ・・・店長は。


「・・はい確かに、・・ここから乗っていきます?」


 この言葉に私は。


「・・いえ。・・免許は取り立てなので、ここでエンストしては他の方に迷惑ですから。・・邪魔にならない所で乗ります。」


 そう言ってバイクを手押しで運んだ。


 ・・・店長は怪しむことは無く、見送ってくれた。


 ・・偽造書の力は恐るべし。



 ・・・それからしばらくして、人気の無い空き地に到着。


 廃棄された車とかがある。ここなら練習しても誰も文句は言うまい。・・早速乗ることにした。

 ・・正直、何も分からない。とりあえずキーを挿した。


 ・・唸るエンジン音。・・心臓が激しく動いた。


 ・・初めてのバイク。・・乗った後、ハンドルを手で回した。・・そこからの急発進。慌てた私はブレーキを掛けた。

 ・・焦った。・・額所か全身に冷や汗が出てくる。


 容易ではない。・・練習を再開した。


 ・・そこからは上手くいかなかった。・・何度やってもスピード調整ができず、ゆっくりと動いても急発進ばっかりでいつ事故ってもおかしくなかった。

 ・・しかし、私は諦めない。


 ・・念願のバイク運転ができるのだ。・・こんなことで諦めて溜まるか。


 ・・そう思っていると、頭の中から、`操作`という単語が出てきた。


 ・・スキル習得早くないか?


 ・・そう思ったが。・・まぁいいか。・・早速、使うことにした。


 すると、バイクが思い通りに動く。・・まるで手足を動かしているように。・・最高の気分である。

 ・・私はそのまま公道に出た。・・勿論、ヘルメットを着けて。



 ・・・肌で感じる風。・・爽快な気分。・・これぞバイク運転の醍醐味である。


 ・・・さてと、残るは住む場所である。・・今の残高は三十三万。・・どこかのビジネスホテルに泊まるか。

 ・・・そう考えていると、赤信号になった。・・止まっていると、横断歩道を歩く元気な児童達。


 ・・・すると、前方から猛スピードのセダンが突っ込んできた。


 ・・跳ねられる児童達、車はそのまま過ぎ去っていった。


 ・・ひき逃げである。・・しかも、止まらない所から常習犯の可能性がある。


 ・・人々は児童達に駆け寄り、警察に連絡していた。・・車を運転していた人達も降りては集まっていた。・・それも仕方ない、目の前で複数の児童が轢かれたのだ。

 ・・これで動く奴はどうかしている。


 ・・・しかし、私はバイクを静かに反対車線に向け、発進した。


 ・・児童達のことは医者の仕事。私には何もできない。・・できることは、あのひき逃げ犯を地獄に食べさせることだけである。

 ・・・しばらく進むと、あのセダンを見つけた。・・赤信号なのにまた無視して走行した。


 ・・・何を考えているのか分からない。・・・このままでは追いつけない。


 ・・そう思った私は、脇道に入った。・・・あの車は信号無視を続けている。・・そんなことをすれば遠くいても目立って噂になる。

 ・・とすると、どこかに身を隠す可能性がある。


 ・・・この街で隠せる場所は、あそこしかない。




 廃れた倉庫街。


 昔はかなりの人々が出入りしていたが、バブルが弾けて、現在は誰も使っていない。


 ・・・倉庫街の一角、シャッター前にあのセダンが止まっている。・・予想通りである。

 ・・倉庫の中から下卑た笑い声が聞こえる。


 ・・どうやら複数人いるようだ。・・私はバイクを隠し、`飛行`で倉庫の二階にある窓から侵入した。・・鍵は開いていたので楽には入れた。


 慎重に下の階を見た。


 ・・若い連中が五人。酒を飲んでいた。


 その中の一人が。


「今回は、いい記録ですね。・・今までの最高記録じゃ無いですか。・・ガキども轢いたのがデカかったですね。」


 その言葉に一人が。


「・・まぁな、目の前に脳天気に歩くガキどもがいたからな。・・ちょ~~うラッキーって思ったよ。」


 そう言って下卑た笑いをした。


 そんな中気弱な一人が。


「・・しかし、大丈夫でしょうか。・・・ここまでの事はさすがにまずいのでは?」


 その言葉に一人が。


「・・大丈夫だよ。俺の親父は警察の交通課だ。・・・スケープゴートはいくらでもいる。」


 そう言って悪い笑顔をした。


 気弱は安心したのか、普通に酒を飲んだ。


 ・・・身代わり者か、・・その親もクズだな。


 ・・・しかし、なんで私はこんなに怒っているのだ?


 ・・悪魔になった私は、人間が何人死のうが知ったことでは無い。


 ・・・だが、子供達が大けがをしたのを見た時、かなりの怒りを覚えていた。


 ・・・甘いかな。


 ・・・しかし、もう止まらない。


 ・・・私は、あらゆる出口に向かって`発火`を発動した。・・燃え上がる扉と窓。・・・慌てる五人。

 ・・その隙をついて、私は`炎爪`で一人斬り殺した。


 ・・私を見る連中は。


「な、なんだこいつは?!」


 驚いてるようだが、お構いなしに殺しまくった。


 ・・そして、最後の一人。


 ・・そいつが。


「・・お、お前。・・・いいのかよこんなことをして?・・俺の親父は警察官だ。・・お前なんかすぐに捕まるさ。・・ついで、今までのひき逃げもお前のせいにしてやる。・・・お前の人生はもう終りだ。」


 そう言って笑う男。


 私は。


「・・・俺の人生か。・・そんなものはとっくに終わっている。・・・それに、警察といっても来るまで時間は掛かる。・・それを俺が黙って待っていると?」


 低い声を言いながら、近づいていった。


 ・・男は。


「・・お、おい。・・な、何だよ。・・待てって。・・そ、そうだ。・・ひき逃げのことは言わないから。・・何なら、俺の手下にならないか?・・そうすればやりたい放題だぞ?・・悪い話じゃ無いだろう?」


 怯えた表情で訴える男。


 ・・私は。


「・・・どうでもいい。・・・俺はお前を地獄に食べさせる。・・それだけだ。」


 無慈悲に、無表情に、爪を振り落とした。


 ・・・燃える倉庫。・・遠くから聞こえるサイレンの音。


 ・・私はバイクを持ち上げて、空を飛んだ。


 ・・・人気の無い林に降り、そのままバイクを走らせた。


 ・・・正義の味方になるつもりはない。


 ・・だが、ムカつくものはムカつく。


 ・・・人間では、ムカついても殺す所か殴ることもできない。


 ・・しかし、私は悪魔。・・・人間の私は死んだ。


 ・・・これから先、私は・・・。




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