第14話 これからの事。
悪魔の襲撃が終わった日に私はインプを呼び出した。
目的はレナの治療である。
インプは。
「・・こいつは無理だな。その人間に投与された薬はカタログにあるあらゆる薬を作れる薬剤セットだ。・・・しかも、進化している。治すとしたら本人に聞くしか無いが。ないって言ったんだろう?・・それじゃぁ無いな。絶対に。」
宣言した。
それを聞いたレナは頭を垂れ沈黙した。
・・希望がなくなり、絶望しか無い状況。・・・仕方ない諦める事にした。
私は。
「・・彼女は今後どうなる?」
この質問にインプは。
「・・さぁな。俺は医療専門じゃあない。・・だが、一つだけ言える。・・人間として天寿を全うすることはない。・・中途半端とはいえ、悪魔としての資質。・・寿命が無くなり、永久的に生きたり、身体能力は人を超えている。・・・悪魔のスキルを獲得できるかは微妙だが、本人は習得する気はないようだ。」
言いながら彼女を見た。
その様子はインプの言うとおりである。
私は。
「・・ありがとうな。教えてくれて。」
お礼を言った。
インプは`気にするな`と言いながら消えた。・・・二人だけの空間。静寂が支配した。
私は。
「・・・これからどうする?・・教会に戻るか?」
この質問にレナは。
「・・戻っても誰も居ません。・・・私一人では維持はできない。・・何よりも悪魔が居ていい場所ではありません。」
ヤケクソ気味であった。
私は。
「・・そうか。気持ちが落ち着くまでいつまでも居ていいからな。・・手伝いとかは気にするな。・・まぁ何かやって落ち着きたいのなら、相談に乗る。」
そう言って部屋を出た。
今日はかなり疲れた。百年の悪魔との戦い。・・聖職者レナの不幸。
色々ありすぎてどうしたらいいのか。・・・精神が疲れて考えるのを止めた。
自室に戻り、深い眠りについた。
・・朝。
太陽が昇り光を照らした。
目覚まし時計を持ち合わせていなかったため、自身の腹時計で目覚めた。・・・食堂に向かう最中、何やら良い匂いがした。
・・扉を開けると、食卓に焼きたてのパンと目玉焼きが置かれていた。
二人分、作った人など考える必要は無かった。・・・台所から出てきたのは作り笑顔になったレナだった。
私は。
「・・・大丈夫なのか?」
この質問にレナは。
「・・・大丈夫とは言えませんが、何かしないと落ち着かないのです。・・迷惑ですか?」
心配そうな顔つきに私は。
「・・・別に。こちらが君を泊らせているような物だ。・・・むしろ、ありがたい。このような朝食は久しぶりだ。」
言いながら席に着いた。
無論、今まではコンビニパンとか、カップラーメンとかそういうものしか食べていないという理由では無い。・・他人が作ってくれた食事を食べるのが久しぶりである。
・・こういう雰囲気は人間だった頃、幼い頃のまだ両親が優しかった頃以来である。
・・・あれから二十年。・・もう死んでいるだろう。・・・私は感慨深くなっていた。
レナは。
「・・さぁ、冷めてしまう前にいただきましょう。」
そう言ってレナも席に着いた。
私たちは食事を始めた。
・・・食べ終えた後、私は。
「・・さてと、俺は田んぼの手伝いでもしてくるか。」
この言葉にレナは。
「・・田んぼ?・・お年寄りのお手伝いですか?・・でしたら私も。」
この言葉に私は。
「・・いや、無理だ。・・羽が出たままだ。」
この指摘にレナは気付いた。
・・彼女の体は悪魔のまま。変身が解けていない。
気落ちする彼女に私は。
「・・なぁに。変身したんだから解除はできるだろう。・・俺が手伝ってやるから。今夜にでも。」
この言葉にレナは。
「・・・何から何まですみません。」
そう言いながら食器を片付けに台所に向かった。
さてと、私は身支度をして村に向かった。
そこでは朝早くからお年寄りが田んぼをせっせと耕していた。
私の姿を見た老人は。
「・・おや、紅川さん?・・おはようさん。・・そう言えば、あんたの所にえらいべっぴんさんな外国人さんが行ったけど。・・何だったか。・・ほら・・・」
何か言おうとしていた老人に老婆は。
「・・シスターだよシスター。・・尼さんのような人だよ。・・で?どうだった?何かあったのかい?」
興味本位丸出しである。
私は。
「・・別に何も。・・・昨日は遅くまで話し込んでいてね。・・その上、館はまだ不穏な影があります。とか言っててさ。・・・しばらく滞在するってよ。」
かなりの大嘘をついた。
それも仕方ない。本当の事を話しても信じない。・・老人達はヒソヒソと話し合っていた。・・何を話しているのか聞きづらい
老婆が。
「・・・それはいいね。・・・この際だから男を見せたらどうだい?・・尼さんでも嫁ぐ事はできるだろう?」
かなりのニヤけ顔である。
・・・尼さんは確か、未婚の方がなる僧でシスターも似たような者だ。・・結婚自体は無理である。
・・だが、間違いを正す気はない。面倒くさい。
私は。
「・・相手次第だな。」
素っ気ない態度で答えた。
これ以外に話題を終わらせる術を知らない。・・老人達はますますヒソヒソと話していた。こう言う話は勘弁願いたい。
・・・それから先は田んぼの手伝いをしながら、`赤ん坊が見たい`とか`冥土への土産話に子供が見たい`とか。・・・いい加減にしてほしい。
夕方。
私が帰宅すると明かりが付いている。・・・外からでも分かるくらい良い匂いがしていた。
私が扉を開け、食堂に行くと。・・クリームシチューがあった。
私は。
「・・・これは中々、・・?確か、クリームシチューの素は無かったが。・・・一から作ったので?」
この質問にレナは。
「・・?そうですよ。材料もありましたので作るのは簡単でした。・・お嫌いですか?」
心配そうな顔に私は。
「・・いや、好きだよ。・・ただ驚いただけ。普通の家で本格的なシチューが味わえるのが。」
レナは何かに気付いたのか。
「・・あぁ、そういうことですか。・・私は食事係をしていて一から調味料を作った事があるのです。・・味の素のような即席は使っていません。・・・それが試練だと。神父様が・・・」
言いづらい表情である。
私は。
「・・まぁ確かにあいつは嫌な奴だ。・・・尊敬する価値も無い。・・だが、培ってきた技術や知識まで否定する事は無い。・・・罪があるのは悪魔や人のような悪い心を持った奴。・・・知恵に罪は無い。」
カッコいい台詞を言った。
・・・一度、こういうことを言ってみたかった。
・・・私はニヤける顔を我慢しているとレナは。
「・・そうですね。・・否定する事は私という存在も否定する事。・・・ありがとうございます。何か吹っ切れた気がします。・・それと、笑いたかったら笑っても良いのですよ?・・我慢しているのバレバレです。」
最後の部分は笑って言った。
・・気付いていたようだ。私は気にする事無く大笑いをした。彼女もつられてか笑っていた。
・・・今までの生きていた中で一番楽しい一時であった。
食事を終えた後、私は。
「・・・それじゃぁ、本格的に始めるか。・・・変身を自在にコントロールする修行を。」
この言葉にレナは。
「・・はい、よろしくお願いします。」
良い返事である。
私たちは地下に降りていった。




