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男は悪魔を食った。  作者: 満たされたい心
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第27話 何もかも崩れて。





 ルクスのアッパーがクリーンヒットした。


 ・・・意識が飛びそうだ。だが、右拳で溝打ちした。自分で自分にダメージ。自滅とした言えない行動だが、意識を保つには痛みで耐えるしか無い。


 ルクスは。


「・・気絶しないか。大概の弱い悪魔はあれで終りなんだがな。・・やっぱ強いな。お前。」


 何故か嬉しそうである。


 ・・これは長く生きてきた中であまり強い奴とは戦っていない系か。


 私は。


「それはどうも。だけど。あなたほど長生きなら俺以上に強い奴とは戦っているでしょう?」


 ルクスは。


「当然だ。だが、そいつらはもう居ない。親分に敗れて死んだか。教会に殺されたかのどちらかだ。今居るのはただ生きているだけの悪魔だけだ。」


 つまらない顔をしていた。


 ・・新人潰しはかなりやる気の部類だが、あいつらからしたら新しい方か?いずれにしても死んだ奴からは何も聞けない。


 私は。


「・・言っておくが。あまり期待しないでくれよ。こっちは元人間。生きる為なら手段は選ばん。」


 グローブをはめ直した。


 ・・・今までの連中は策を弄しているという感じだが、私からしたら少し考えただけの行動にしか見えない。失敗したときの事を考えていない。

 あらゆる状況を予測し、対策を練る。例え、外れても用意しないよりはマシであるからだ。


 それが人間の生き汚さ。人間しかできない行動だ。


 ルクスは。


「・・別に構わん。こっちはお前よりも経験者だ。むしろそれぐらいしないとつまらない。」


 構えを取った。


 ・・・私も同じく構えた。周囲はものすごく静かである。それもそうだ。先程のやり取りで大半の客達が避難した。

 残っているのはそれなりに心が強い客達のみ。


 ・・・お互いに殺気を放ち、ゆっくりと近付く。


 一気に間合いを詰めない。警戒している以上、無駄な動きは隙を生む。お互いの攻撃が届く距離に到達。そして、放たれるは炎と風の弾。

 拳では無くあえてのスキル。ここからは物理では無く、能力の勝負である。


 ・・・爆発が起きると同時に炎と風が周囲に飛び散った。お互いに能力の連弾を撃ち続けている。相殺される物があれば、当たらずに何処かに飛ぶものがある。

 当たらなかった物がリング外の床や壁に当たり、炎は爆発。風はくり抜かれる。


 ・・・それは心が強い者でも耐えられる物では無い。一発でも当たれば即死。客達は一人残らず避難した。それは強化ガラスのVIP達も同様である。

 

 見ることができない。いや、見続けたら死ぬだけの戦いに残る人間は居ない。


 会場には二人以外誰も居ない。


 因みにレナは通路の影にいる。近くにいては彼の邪魔になると判断したからだ。周囲がそんなことになっている知らずにやり合う二人。


 ・・・私は連弾を止め、ルクスに一気に近付く。別のスキルを発動してる。ルクスもそれを見てか手刀で同じように動き。


「スキル`炎爪`!!」

「スキル`斬風`!!」


 爪と刃が激突。


 ・・・しかし、爆発は起きない。斬ることに特化したスキル同士の勝負はどちらかが斬られたときのみである。


 拮抗する両者。だが。・・・刃が爪を切り裂いた。私の体に浅い傷を残した。


 そこから吹き出す血。咄嗟に抑え血を止めるがまだ流れている。あまりにも刃の切れ味が良すぎる。


 ルクスは。


「・・いいスキルだが。まだまだ浅い。経験の差は時として細かい力の流れを操作が可能。荒すぎるんだよ。」


 ご丁寧に説明してくれた。


 言うのは簡単そうだが、実際にできるかと言われればできない。小さい作業ほど集中力が試される。ましてや他のことをやりながらはかなり削られる。


 本当に強い。こいつは。


 私は。


「確かに経験では勝てない。だけど。諦める気は無い。」


 闘志を燃やした。


 負ければ連れて行かれる。そこでどんな目に遭うか分からない以上恐怖しか無い。かと言って逃げるのは不可能。相手が強い以上逃げてもすぐに追い付かれる。そして無防備な背中に致命傷を与えられる。


 ・・・ゲームでも逃げる選択で失敗すれば敵からの攻撃で大ダメージを負うことはよくある。


 戦う以外に選択はない。勝ちたい気持ちと生きる気持ちが心を支配した。


 その時。頭の中に`炎翼`が浮かんだ。新しいスキル?だが、炎の翼?どんな力があるんだ?


 こればかりは使ってみないことには分からない。こっちの戦闘スキルは全て見せた以上。これに賭けるしか無い。


 私は。


「・・スキル`炎翼`!」


 発動した。


 すると背中から炎の翼が出現。その時、特性を理解した。


 ルクスは。


「・・炎の翼か。飛んで脱出するつもりか?」


 呆れた顔である。


 それもそうだここは地下。飛んで脱出は意味が無い。だが、これは飛ぶだけでは無い。姿勢を低くして消えた。

 ルクスは咄嗟のことに狼狽え上を見た。翼である以上、上空以外無いからだ。


 しかし、何処にも無かった。その時、背中から気配を感じた。


 後ろを振り向くと同時に顔面に拳が入った。ルクスは吹っ飛んだ。


 リングに倒れるルクスを見ながら私は。


「・・こいつは使えるな。」


 ニヤけた。


 `炎翼`の効果は速度倍加。あらゆる速度を倍以上に上げる。飛行は無論、移動速度も。先程の動きも見えない程の速度で走ったに過ぎない。


 ルクスは首を振りながら私をにらみつけ。


「・・ちっ、`鎌鼬`!!」


 風の刃が飛んできた。


 ・・・私はそれを炎の翼で防いだ。痛みは無く、消えることも無い。防御力も高いようだ。


 私は飛行し、見えない程の速度で攪乱した。


 ルクスは辺りを見渡し混乱していた。


「・・それで勝てると思ったか!!!`鎌鼬、彼岸花`!!!」


 自身を回転しながら無数の風の刃が飛び交う。


 ・・・放射状に放たれる刃はさながら彼岸花の如く。当然、制御などしているわけはない。


 壁や天井に無数の斬撃痕が増え続け。そして、天井が崩れ落ちた。



 ちょっとした地震が発生した。


 ・・・辺り一面が瓦礫の山と化した。誰も生きていないだろうその場所に赤き山が一つ。炎の翼で瓦礫を防ぎ、レナとヤンキーを助けたのだ。


 ・・レナは兎も角、ヤンキーがここに居たことは意外であった。まだ寝ていると思っていたからだ。


 事情を聞くと、気絶から復活し再度会場に来たらしいのだが、その時は私とルクスの激しい戦いの真っ最中。

 観客達が逃げ惑う中、ヤンキーだけは残った。


 度胸があるわけではない。何が起きているのか分からず、思考がフリーズしたからだ。依頼対象である以上、殺させるわけにはいかない。


 私の姿を見たヤンキーは。


「・・なぁ、あんた?いったい何者なんだ?」


 震えるヤンキーに私は。


「ただの仕事人だ。お前を連れ帰る為のな。・・文句は無いな?」


 威圧した。


 ・・・この姿を見られた以上、最大限利用する。ヤンキーは黙って頷いた。ため息をつくと同時に後ろから激しい音がした。


 振り向くとルクスが瓦礫を持ち上げて出てきた。体中埃だらけだが目立つ傷は無し。


 ルクスは。


「・・成る程。これが目的と言うことか。会場を破壊し、何もかも無かったことにする。随分と浅い考えだな。」


 瓦礫を放り投げた。


 私は。


「・・いや、ただ単に隙をつく為に高速移動したのにいきなり無差別攻撃するからこっちが驚いたよ。というか会場を破壊したのはそっちだろう?」


 頬を掻きながら苦笑した。


 責任転換は良くない。ましてやこんな大規模は。


 ルクスは。


「・・っ。う、うるさい!!どんなことであろうとお前が原因なのは確かだ!!ここで雌雄を決する!!」


 拳に風を纏わせた。


 ・・・何だか強引に話を進めたな。深呼吸した。ここまでの被害だ。警察が来るのは時間の問題。


 ルクスも分かっている顔だ。私は右手に炎の爪を出した。威力を高める為に高濃度の魔力を注いだ。


 勝負は一瞬。互いに構える。


 誇りを乗せた風が吹く。そして、止んだ。


 それを合図に互いに走った。


 ・・・ルクスは足に風を纏わせ速度を上げた。一直線の無駄の無い動きは目にも止まらぬ。だが、私の速度はそれを超えている。

 一瞬にして交差し、背中合わせに立った。


 微動だにしない両者。・・・だが、変化は起きた。


 ルクスが腹から盛大に血が噴き出した。私は横腹から血が噴き出す。だが、血の量はルクスの方が上だった。ルクスは仰向けになりながら倒れた。・・・私は傷を抑えながら近付いた。


 ルクスは。


「・・はぁ、はぁ。・・くそっ。新参者に負けるとは。俺も鈍ったか?」

 

 自傷気味の笑顔に私は。


「強かったよ。少なくとも神父の悪魔よりは別格だ。翼が無ければ負けていた。」


 無表情に答えた。


 ・・・スキルを習得できなかったら確実に負けていた。それだけの差だった。


 ルクスは。


「そうか。・・・だったらお前が生き延びるのは難しいな。俺よりも強い奴は所属は無論。他の悪魔勢力にはいるからな。・・・精々、死なないように上手く立ち回るんだな。」


 忠告してきた。


 私は。


「随分と優しいな。こういう場合は皮肉を言うんじゃ無いのか?」


 ルクスは口をつり上げて。


「・・ふん。そんなみっともないことはしない。それをすれば、親分に恥を掻かせることと同義だ。俺は親分に心酔しているからな。」


 見事な忠誠心。


 主君を汚さぬように振る舞う。現代では考えられない。


 私は。


「分かった。今度はうまくやってみるよ。・・だが、お前を倒したことで親分とは敵対関係だろうがな。」


 これにルクスは。


「はっ。いかにも人間らしい考えだな。安心しろ。悪魔同士の殺し合いで私怨を持つことは無い。強いのなら配下にする。それだけだ。実際、親分に挑んで死んだ悪魔もいれば、そのまま配下になっている奴もいる。・・・最もそういう奴らの場合はあまりの圧倒的強さを目にして言うことを聞くだけの人形になっているがな。」


 小馬鹿にした笑いである。


 まぁ気持ちは分かる。そんな連中は呆れ以外にないからだ


 私は。


「たぶん、そうはならないだろうが頭の隅には留めておくよ。」


 ルクスは鼻で笑った。


 ・・・そして灰となって消えた。だが、力が私に流れ込んでくる。


 そう言えば、神父の時はレベルの確認はしていなかったな。確か、最後に見たのは二十三だったな。そう思い、`表示`を見た。


 レベルが五十になっていた。


 あまりのレベルアップに驚いた。それだけルクスが強かったと言うことか。


 そう思いながらヤンキーに近付き。


「さてと。あいつも倒したことだし。賞金はお前の治療代に当てる。これでお前は自由だ。大人しく家に帰るぞ。」


 ヤンキーは無言で頷いた。


 ・・・私はレナにヤンキーを頼み、格闘場の関係者を探した。瓦礫の影に隠れていたスタッフを発見。どうやら私の戦いを最後まで見ていたようだ。


 私は。


「・・ルクスは俺が倒した。約束通り、賞金は俺の物。その金はさっきいたガキの治療代にあててくれ。」


 スタッフは何度も頷いた。


 ・・・用事を済ませた私は早々に倉庫街から去った。




 ・・翌朝。


 人目の無い公園で野宿した三人はヤンキーの家に向かった。予め連絡はしている。


 玄関先で再会した親子は。


「・・馬鹿。こんなに遅くまで心配させて。」

「・・心配させるな。」


 お叱りを受けていたヤンキーは。


「・・ごめんなさい。これからは学校だけでやります。」


 潮らしくなった。


 あの戦いがかなり効いたようだ。


 父親が私に近付き。


「ありがとうございます。・・これを。」


 封筒を渡してきた。


 中を見ると五十万は入っている。


 私は。


「・・息子の捜索だけの金額では無いな。・・・口止め?」


 これに父親は。


「こう見えても会社ではそれなりの立場なのでな。」


 私は承知したと頷き、後にした。




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