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男は悪魔を食った。  作者: 満たされたい心
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第28話 二大悪魔。





 とある武家屋敷。


 鹿脅しの音が響く中、屋敷では。


「どういうつもりだ!?あんなことをするとは?!いったい何を考えている!!」

「全くです!!危うく私たちが死ぬところでは無かったですか!!?」

「この責任はどう取るおつもりですか!!」


 怒号の嵐であった。


 屋敷の主であるアガレス親分と相対するのはビジネススーツを着た老人達。・・・彼らは各企業の社長並びに政治家。早い話上流者である。

 当然。来るという約束は全くしていない。にも関わらず、突然やって来ては勝手に上がり込み、こうして親分の前で文句を言っている。


 ・・・彼らが怒る理由は倉庫街で行われてた格闘場の事件。


 ・・・見物客として来ていた彼らは親分が派遣した構成員の試合を見ていた。何時も通りの結果で終わるだろうと思っていたとき。現われた謎の男との熾烈なる戦い。

 そこから発せられる衝撃と振動はVIP席まで及んだ。


 実際、強化ガラスにヒビ割れが起き、何時壊れるか分からない。


 ・・・我が身可愛さにその場から避難。外に出てしばらくすると倉庫が崩れ、陥没した。あのまま居たらと思うと恐怖が支配した。

 彼らは今回の責任は派遣した親分にあると考え、やってきたのだ。親分はキセルを吹かせながら何かを考えるように静かであった。


 一人が。


「おい!!聞いているのか!!?こっちはお前達の存在を隠してやっている恩人だぞ!!?無視するとはどういう了見だ!!・・・お前らは悪魔は我々人間がいなければ存在できないのだぞ!!」


 感情のままに発したこの一言に親分は。


「・・・・・あ?」


 冷たい目で殺気を放った。


 ・・それを浴びた彼らは`ひっ`と悲鳴を上げ、後ずさりした。


 親分は。


「・・・何か勘違いしているようだから言ってやる。俺はお前らの世話になった覚えは無い。・・・第二次世界大戦の終り頃にやってきた俺に日本復旧の手伝いを申し込んだのはお前らの祖先だ。待遇を良くして貰う代わりに当時の闇を支配して欲しいとな。・・・あの時はやることが無かったんで暇つぶしにやった。それだけだ。」


 無表情に答えた。


 ・・・実際にそうである。かの戦争が終わった頃。日本は荒れていた。我こそは日本の代表だ。と言い張る政治家や実業家が派遣を争っていた頃。

 力が弱かった祖先らが出会ったのが遙か昔に爵位を授かり大悪魔であるアガレスが部下達と共に来日。・・当時は悪魔や妖怪の類いは眉唾ものではあったが、絶対に信じていないわけではなかった。


 事情を聞くと、暇つぶしに旅をしていたという。どこかに定住する気ではあるが全く考えていなかったと。これを聞いた祖先らは`運が回ってきた。`と考えた。


 悪魔としての力は強大で。政治には興味なし。まさに理想の協力者。


 親分の力で邪魔な連中を排除し、荒くれ共を支配し、経済の立て直しや回復に尽力。更には荒くれ共を支配し、裏社会を牛耳ることで安定した世の中を作りたいと申し込んだ。本人の定住にも繋がるので利害が一致しての交渉に成功した。

 

 ・・・裏社会の秩序が保たれているのは親分あってこそ。まさに歴史の功労者である。


 そんな人に恩人だというのは筋違いである。


 一人は。


「・・し、しかし、我々の協力があってこそだろう?場合によってはきょ、教会に・・・」


 脅し文句を言うが親分は。


「・・言いたかったら言え。どっちでもいい。最も今の教会は昔ほど強くは無い。多少、力はあっても俺を滅ぼすのは不可能。これは部下が教会を調べた結果だ。分かったか?」


 既に情報収集を終えていた。


 彼らは何も言えずに沈黙した。最早、目の前の悪魔を従うところか利用することもできない。できることはただ一つ。今後は機嫌を損ねないように立ち回ること。それだけである。


 親分はキセルを吹かせながら。


「・・・用はそれだけか?だったら消えろ。テメェらにかまけているほど暇じゃ無い。」


 一喝した。


 冷や汗まみれの彼らは何も言わずに去って行った。


 灰皿に灰を落とした後、部下を呼んだ親分は。


「・・で?ルクスが死んだってのは本当か?」


 これに部下は。


「は、はい。この目でしかと・・・」


 頭を下げながら報告した。


 その額は冷や汗が滲み出て、体が緊張と恐怖のあまりか震えていた。


 親分は。


「・・・ふぅ~~~。まぁ、悪魔の宿命だな。滅ぼすか滅ぼされるかそれだけだ。ルクスは後者だっただけのことだ。」


 キセルを吹かせながら遠い目をしていた。


 ・・・部下は知っている。ルクスさんは古参の一人。親分と長き時を過ごし、命令を遂行してきた組にとっては無くてはならない存在。

 思い通りにならないと怒るときもあるが、それは当然の事。一々文句を言っては現代社会では生きていけない。


 人間も悪魔も。


 部下は。


「・・そ、それともう一つ。そいつは人間の青年を守っていました。断片ではありますが、依頼を受けていたと・・・」


 しどろもどろに報告した。


 親分は顎をすりながら。


「・・依頼?仕事でもしているのか?だとすれば何処かの勢力に入っているのか?・・思い当たるのはあの泥棒猫くらいか?・・だが、それにしてもおかしい。人間の依頼を受けていると言うことだろう?あいつはそんな面倒くさいことはしない。・・・俺の知らない新しい勢力か?」


 物思いにふけていた。


 ・・・これだけのことをしたのだ。その新人もただでは済まないのは知っているはず。にも関わらず、派手なことをした。


 つまり、狙われたとしても守ってくれる奴らがいると言うことか。


 親分は。


「・・・ふむ。若い衆を集めろ。今後の事を考えねぇといけねぇ。・・・それまでは新人は放っておけ。」


 部下は一礼して部屋から出た。





 とあるマンション。


 最上階。



 高級ソファーに座りながら秘書が持ってきた各企業の仕事の書類を見ながらシャックス会長は。


「・・ふ~~ん。あのじじいの部下がねぇ。随分と度胸のある奴だ事。」


 興味が無いような態度。


 しかし、内心では興味津々である。


 秘書は。


「もう一つ。今回の件で政治家達が動いたようです。しかし、親分に対する抗議だけです。実際、あいつらにはどうこうできません。」


 呆れていた。


 ・・・権力者は弱い奴らには強気でいるが。手に負えない強者には尻尾を振る。犬と呼ぶに相応しい。


 会長は。


「・・その人間については何か分かったの?」


 視線を秘書に向けた。


 秘書は。


「・・え~~と。どうやら何でも屋みたいな仕事をしているみたいです。今回も依頼を受けていたようですが、企業とかではなく、個人での依頼だそうです。目的も不明で不気味なくらいです。」


 会長は考えた。


 ・・・どんな仕事でも目的が無ければ動かない。金が欲しいが大半だが、中には仕事を通じてコネを作り、地位を得る者もいる。


 要するに得する以外に動くことをしないのが生き物である。


 会長は。


「・・不明ね。まぁ、倉庫街の格闘場を台無しにしたのも。組に狙われるのは間違い無しね。・・・ならばいっそ・・・」


 言葉を詰まらせた。


 しばし考えると。


「・・組の今後の動きについて調べてくれない?もし、奴らが動くのなら静観ね。・・・もし、動かないのなら。・・こっちが動く。」


 この指示に秘書は。


「・・何故、そのようなご指示を?」


 会長は。


「あっちが動いていてこっちも動いていたら鉢合わせになるでしょう?ただでさえ、ちょっと被っただけで殺し合いをするほどですもの。今は時期尚早。いずれは潰すわ。・・だけど逆に動いていないのなら、好きに動くだけ。それだけよ。」


 にんまりと笑顔である。


 久々の獲物。どんな能力を。どんな思いを持っているのか。楽しみで仕方ない。




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