第21話 依頼遂行。
店を出た後。
レナは二本のロウソクを見ながら。
「・・これは本当に効くのでしょうか?」
この質問に私は。
「・・・やってみなければ分からん。・・どんな商品も説明文通りの効果を発揮するとは思わんだろ?」
当たり前のことを言った。
説明書どおりに効果を発揮するとは限らない。効かないかも知れないし、人によってはアレルギーで悪くなるかも知れない。
薬の類いは使う人間によって毒にもなる。・・・実際に試さなければ何も分からない。
レナは。
「・・そうですね。これ以外に私たちに手段はないのでしたね。・・やってやりましょう。」
気合いを入れた。
私は。
「・・とすると、やるからには最高のタイミングでやるしかない。深夜にするのがベストだが。それだと親の幻覚を自覚できるかどうか分からない。・・・決行は夜ご飯を食べている最中だ。」
レナは。
「・・食べているときに侵入するのは気が引けるというか。食事に対する冒涜ですよ。」
私は。
「・・食事と言ってもお菓子と水だけだ。多少荒れても問題はないだろう。」
レナは。
「・・・悪霊ですね。それ程までに手強いのですか?」
疑問の顔に私は。
「・・・単純な強さなら脅威では無い。・・だが、幻覚を使う以上、特殊能力があると見て動くべきだろう。・・う~~ん。ちょうどいい。レナ。悪霊退治して経験値を会得しようか。」
この提案にレナは。
「・・悪霊退治はしますが、経験値?・・確か、浮遊霊や悪魔を倒すことで得られ、強くなると言うあれですか?」
私は。
「・・そうだ。今のままでは弱い。これから先、悪魔が襲ってくる以上。強くなるのは絶対必須。人間社会では知識と繋がりを経験にしていたが、俺たち悪魔は力と能力という物理を経験しとかいとな。」
レナは。
「・・暴力ですか。私は反対です。そんな人間として許されないことを・・・」
続きを言う前に私は。
「・・相手は人間の常識は通じない。警察や自衛隊も悪魔の前では何もできない雑魚の集団。・・・結局、自分を守れるのは自分だけ。それも暴力のみだ。」
真剣な顔で反論した。
・・・私たちは悪魔。人間世界で共同生活は永遠にできない存在。
それ故に人間よりも非情で。人間よりも強くならなければならない。少しの甘い考えは命取りになる。
・・・今は依頼で人間に優しくしているが、あくまでも資金を調達し、経験値を稼ぐのが目的なのだ。悪魔だけに。・・何か変な事を考えた気がするがまぁいいか。
レナは何も言えずにいた。
そして、二人は無言のままレンタカーの止まっている駐車場に行き、夜まで待った。
夜。午後十九時。
まだ灯りがともっており、誰もが夕食を楽しんでいる時間。私とレナは標的のいる家の中庭に侵入した。
私は。
「・・さてと、このロウソクをあそこの窓から侵入させますか。」
指さしたのは台所にある小さな小窓。
レナは。
「・・・台所からですか?それだと時間が掛かるのでは?」
疑問に私は。
「・・確かにそうだ。しかし、下手に近い窓だと見つかる可能性があるからな。時間は掛かっても相手に気付かれずにする方が俺たちには好都合なんだ。」
考えにレナは。
「・・それもそうですね。・・・だとすると問題は幻覚が解け、悪霊が出た時、彼女がどう行動に出るのか。騒がれると厄介ですから。・・何か眠り薬を持っていますか?」
私は。
「・・・持っていない。それに眠らせると解決した後、説明が面倒になる。何しろ、話す内容が現実離れしている。例え、幻を見せられていると分かっていてもだ。」
レナは沈痛な顔をしていた。
・・・それもそうだ。幻を見ていてもそれが悪霊だと悪魔の仕業だと言っても誰も信じない。実際、幻覚を見せることは薬、麻薬でもできるし、脳をおかしくする薬品は探せば見つかる。
彼女はおそらくその類いだと感じているはずである。
悪魔の所業だと理解させる為には目の前でやるしか方法は無い。私はロウソクに火を付けた。
煙は小窓へと入っていったのを確認した私は。
「・・よし、後は効果が現われるまでじっくり待てば良い。・・どうせ夜の中庭を見る隣人はいない。」
壁に座り込んだ。
・・・夜中に他人の家を覗くのはマナー違反である。つまり、ここで不審なことをしていても誰にも気付かれることは無い。
待つこと三十分。家の様子が変わっていくのを感じた。
私は。
「・・もうそろそろかな。見てみるか。」
そう言って窓からのぞき見をした。
すると、両親が悶え苦しんでいた。・・・その光景を彼女はただ呆然と見ていた。おそらく、何をして良いのか分からず思考が止まっているのだろう。
そして、両親の体から紫色の煙が湯気のようにあふれ出してきた。それが徐々に濃くなっていき、中の様子が見えにくくなりつつあった。
私は。
「・・行くぞ。」
強行突入を決行した。
窓ガラスを派手に割り、侵入した。・・・レナも後に続いていった。
部屋に入ると周囲は紫の煙で満たされていた。窓を割ったから外に漏れるかと思ったが漏れること無く留まっている。・・・まるで意思があるかのように。
レナは。
「・・何か嫌な気配を感じます。」
少し怖がっていた。
私は。
「・・まぁ、敵意ある悪霊は全て嫌な気配を漂わせるものだ。何、元凶さえ叩けば解決。これが一番。」
余裕の顔をした。
・・・こんな気配は二十年の時の中目一杯感じ続けていた。そして、気配が濃厚になっていくのを感じた。
視界には紫とは違う黒い影が三つあった。
近づくとそこにいたのは彼女と両親だった。・・・両親は呆然と立っており、何も見ていない感じであった。彼女はそんな両親を眺めていた。
私たちに彼女が気付くと。
「・・あ、あなたたちは?・・あなたたちがやったの?」
質問に私は。
「・・ああ、そうだ。」
即答した。
彼女は。
「・・どうして?・・こんなことをするの?・・・私が何したって言うの?」
涙目で訴えてきた。
レナは沈痛な顔だが、私は。
「・・依頼でね。君の友達の高校生から君を助けて欲しいと。」
冷淡に答えた。
彼女は。
「・・友達?・・・あの人が?・・なんで?・・そんなに親しくしてはいないはずだけど。」
疑問の顔であった。
私は。
「・・君はそうでも向こうは違う。・・・依頼主は君が偽りの幸せをしているのが君の為にならないと思ったらしい。勿論、これを解決した後。君のこれからについて聞いてみたら。一緒に暮らすとも言っていた。」
彼女は。
「・・・そんなに?・・ウソじゃ無くて?」
この質問にレナは。
「・・ウソではありません!!真剣に純粋な思いが伝わっていました。聖職者である私が保障します。」
胸を張って言った。
それについては同意できる。私もウソは言っていないと思ったからだ。
彼女は。
「・・・でも、迷惑じゃ?」
不安な顔に私は。
「・・裕福なんだろう?なら大丈夫だ。」
彼女は。
「・・・わ、私は・・」
続きを言う前に両親がうめき声をあげてきた。
私は。
「・・続きは後だ。・・まずはこいつをどうにかする!」
そう言って戦闘態勢に入った。
レナも同様に徒手空拳で構えた。両親の体から白い影が出てきた。全て出ると両親は床に倒れた。
白い影は段々と凝縮していき、人間サイズの実態となって現われた。
彼女は。
「・・・な、なに?これ?・・」
あまりのことに言葉が出ない。
私は。
「・・まぁ、これが香水の正体だ。悪霊だよ。本物の。」
簡潔に説明した。
彼女はそれでも何か言いたそうだが、何も言えずに怯えていた。
私は。
「・・さてと、レナ。相手をしてやれ。」
レナは。
「・・分かりました。」
真剣な顔で頷いた。
・・・さすがは聖職者。霊を見ても怯えるどころか冷静だ。これなら頼りになる。
レナは力を集中させ、翼を生やした。それを見た彼女は口をパクパクしていたが説明はしない。面倒くさいからだ。
レナは目に魔力を集中させ。
「・・スキル`光線`!」
ビームが発射。
・・・ビームは白い影に命中、当たった部分が空洞になっていた。白い影に顔は無いから効いているか分からないが悶えているのは確かだ。
レナはそのまま白い影に向かい、右手で斬り裂くように攻撃した。
変身したレナは翼だけで無く、爪もオオカミのように生やしていたのだ。白い影は三つの縦線が入り、まるで悲鳴を上げるかのように胡散した。
その白い煙はそのままレナの体に入ってきた。
・・・私は安堵の思いであった。幻覚を使うのかと警戒したが、そこまでの力は無かったようだ。
私は。
「・・俺たちはこれで失礼する。窓を割ったことで近所は気付いたかも知れない。君がここでの事を話しても良いが。おすすめはしない。・・・信用されないからな。」
そう言ってレナと共に家を出た。
外に出た私たちはサイレンの音がした。案の定、誰かが通報したのだろう。
私は。
「・・飛ぶぞ。」
レナは頷いた。
私たちは文字通り空に飛んで逃げた。・・・上空からでは近所の住人が窓から様子を見ていた。
当然だな。窓ガラスが割れて更には紫色の煙が出ているのだ。関わるのがどうかしている。
私は。
「・・さてと。後は依頼人に連絡するだけだな。」
そう言ってその場を去った。
警察が駆けつけ、家に突入すると。
住人と思しき、三人を保護。その内、両親は精神崩壊を起こしているらしくまともに話す所か虚ろな目で何も写していない。
一方、女子高校生に意識はあるが事情を聞いても`幻を見ていました。`と要領を得ない返答で警察は困っていた。
その時。年配の警察官が入ってきて。
「・・君を迎えにきた方がいらっしゃった。・・ついてきなさい。」
これに若手の警察官は。
「・・えっ?その、大丈夫なんですか?・・確か、この子の家には親族はいないはずです。」
この質問に年配は。
「・・大丈夫だ。来たのはこの子の友達の女子高校生とその両親だ。」
若手は納得しない顔であるが、年配は反論は許さんという顔であった。
彼女はそのまま警察署の外へと行った。
そこに待っていた女子高校生、依頼人は。
「・・!無事で良かった!・・本当に・・」
抱きついていった。
彼女は。
「・・・それじゃ、あの人が言っていたことは本当だったの?何で?」
疑問に依頼人は。
「・・だって、あなたは私の友達。・・・初めての許せる相手だから。」
涙目で答えた。
・・・彼女の両目から涙が溢れていた。今までの孤独の我慢が爆発したように泣き出した。依頼人は静かに抱きしめながら彼女を連れて車に乗った。
それを見た若手は。
「・・友達思いはいいですね。・・・先輩、あの子の両親って。」
年配は。
「・・正確には親戚が本庁のお偉いさんでな。・・まぁ察しろ。」
若手は何も言えずに見送った。
警察署屋上から見ていた私は。
「・・お偉いさんね。・・やろう思えばできたはずだが。・・・気になるな。少しつけてみるか。」
隣にいたレナは。
「・・無粋ですよ。確かに疑問ですが。この件は人間では解決できないのは事実。これ以上は余計なお世話ですよ。」
釘を刺した。
私は。
「・・それもそうだな。俺たちは悪魔。人間関係に首を突っ込むのは間違っている。一晩休んで帰ろうか。」
そう言ってビジネスホテルに向かった。
彼女は車の中で。
「・・これからどこに行くの?」
女子高生は。
「・・私が住んでいる家よ。この街に住むときに親が用意してくれたの。」
そう言った時、車は止まった。
着いたのは二階建ての一軒家。彼女は唖然と眺めていた。
女子高生は。
「・・ありがとう。お父様。後はこの子と一緒に暮らしていきます。」
父親は。
「・・楽しめよ。」
意味深な事を言って車を発進した。
女子高生は鍵を開けると。
「・・さぁ、入って。今日から私たちの家よ。」
彼女は戸惑いながらも中に入った。
・・・中は広く、二人所か四人家族でも楽に暮らせるスペースである。
友達からお風呂に入るよう言われ、彼女は入った。湯船に浸かりながら、彼女は思った。迷惑にならないかと?これ程の家に住むことになっても考えるのが心配事。
・・・彼女の純粋な優しさがよく分かる。
風呂から上がり、用意してくれた服に着替えようとしたとき、彼女は。
「・・えっ?これって?」
目を疑ったがこれ以外無かったので着替えた。
リビングに行くと友達が。
「・・あ、きたきた。・・その服似合って良かった。」
満面の笑みであった。
彼女の格好は女スパイがよく着るラバースーツ。チャックがなく、足から手、首筋まで黒一色であった。
彼女は。
「・・あ、あの。どうしてこんな物が?」
当然の疑問に友達は。
「・・まぁまぁ、いいから付いてきて。」
そう言って手をひぱっていた。
着いた場所は二階の部屋。
・・・友達が開けると中は真っ黒で何も見えない。彼女は怯えながら入っていき、友達も入った。扉を閉め、鍵を掛けた。
明かりをつけると。そこにあったのはX型の磔台に三角木馬。椅子には導線がついているのでおそらく電気椅子。壁にはあらゆるムチが並んでおり、机には色々な道具が置かれていた。後は部屋の隅にツインベッドが置かれているが手枷や足枷が付いていた。
・・・SMセットと呼ぶに相応しい物が部屋中に置かれており、窓は無かった。
彼女は絶句していると友達は彼女を引っ張っていき、X型の磔台に拘束した。
何もできずに呆然としていた彼女は。
「・・どうして?こんなことを?」
怯える声に友達は。
「・・・私ね。友達というかペットが欲しかったの。一人暮らしを始めたのも自分で探したほうがいいと思ってね。だけど近づく人達はお金目当ての連中ばかり。そんなのにはうんざりしていたの。一緒に暮らしても楽しくないから。図書室にいたのもその為だった。」
「・・・だけどあなたは違う。勉強を教えていく内にその顔はまるで子犬のように可愛くて、純粋で、素直を体現していた。まさに私の求める理想のペット。すぐにでも欲しかったけど、色々と手順が必要だったから終わるまで待っていたけど。まさか、あんな事になるなんてね。」
「・・あなたは知らないだろうけど、一度だけ強行手段を取ったことあるの。だけど失敗した。叔父さんの派遣した刑事が何か操られているかのように使い物にならなくてね。そこで裏サイトの存在を叔父さんに聞いて、あの二人に依頼したの。」
「・・男の方は厄介だったけど、女の方は簡単だわ。あっさり口車に乗ってくれたから。・・・ああ、大丈夫。あなたの両親のような生活は送らせる気はないわ。食事は私が作るわ。こう見えても自炊には自信あるし、必要な物は揃えてあげる。だけど、学校には行かせないわ。というかもう行けない。すでに退学届けは受理されているから。・・・全て私が面倒見てあげる。安心して、私の寵愛を受けて。」
彼女の顔を舌で舐めた。
彼女はふいに笑った。それは幸せの笑みでは無く、結局自分はこういう道しかないのかと自傷気味の笑みであった。
友達は。
「・・あぁ、そうよ。その笑みよ。これから時間はある。・・たっぷりと楽しみましょう。」
そう言って彼女に首輪を掛け、壁にあるムチを手に取った。
余談だが、友達からの寵愛というの名のSMを受け続け、毎日一緒のベッドで寝て、食事やお風呂を共にしていったが、彼女がその家から出ることは無かった。
・・・それは大人になり、友達が同じ興味を持つ相手と結婚しても変わることは無く、彼女はペットとして生き続けた。
仁朗とレナは見誤ったことを知るのは永遠に無かった。




