第13話 決着。
レナの背中からコウモリの翼。・・・しかも、昼間会った時には感じなかった悪魔の気配がレナからわずかに感じる。
私は目の前のヨウルに。
「・・何をした?」
この質問にヨウルは。
「・・私がそいつらに特別製の食事を与えていたのだ。・・体内に取り込んでしばらくすると悪魔に変貌し、我が下僕になる秘薬をな。・・・そいつだけは薬の効果が薄いのか変貌が遅くてな。・・私の力で後押ししたのだ。」
下卑た笑い声を上げた。
・・成る程。さっき言っていた`素質がない`とはこう言う意味だったのか。・・良かったと取るべき素質である。
そう思っていると後ろにいるレナは。
「・・し、神父様?・・これは、何?・・・私、どうなっちゃうの?」
悲しそうな顔で聞いてきた。
先ほどの説明を聞いていないのか?・・あるいは聞いてても理解したくないのか?
・・ヨウルは。
「・・・安心しろ。体に害はない。・・・むしろ、人間から悪魔になって永遠に生きるだけだ。・・・良かったな?・・人間の最大の夢。永遠の命が叶って?」
そう言うヨウルにレナは。
「・・いや、私は神に仕えるシスター。・・神の使いとして生き、天寿を全うするの。・・・永遠なんていらない。」
苦しみながら答えた。
それを聞いたヨウルは。
「・・そうか。それは残念だったな。・・その姿になった以上。自害しても地獄に落ちるだけだぜ。・・・そういう制約で作った薬だからな。・・神の世界に行く事は絶対に無い。」
絶望の言葉であった。
レナはそれを聞いて顔を伏せ、何もしなかった。
グローブをはめ直した私は。
「・・・相手の趣味について言う気はないが。・・一つ言わせて貰う。・・お前はここで死ね。」
殺す宣言をした。
ヨウルは笑顔のまま、突進してきた。・・・私は右に避け、`発火`を纏った拳を食らわせた。試した事のない技。・・拳は熱いが、それ以上にイラつきが胸の内に一杯であった。
ヨウルは。
「・・つぅ。・・中々やるな。・・それなりに経験しているか!!!」
左裏拳を放った。
私はそれを両手で受け止めた。相手の体格上、かなり豪腕だ。・・・`怪力`を掛けた両腕でも完全に受けきれない。・・私の体が数歩引き摺りながら下がりながら止まった。
相手が驚いている間に私は。
「・・・どぅりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヨウルの左腕を両手で掴み、投げた。
さながら一本背負いである。・・・悪魔は体勢が悪く、簡単に投げ飛ばされた。
翼があるので空を飛べる考えた私は。
「・・`発火`!!!・・・シューーート!!!」
手のひらに炎の弾を作り出し、放った。
炎弾は真っ直ぐにヨウルに向かい着弾した。飛んでいるとはいえ体勢を整えなければまとも動けない。そのスキを見事についた。
燃えながる悪魔は地面に落下した。
私は安心してはいない。・・・次の瞬間、ヨウルは炎を腕を振り回して払った。やはり死んではいなかった。・・だが、ノーダメージではない。・・所々に火傷の跡がある。
ヨウルは。
「・・サキュバス達を倒した時点では少しはやる新参者だと思っていたが。・・どうやら甘く見すぎていたようだ。・・あの女は未だに動く事は無いか。所詮は素質のない失敗作。・・期待した私がバカだった。・・・仕方ない、スキルを使わせて貰おう!!」
叫んだ瞬間、手から氷の剣が出現した。
刃渡り百センチはあり、両手で持っている。さながら大剣である。・・形としてはロングソードに似ている。ヨウルはそれを出した後、周囲に氷の短剣を出現。
数は三十。・・・中々の量だ。本気と捉えて良いだろう。
私はグローブの形状を変化させた。・・・爪をあらわにした斬撃に特化したタイプ。お互いの準備は完了した。
しばしの沈黙。・・しかしすぐに破れた。
ヨウルが放った氷の短剣三十、一斉にこちらに向かってきた。
私は冷静に。
「・・`斬爪`!!」
爪を三回振り回した。
避けるのが無理ならば迎撃以外無い。自分に向かっている物だけたたき落とせばすむ話である。・・・短剣を粉々にした後、ヨウルは向かってきた。
・・氷の大剣を斜め右上から振り落としてきた。
受け止めるのには力は向こうがやや上。防御する術は無い。・・ならば避けるしかない。私は右に回避した。
重い武器での一撃は返すのに時間が掛かる。例え、力自慢でも例外はない。
私は反撃される前に。
「・・`斬爪`!!」
ヨウルの左腹に斬撃を放った。
そこから血が吹き出るがヨウルは少し痛そうな顔をしただけ、氷の大剣が返し刃で向かってきた。・・・私は全力で回避に専念した。
バックステップで下がり、ギリギリで回避した。
少しだけ左腕がこすれ血が出たが、たいした傷ではない。・・・左腕を確認。すこし痛みはあるがまだ動く。
ヨウルは傷口を押さえ。
「・・わたしに火傷を負わせただけで無く、傷まで。・・・絶対に殺す。」
殺意むき出しで大剣を構えた。
私は。
「・・気が合うな。俺も同じだ。」
グローブに炎を纏った。`炎爪`を発動。
グローブとの相乗効果で強度と斬撃がアップするのが分かる。
・・睨み合う両者。そして、両者一斉に走った。
ヨウルは大剣を横一文字に放った。・・私はそれを躱そうとはしなかった。躱せばすぐに反撃が来る、そう予感したからだ。
私は右の`炎爪`で受け止めた。・・・ヨウルは驚いたがそれも一瞬だけ、すぐに気を取り直し力ずくで押してきた。
炎と氷の拮抗。
大剣は少し溶けているが未だに衰えていない。
・・私は一か八かの賭けに出た。
「・・形状変化。・・・`衝撃`!!」
左手のグローブを大剣に向けて放った。
大剣は`パキン`と折れた。ヨウルは驚きの声を上げた。
・・私はこのまま追撃をした。
「・・形状変化。・・`衝撃二連`!!」
右手のグローブも変化させ、ヨウルの腹に二連撃放った。
・・・二回連続の`衝撃`。悪魔は膝をつき悶えていた。
私は。
「・・形状変化。・・・`炎爪・小太刀`!!」
右手のグローブを変化させ、炎の小太刀を作った。
・・無防備のヨウルの左肩を斬り落とした。・・あっさりと斬れた事に呆然としたが気を取り直して追撃した。次に右肩を斬り落とした。・・両手が無くなった悪魔。
私は小太刀を向け。
「・・・お前に聞きたい事がある。・・悪魔化を戻す方法はあるのか?・・言っておくがウソをつくなよ。俺にはウソを見抜くスキルがあるからな。」
脅迫した。
当然、私にそんなスキルは無い。しかし、こう言えばウソをつく事はできない。・・はったりは時として大事な事だ。
ヨウルは。
「・・なんだ?・・随分と気に掛けるな?惚れたのか?」
悪い笑みを浮かべた。
私は小太刀を悪魔の胸に突き刺し。
「・・質問に答えろ。それ以外は聞かん。」
かなりイラッとした。
あの女は気にしないが、さすがに待遇が不幸すぎる。・・・助けられるのなら助けたい。それだけだ。
ヨウルは。
「・・っ!・・ふん、ならば教えてやる。・・そんな物はない。戻す事など考えた事も無いからな。わかったらさっさと殺せ。・・そして、己の無力さを噛みしめながら生きろ!・・人間が。」
笑い出した。
私は。
「・・そうか、死ね。」
無感情に首を跳ね飛ばした。
・・ヨウルは灰となり、眷属のサキュバス達も消えた。・・残ったのは私とレナだけである。どうやら完全な眷属では無かったから消えなかったのだろう。
しかし、それが幸か不幸かは彼女次第である。
私は。
「・・悪魔は消えた。お前の同僚や先輩も消えた。・・・これからどうする気だ?」
この質問にレナは。
「・・・私はもうシスターではありません。人間でもありません。・・・本来なら自害するのでしょうが。・・・死にたくない。・・生きたい。」
後半は涙を流しながら呟いた。
・・・私はため息をつきながら。
「・・会ったのも何かの縁だ。しばらくここで暮らせ。・・そして、頭が冷えたら改めて考えたら良い。」
そう言って手を差し出した。
レナは。
「・・・すみません。お世話になります。」
弱々しく握りしめた。




