第18話 調査開始。
「・・・厄介とはどういうことですか?」
質問するレナに私は。
「・・・この家から気配がする。・・悪魔のな。」
この呟きにレナは。
「・・すぐに祓いましょう。」
十字架を手に向かうレナを私は。
「・・・止めとけ。・・相手にされない。」
制止した。
レナは何か言いたそうだがその前に私は。
「・・まず、この気配は家全体を覆っている。個人では無い。もしかしたら家に取り憑いているかも知れない。・・そうなると家主が操られている可能性もあるが、操られていない可能性もある。依頼主から聞いているだろう?・・この家の事情を。」
その言葉にレナは言葉を詰まらせた。
・・・家族関係は悪い。行った所で門前払いだ。
私は。
「・・とりあえず、落ち着ける場所に行こう。行動するのはそれでも遅くは無い。」
そう言って引き返した。
・・レナは悔しそうな顔で後を追った。
商店街。
私たちは喫茶店に入った。・・・古風な喫茶店で内装はアンティークな絵とフクロウの置物が置かれているだけだ。
・・・シンプルなデザイン。しかし、そこがいい。
ごっちゃまぜは返って気持ち悪いからだ。・・・私たちはコーヒーを二つ頼んだ。
持ってくるまでの間、私は。
「・・さてと、今、言えることはあの家に悪魔が取り憑いている。しかも、隠そうとしない雰囲気。おそらく、家主の許可を得ているだろう。・・もしかしたら、俺と同じように悪魔に囁かれたかもしれない。最も、乗っ取られているだろうがな。」
鼻でため息をついた。
・・・私が悪魔の力を取り込めたのは、偏に私の生きる欲望と歪んだ精神力があって初めてできたこと。しかし、他の人間も同じかと言えば違う。
・・・今の世の中、短気な者が多く、精神力は脆い。
・・・その証拠が悪徳商法だ。・・キャッチセールスともいう。
マルチ商法やネズミ溝で言葉巧みに会員登録し、金を搾り取っていく。大抵の人間は引っかかる。
・・何故なら、金が欲しいと自分は必要とされている。
社会からのはみ出しを受けた者が抱く劣等感を利用した詐欺が頻繁に起きている。現代人の心理をよく知った手口だ。・・・あの悪魔も言葉巧みに近づいたからな。
レナは。
「・・何という卑劣を。・・やはり、悪魔は須く滅ぼすべきです。例え、この身が汚れていても。私のやることに一切の迷いはありません。」
堂々とした発言に私は。
「・・おい?!ここでそんな発言はよせ。・・見ろ。」
そう言って周りに視線を送った。
客達はこちらをチラ見した後、コソコソと話している。内容は分かるが知りたくも無い。
コーヒーを運んだ店員は。
「・・お待たせしました。コーヒー二つでございます。どうぞごゆっくり。・・・それとあまり大声で卑猥な発言は控えてください。」
最後は小さい声で注意勧告してきた。
それを聞いたレナは呆然としたが、しばらくすると赤面し。
「・・あ、その。・・・すみません。興奮してしまって。」
小さく謝罪した。
ため息をついた私は。
「・・はぁ~~~~。兎に角。これを飲んだらさっさと行くぞ。・・ついでにあの家の現状も知っておかないと。・・今、知っている情報は依頼主からのだけだ。・・他でも集めないと。」
コーヒーを一口飲む私にレナは。
「・・彼女がウソをついていると?」
嫌悪な顔である。
私は。
「・・裏を取るという意味だ。・・・お前だって空回りは嫌だろう。・・特に人権に関わることならな。」
念押しした。
・・・他人の調査で大事なこと。それは本当なのか嘘なのか。・・いくら依頼されたとはいえ。根の葉も無い事を言われ、そいつの人生が台無しになることは今の世の中では当たり前のように横行している。
・・特に、携帯というどこからでも情報を流せる通信機はそれを助長している。
レナは。
「・・・分かりました。あなたがそう言うのなら。・・ですが、私は彼女がウソをついているようには見えません。」
キッパリと言った。
私たちは喫茶店を後にした。
商店街を歩きながら私はあることに気が付いた。
情報収集とはどうやればいいのだ?
・・・ゲームやアニメのように道行く人に聞けば良いのか?・・だが、考えてみれば怪しい行動だ。警察でもあるまいに。これでは裏所か現状も把握できない。しばらく悩んだ。
・・・その時、私は。
「・・・待てよ。別に人間に聞かなくても良いんじゃねぇのか?・・・あいつに聞いてみるか。」
私たちは人がいない場所に行った。
街の中にある高台。
ここからなら周囲を見ても変に思われないし、あの家を見ていても誰も不審に思わない。
・・・誰も居ないことを確認し、インプを呼び出した。
「・・よぉーー!!何か物入りで?」
私は無視して。
「・・・あそこに見える家あるだろう。あそこから気配がする。俺とこいつ以外に悪魔が活動しているはずだが、何か知っていないか?」
この質問にインプは。
「・・ん??・・・聞いたことは無いな。・・・ただ、あそには悪魔がいるのは確かだが、悪魔じゃ無いな。」
この言葉に私は。
「・・?悪魔であって悪魔じゃ無い?・・矛盾しているな。・・それとも類似にする何かがいると?」
この質問にインプは。
「・・・気配がするのは本当だけど。意思が見えない。・・・変な感じなんだよ。・・ただ、この気配には覚えがある。・・幻覚と洗脳の気配だ。」
この答えに私は。
「・・・成る程。分かった。ありがとうな。」
礼を言うとインプは消えた。
レナは。
「・・今のはどういう意味で?」
この質問に私は。
「・・その前に確かめたいことがある。・・依頼主に聞きたいことがあると連絡してくれ。」
別れ際に番号を教えて貰った。
レナは頷いて連絡を取った。
しばらくすると彼女がやって来たのを見た私は。
「・・・すまないな。急に呼び出して。・・・聞きたいことは一つだけ。・・・友達と別れる前、直前でも数日前でも良いが。・・・何か変わったことは無かった?・・例えば、新しいアクセサリーを買っていたとか?」
この質問に彼女は。
「・・・そう言われましても。・・・あ、そう言えば。新しい化粧品が出たとかで買ったらしいんです。・・確か、香水だったかな?・・何でも香水を願いを込めながらかけると良くなるとか。・・願掛けみたいなものです。・・私は信じていませんが。」
これを聞いた私は。
「・・そういう宣伝だったのか?」
彼女は。
「・・・買ったときに店員が言っていたそうです。・・気になってホームページを見ましたが。そんな説明はありませんでした。」
私は。
「・・ありとがとう。・・参考になった。・・・後は任せてくれ。」
真剣な対応に彼女は少し`ビクッ`とし、一礼して去っていった。
レナは。
「・・・少し、戦意が出てましたよ。」
私は頭を掻いた。
まだまだ未熟のようだ。
レナは。
「・・・あなたの調べたいことは私にも分かりました。・・香水が原因ですね。」
私は頷いた。
・・・あの家に悪魔はいないが気配がある。つまり、悪魔が作った製品で願いを叶えている状態になっている。
私は。
「・・・夜になったら忍び込もう。」
レナは頷いた。
夜。十九時。
・・・まだ明かりがチラホラある時間帯。
本来なら深夜にしたいが、相手が寝静まってしまう前の状況が知りたい。レナはあの場所で待機。
こういう隠密行動は一人の方がいい。
音を立てずに忍び込み、カーテンの隙間から中を見た。
・・・そこには一家団欒で食事をする光景が映し出されていた。
・・・食卓に並ぶ美味しそうな料理。・・・母親がよそったご飯を娘が美味しそうに食べ、父親は嬉しそうに眺めながら食べている。
・・一見すればどこにでもある風景。
しかし、家の事情を知る者としておかしい光景。
・・・私は魔力を目に集中させた。
・・・このやり方はとあるマンガで見た相手の力を見抜くやり方。・・実際、地雷缶を設置した場所も分かるくらいの索敵方法だ。
・・・改めて見ると異様な光景が映し出された。
・・・母親は虚ろな顔で食事をし、父親も同様な顔をしている。
食卓に並んでいた料理も一変し、お菓子と水だけだった。
娘はそんな両親を見ながらお菓子を食べている。その表情は笑顔だか、どこか悲しそうな感じがした。
私は。
「・・さっきのは幻覚でこっちが本物か。・・・どうやら娘だけは正気の可能性があるな。・・・でなければ、もっと楽しそうにしているはずだ。」
そう思い、家から離れた。




