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男は悪魔を食った。  作者: 満たされたい心
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第23話 裏格闘場





 目的地に到着。


 ・・・そこは殺風景な港。人の出入りなどほとんどない倉庫街である。船は全くない。乗り場はあるが営業が終了したように何も無かった。こんな時間に来る奴は後ろめたい人間以外に存在しない。


 私はその元人間だが。


 しばらく歩くと。とある倉庫前に作業服を着た老人がいた。


 私は。


「・・酒場の谷田を知っているか?」


 老人は。


「・・ここにはない。酒場だったら飲食街だろう?」


 私は。


「・・常識的に言えばそうだ。だが非常識もある。」


 しばしの沈黙の後。

 ・・・老人は携帯を取り出して何処かに連絡している。


 すると。


「・・入ってくれ。」


 後ろの扉を開けた。


 ・・・中は薄暗い階段で地下二階くらいまで進んだ。うっすらと光るランプの前に黒服がいた。その者は何も言わずに扉を開けた。


 開けた先には歓声が響き渡っていた。


 ・・・辺りは真っ暗でどれだけ人がいるか分からないが目立つ場所がある。・・・ライトに照らされるリングの上で格闘戦がおこなわれていた。


 少し痩せ気味の男性と太った男との対戦。これに詳しくないが体重制限とかで厳しいはず。それなのにこの組み合わせ。


 私は。


「・・依頼通りの展開だな。」




 時は少し遡る。


 ・・・とある喫茶店で男性と女性と会った。この二人は夫婦で息子が夜な夜な怪しい事をしていると。息子は腕自慢。つまりケンカ屋でよく友達と戦っているそうだ。


 だが、問題にはなっていない。・・・何故なら、場所が学校のクラブの道場で先生も承認の上でやっている。実際そんなことがあるのかと聞くと。

 学校でのストレスが原因で外で問題を起こすくらいなら学校内の道場で思いっきり戦った方がいい。という方針だそうだ。・・・大胆なことをする。


 下手をすれば教育委員会が出張ってくる。


 だが、ニュースになっていない所を見ると大丈夫そうだ。だが、息子は満足できずに何処かに行っている。それを調べて欲しいそうだ。警察沙汰にはしたくないから穏便に頼むと。


 依頼を受けた後、情報屋を使って戦いに関する事を聞いてみると港でルール無用の格闘戦があるようだ。


 ・・・年齢制限はなく、武器も自由。死んでも問題ない。現代のコロシアムである。入る為の合い言葉を聞き、行くことにした。




 現在。


 熱気が充満する空間。


 ・・・その時、太った男が対戦相手をボディープレスで押しつぶした。相手はもがいたが次第に動かなくなった。レフェリーが勝利宣言をした。


 倒れた痩せ男は担架で運ばれていった。意識があるか分からない。だが、そんなのはどうでもいいかのように歓声が響いた。


 レナは。


「・・こんなことが許されるのでしょうか?」


 少し怒り気味である。


 私は。


「・・普通は駄目だろう。だが、今のご時世はストレス社会。面白いこと。発散できること。それがなければ犯罪は増える一方だ。・・対戦者達も覚悟の上でやっているのだろう。ここの賞金は通常よりも高いのが裏の常識だ。見てみろ。あの席を。」


 指さした場所にはデカいガラス張りで何人かのビジネススーツを着た者達がいた。


 ・・・偉いさん方だろう。かつて潰した競売会場と同じだ。だが、違うのは出ている人達が自分の意思で出ているか出ていないかだ。それだけだ。


 そう思っているとアナウンスが響いた。


「・・さぁ!!他にいないか!!?ケンカ自慢の野郎共!!普通では絶対に味わえないスリルがあるぜ!!!誰かいないか!!!」


 叫ぶ声に応えてか一人の青年が上がった。


 角刈りに上下赤いジャージ姿のヤンキー。


 私は即座に写真を見て。


「間違いない。あいつが依頼人の息子だ。・・・こんな奴が今の時代にいるとはな。」

 

 どう見ても昭和のヤンキーそのものだ。


 ・・・現代の令和にはいない。というかやり方を変えているだけだが。あれだけいかにもヤンキーはそうはいない。


 アナウンスが。


「おーーーと!!!見るからにヤンキーが登場!!!ドラマの見過ぎか!!?実力は本物であって欲しい!!!さぁーー!!!対戦者は誰だ!!!」


 そこに上がったのは丸坊主で修験僧の青年が現われた。


 アナウンスが。


「おや?・・これは意外!!!まさかの坊さんが登場だ!!!説法でもしに来たのか!!!」


 観客達が歓声を上げている。


 曰く`念仏は嫌だぞ!!``やっちまえヤンキー`という声である。


 青年は。


「坊さんが来るところじゃねぇぞ!!俺は小言は嫌いだぞ!!」


 坊さんは。


「・・安心しろ。私も同じだ。・・破戒僧故にな。」


 自傷気味に答えた。


 破戒僧。宗教の戒律を破り、追放された坊主。主に女や肉食してのはずだが、あの男からはそれは感じられない。・・いや、危険な感じがする。


 私は。


「・・あの息子さん。・・死んだかもしれん。」


 呟いた。


 ・・・レナは何か言いたそうだが、ゴングが響いた。


 ヤンキーは華麗なステップで左右移動している。さながらボクシングスタイルである。


 一方、破戒僧は空手の構えをし、どっしりと構えている。無駄な動きが一切無く、それ故に隙が無い。


 だが、ヤンキーはお構いなし突進。右ストレートを放った。しかし、破戒僧は軽く躱し、その腕を掴んで一本背負いした。その動きは一切の無駄が無く、観客達はヤンキーが自分から飛んだかのように錯覚した。


 押さえ込まれたヤンキーに破戒僧は。


「終いだ。降参するが良い。」


 ヤンキーは。


「ふ、ふっざけんなぁぁぁぁ!!!この程度で俺が・・・」


 `ボキッ`と鈍い音がした。


 ヤンキーの右腕が折れた。悲鳴を上げるヤンキー。


 あまりの無慈悲に歓声が響いた。


「いいぞ!!」

「やっちまえ!!」

「その為に来たんだ!!」


 熱気が支配していた。


 私は近くのスタッフに。


「・・ここは初めてなのですが。・・乱入とかはありなのですか?」


 これにスタッフは。


「・・基本的には駄目です。ただ、あまりにもつまらなかった場合はアナウンスが入ると思います。今回の戦いのように。」


 冷めた目でリングを見ていた。


 すると。


「これは早い決着になってしまった!!もはやヤンキーは再起不能!!誰か救出者はいないのか!!?」


 私はスタッフを見た。


 ・・・スタッフは頷いた。つまり、乱入許可か。私はその場から飛び、リングの上に着地した。


 ヤンキーを見ると気を失っている。余程の痛みに耐えられなかったのだろう。


 アナウンスは。


「ほぉ~~?!!!そんな奴を助けるとは物好きな!!・・救出者の登場だ!!!」


 歓声が更に響いた。


 ・・・あまり好きではないが、依頼である以上遂行しなければ。


 破戒僧は。


「・・お主。やるようだな。・・少しは楽しめそうか。」


 殺気が刺さってきた。


 さすが元僧侶。感じ取ったようだ。


 私は。


「戦いぶりは見せて貰った。・・悪いが、殺さないで倒すのは難しそうだ。」

 

 軽い準備運動した。


 グローブは付けない。ここでスキルを使うには目がありすぎる。


 破戒僧は。


「それでいい。元より、命などどうでもいい。」


 構えを取った。


 ・・私は何も言わずに構えた。睨み合う両者。先に動いたのは私だ。


 最速の正拳突きを放った。破戒僧はつかみ取ろうとしたが、私の左手からの二連撃に気付いたようだ。すぐに防御態勢を取った。

 ・・・二連撃も難なく防いだ。


 攻撃が一旦止まると破戒僧が反撃。・・・右手刀が私の首筋を狙ってきた。私はそれを受け止めた。当然、首に力を入れて硬くした。

 効かないと感じた破戒僧はすぐに距離を取った。


 ・・・私はすぐに距離を詰めた。右腕のラリアットを炸裂。だが、破戒僧はしゃがんで回避。破戒僧は右手刀突きを放った。

 だが、私はすぐに半回転し、右裏拳を放った。


 ・・・ぶつかる技同士。互いに受け流した。しかし、私は回転の勢いのまま左拳を破戒僧の顔面に打ち込んだ。


 利き手でないのであまり威力は無いが、顔に当たれば関係なし。


 破戒僧は仰向けに倒れた。まだ意識があるようだ。私はすかさずトドメをさした。


 ・・・右肘からのエルボードロップを鳩尾に打ち込んだ。破戒僧は苦しみながら気を失った。


 ・・・静かな空間。


 私が立ち上がると大歓声が響いた。


「な、なんだ!!?あの流れるかのような戦い!?まるで映画みたいだ!?」

「いや、映画でもあそこまでの動きはねぇだろう!!?俺なんか魅入って無言で見てたわ!!」


 動揺の歓声が響く。


 私は無言のまま倒れたヤンキーを抱えてリングから降りた。




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