第3話 金稼ぎ。
翌朝。私は森の中で目を覚ました。
何故、ここにいるのかと疑問に思ったが、横に置いてある本を見て、思い出した。
・・そうだ、私は悪魔になったんだ。・・これから先の人生に不安を感じていた。
・・別に人間から差別を受けるとかはどうでもいい。・・今時、悪魔を信じる奴はいない。・・こちらが力を見せない限り、そいつの空想で終わるのだから。
・・問題なのは、別の悪魔達の動向。
レベルを上げる為に戦う。
随分と物騒な話だ。・・今で満足できないのか?と言いたいくらいである。・・しかし、どうしようもない。
相手はこちらの言い分など聞くはずがないからだ。
・・と、先のことを考えても仕方ない事に気付いた。
・・今はやることがある。
この本を使って資金を獲得するのだ。
・・そう思い、`飛行`で近くの街に向かった。
さすがに、ど真ん中で降りるのは目立ちすぎるので、人が全く来ない林の中にした。
目的の場所に向かったがまだ開いていない、開くのは十時。
・・時刻は、朝の九時。
・・あと一時間ぐらいか。
・・そう思った私は。
「・・・とりあえず、買う為には、金がいるな。・・・アパートに戻るか。」
そう考えて移動した。
・・この街にしたのは偶然ではない。
前の街に行ったのは気分転換の為に遠出しただけである。
これが良かったのか悪かったのかは今の私には分からない。・・何故なら、人をやめ、悪魔になった。
・・もし、行っていなければ人として退屈で何もない人生を歩んでいた。
・・・家族はいるが、両親は博打好き。
・・仕事は自宅で簡単にできる内職だけ、金を貰えば即座にパチンコ。
・・・典型的なダメ人間である。
・・・そんな二人が嫌いだから、遠く離れた場所で暮らすことにした。・・今では連絡する所か、生きているのかさえ知らない。
・・博打は嫌いだ。・・・外れれば全てを失う。
そんな物に金を掛ける人間の気持ちなど知りたくもない。
・・だが、この本さえあれば、確実に金が手に入る。
・・そんな考えをしているとアパートに到着。
・・警察はいないようだ。・・それもそうだ、身分を証明する運転免許証を持っていない。
車やバイクを持っていないので習得する理由がない。
・・移動ならば電車を使えば良い。・・・病院の医者は私の名前を知っていたようだが、カラオケ店に入る時、名前を記入している。・・そこから知ったのだろう。
・・扉を開けようとしたが鍵が掛かっていた。
・・あれは病院にあるかもしれないが戻る気はない。
・・仕方ない、私は力任せに扉を開けた。・・あっさりと開いた。
私の腕力がかなり上がっているようだ。
・・部屋の中に入り、まず、ボディバックの中に通帳とカードと印鑑、前に使っていた財布。それだけ入れた。・・携帯は持って行ったから火事で無くなった。
・・まぁいいか。・・この通帳も何時まで使えるか分からない。・・今日だけ使って、適当に破り捨てるか。
・・そう思った時、あることを思いだした。
・・昨日のインプが持っていた本、カタログにある物のことを。
ダメ元でインプを心の中で呼んでみた。
すると。
「・・何か用か?」
あっさりと出てきた。
私は驚きながらも。
「・・あ、あぁ。・・昨日見せて貰ったカタログをもう一度見せてくれるか?」
その言葉にインプは。
「ん?・・・あぁ、すまん。忘れていたが、カタログはもうお前さんの中にあるぜ。・・見たい時は、`カタログ`と唱えれば出てくる。・・但し、カタログは他の人間にも見えるから、出す時は注意しときな。・・それじゃあな。」
そう言って消えた。
・・先に言えよ。・・私は唱えた。・・すると左手からカタログが出てきた。
・・中身を見て、やはりあった。
偽造書。
・・・説明欄によると、これに書いた後、変換したい物を唱えればそれになる。・・変換後、その国の情報機関に書いた内容が自動的に入る。・・但し、人の記憶には入らない。
・・つまり、これを使い、免許証に偽造すれば、バイクを運転中に警察に補導されても、データ上には載っているので疑われ事は無い。
・・銀行で新しい通帳とカードを発行する際にも役に立つ。
・・今の世の中、データが全て、載っているのならそれ以上は何も言わない。
・・人の記憶に残らないが、そんなことを聞きに行くのは、事件の当事者として指名手配を受けた時だけである。
・・・心配することは何一つ無い。・・だが、問題がある。
・・五十ポイント必要である。
今は二十ポイント。・・・悪人の魂を送らなければ、手には入れない。
・・・できれば早めに手に入れたいが、焦って、人々の目の前で殺せば、さすがに手配される。
・・今後の課題として動くしか無い。
・・・時間もそろそろ、私は荷物をまとめ、目的地に向かった。
・・人が大勢入っていくドーム状の建物。・・その人々の手には新聞。・・競馬新聞である。
ここは競馬場。
馬が競走し、一位を当てる場所。
当てれば一攫千金が手に入る。・・博打好きの聖地である。・・・普段は絶対に行かない場所だ。
・・・予想するなんてほぼ不可能だから。
馬の情報が記載されていたとしても、その日の体調管理ができていなければ、いくら勝つ馬でも負ける。・・途中で落馬もする。
・・負ける要素が多すぎる。
しかし、私には予言の本がある
。・・早速、見えない場所で発動。・・内容は一位と二位の馬の名前。・・すると、馬の名前と一位と二位が記載されている。
・・これで確定。・・一レースから十二レース、全て書かれている。
・・私は早速買いに行こうとしたが、全て当たり馬券を買うのはさすがに目立つ。
・・・ここは、新聞を買って、大きい金額と三つの小さい金額のみにしよう。
・・店で新聞を買ったが、全然分からない。・・とりあえず、一レースの馬二頭は、百と書かれている。・・・大きいようだから買うことにした。・・・百円で購入。
・・・そして、入場料として百円払い、席に着いた。
・・すると、アナウンスがなり、レースはスタート。・・かなりの白熱。観客達は応援していた。・・私はしなかった。
結果が分かっているから。・・・そして、馬がゴール。
・・結果は、本に書かれたとおりであった。
・・早速、中にある自動払い戻し機という場所で金を受け取った。・・金額は一万。
・・なるほど、馬券の数字は倍という意味であったか。
・・その後は、一万から十万、一万から五万、一万から二十万、合計で三十三万。
・・・まずまず稼ぎである。・・それに目立ってもいない。
・・順調である。
私はこのまま銀行に向かった。・・時間は十四時。
・・・銀行に行って、まず、手帳の金を全額出すことにした。・・と言っても金額は五十万。そんなにない。・・さっきのと合わせて八十三万。
・・・アパートに戻るつもりはない。・・そろそろバレそうだからだ。
・・寝る場所を探そうと銀行を出ようとした瞬間。
・・怪しい三人組が現れ、そして、銃声が響いた。
「動くな!!!・・全員、その場にしゃがめ!!!」
叫んで拳銃を見せびらかした。
・・銀行強盗か。・・初めて見た。・・全員、その場から動かず、ただ座っていた。・・職員にシャッターを閉めさせ、現金をリュックサックに詰めるように指示していた。監視カメラを銃で破壊し、痕跡を残さないようにしていた。
・・客達からは何も盗らないようである。
・・・私は考えていた。・・こいつらを殺せば、ポイントは手に入る。
・・・しかし、問題は目撃者だ。・・ここには見る限り三十人はいる。・・・さすがに目の前で殺せない。・・・どうすればいいのか。
・・・混乱に紛れて殺す。・・それ以外に思いつかない。
・・どうやって混乱を起こすか、・・その時、観葉植物が目に入る。
・・・あのクソガキと同じだが、それ以外にないか。・・・とすると、どうやってやるか。
・・そんなことを考えていると、突然、頭の中に`発火`というスキルを覚えた。
・・見える範囲に火を起こすことができる。
・・こんな簡単に習得出来る物なのか、そう思ったが、とりあえず、小声で。
「・・`発火`。」
唱えた。
・・・すると、観葉植物が燃えた。・・・小火ではなく植物一つ炎に包まれた。・・それを見た客達は騒ぎ出した。
・・それも当然。・・・いきなり燃えたのだ。・・驚かない方がどうかしている。
客達は入り口に向かったがシャッターが閉まっていたので出られない。
職員達は。
「!!皆さん!!裏口から出られます!!・・こちらに早く!!」
誘導していた。
・・客達は一斉に裏口に向かった。
それを見た三人組は。
「!?おい、動くな!!・・燃えたぐらいで騒ぐな!!」
拳銃を見せびらかしたが、誰一人言うことを聞かなかった。
・・混乱の中、私は強盗の一人に近づき、`炎爪`で心臓を一突き、即死である。
燃える死体を見た強盗二人に、私は一足で近づき、斬り裂いた。
二人の死体も燃え、銀行は火の海である。
・・私も最後の一人として脱出。
・・外に出ると、客達は安堵の色で座り込んでいた。・・バレていないことを祈った。
・・そんな中、オーナーが。
「・・君、すぐに警察と消防車を、他の者達はお客様を誘導し、安全な場所に。・・すぐに取りかかってくれ。」
指示していた。
・・さすがにこれ以上付き合う気はないので、忍び足でその場から離れた。
・・・幸いにも誰一人、私に気付く者はいなかった。