第12話 戦いの準備。
洋館では作戦会議がおこなわれた。
どこに居るか分からないが遠くない場所に悪魔と従者が潜んでいる。攻めてくる気が無いのは夜になってから襲撃すると考えた方が自然である。
・・今は、昼を回った所。・・迎撃の準備時間は充分にある。
とりあえず、やることは防備である。・・・しかし、柵を構築すれば襲撃してくることがバレバレである。ならば、わかりにくい防備が必要。・・・落とし穴を思いついた。
・・見た目では分からないが一度でも落ちれば驚愕する古き罠。・・しかも相手が人外なら殺す罠を仕掛けなければならない。
・・私はカタログを見た。何か武器として罠として機能できる品物を。
向かいにいるレナは。
「・・・こんな時にカタログを見るなんて、言っている割に余裕ですね。」
呆れ顔で言った。
・・・まぁ、人間には分かるまい。このカタログが普通では無い事に。・・ページをめくっているとある品物が目に入った。
・・・地雷缶。・・・地面に埋め、その上を歩いた者に強い衝撃を与え、気絶させる。気絶時間は半日。
今の私にうってつけの道具である。
落とし穴を作るのはやめる事にした私は、インプを呼び出した。
「・・この地雷缶を十個くれ。」
注文した。
インプはソロバンを出して。
「・・・はいよ。全部七百だな。」
合計ポイントを提示した。
一千七百もある。余裕である。・・・私はポイントを支払った。
すると、目の前の机に空き缶サイズの地雷缶が十個、並んだ。
レナは驚いた顔をしているが、私は気にせずに。
「・・・それじゃぁ、俺はこいつを設置してくるから、しばらく待ってくれ。」
地雷缶を袋に詰めて玄関に向かった。
外に出て、まず正面に地雷缶を六個、設置した。続いて裏口に四個、設置した。・・・罠作りは素人同然。
数を考えればもう少し欲しいが、どんな連中が来るか分からない以上、ポイントは残した方がいい。
いざという時に対処できる道具を注文しなくては。
設置完了した時、レナが近づいて。
「・・・一つ、いいかしら?・・・どうして戦うの?・・・嫌なら、逃げれば良いのに?」
この質問してきた。
これは私にとって最初に考えていた事である。
しばらくの沈黙の後、私は。
「・・・逃げたとしても今度は別の敵が襲ってくる。・・それじゃキリが無い。・・・ここで仕留めれば、少なくとも俺の実力が知れ渡り、余計な連中が来なくなる。・・まぁ、強い奴らは来るかもだが。」
自傷気味で答えた。
レナはそれ以上、何も言わなかった。
夜。
誰もが静かに眠る丑三つ時。森の獣たちも大人しくしている。・・・そんな中、私とレナは屋敷で待機していた。
電気を消し、いかにも寝ている雰囲気を醸し出して。
そうしていると、外から気配を感じる。・・・複数、警戒しているのかこちらを見回るように展開しているのが分かる。・・・私は動かない。下手に動けば気付かれるからだ。
しばらくすると、周囲の気配が一カ所に集まっている。
どうやら展開攻撃はしないようだ。裏口の地雷缶は無駄になったようだ。・・・私は静かに玄関に向かった。・・・後からレナも続いた。
私は。
「・・別に来なくても良いぞ?・・悪魔同士の殺し合いには無関係だぞ?」
人間には関係ないという私にレナは。
「・・・そうはいきません。私は聖職者です。例え、悪魔同士でも避けられる戦いは止めたいのです。」
強い瞳で答える。
こうなると何を言ってもダメである。・・そう思っていると、外からデカい音がした。続いて三発、音がした。合計四つ。残りは二つ。・・・これで相手は警戒しただろう。
しかも、これだけの音に家主が気付かない訳にはいかない。・・出なければ警戒心が一層強くなり包囲による攻撃を仕掛けてくる。
・・戦えるのが私一人で在る以上。それだけは避けたい。
私は意を決して外に出た。・・玄関先は戦場跡であった。
仕掛けた地雷缶の場所が大きく穴を開けていた。その近くに倒れる四人。・・・女である。服装はブラにパンツと下着のような姿。コウモリの翼と尻尾を生やしている。・・サキュバスだろう。・・あれは、どうみても男を誘惑する格好だからだ。
そう思っていると後ろにいるレナは震えた声で。
「・・・そんな。・・何故?」
何か怯えている。
いや、有り得ないものを見て困惑している。
私は。
「・・?どうした?・・本当に悪魔がいた事に驚いたのか?」
現代人が信じない事例の一つを述べた。
レナは首を横に振り。
「・・違う。・・この人達は、私の先輩達。・・・聖職者です!」
青ざめた顔で答えた。
・・・聖職者?・・しかし、どう見ても悪魔だし、気配も人間のものでは無い。・・・考えていると、奥から誰か出てきた。
・・・身長百八十センチ、中肉の体、メガネを掛けた優男。その服装は黒く神父が着るような服である。何よりも胸に十字架のペンダントを付けている。・・・どう見ても神父である。
しかし、その気配は悪魔である。・・他にも後ろから三人、女性が出てきた。服装はシスター服だが同じように悪魔の気配がする。
神父は。
「・・・手荒い歓迎ですね。・・・どうやら私たちの事は知っていたようだ。・・・後ろの彼女には何も話していないはずだが。」
そう言って殺気を飛ばした。
レナはそれに当てられかなり怯えていた。私は後ろを気にするわけにはいかない。・・目の前の男は強いと感じているからだ。
神父は。
「・・・初めまして、新参の悪魔。私はヨウル。・・・百年は生きる悪魔だ。・・・よろしく。」
そう言って挨拶してきた。
私は。
「・・・こちらこそ初めまして。俺は仁朗。・・・それで、こんな所に来た理由は。・・・殺し合いか?」
確認にヨウルは。
「・・・そうですよ。・・二十年前、新人潰しの倒した悪魔がいると聞きましてね。・・それだけなら興味は示しませんでしたが。・・・最近の情報では、そいつは悪魔を取り込んだ元人間だと聞きましてね。・・・興味が沸きました。」
ニヤけ顔で答えた。
・・・最近とはどれだけ怠惰に時間を過ごしたのだと聞きたいくらいである。
そんな会話を、後ろにいたレナが。
「・・・神父様!!・・・貴方様が悪魔だなんて。・・・悪い冗談は止めてください!!」
困惑しながらも質問してきた。
この様子ではあの神父を尊敬しているのがよく分かる。
・・・ヨウルは少し考えて。
「・・・・ふむ。・・・君には何も話していない。・・何故なら、集めたシスター達の中で才能が無かったからな。・・・精々、客寄せのマスコットぐらいしか使い道がなかった。・・・それだけだ。」
残酷な真実を述べた。
レナは膝から崩れ落ちた。・・・この顔は信じてきた者に裏切られ、絶望した顔。
・・・私は。
「・・・あまり、良い趣味ではないな。・・・その才能ってのは悪魔になる才能か?」
この質問にヨウルは。
「・・まぁそうだな。・・・適性があるかないかで判断している。・・無論、何で判断するかは言う気はないが。・・・さて、私はこれ以上、・・・無駄話は嫌いだが。」
その言葉に後ろにいたシスターは三人の服が破けてサキュバスに変身した。
さっさと殺し合いをしたいということか。
私は。
「・・最後に聞きたい。・・・どうしてここがわかった?」
一番気になることを聞いた。
ここの事は誰も知らない。・・・言った覚えもない。
神父は。
「・・・私に勝てたら教えてあげますよ。」
どこかで聞いた台詞を言った。
それと同時にサキュバスが一斉に襲ってきた。
・・私は。
「・・`発火`!!」
目の前のサキュバスが燃えた。
・・・熱さに苦しみ暴れていた。他の二人も止まった。その隙を見逃さない。
私は左のサキュバスに近づき。
「・・`炎爪`!!」
炎の爪で切り裂いた。
サキュバスは胴体を真っ二つにされ、絶命した。・・・相手の力量が分からない以上。一撃必殺で終わらせる。それしかない。
無傷のサキュバスは私に向かってピンクの息を吐いた。
・・・誘惑系の吐息であることは間違いない。サキュバスはそういう悪魔だ。・・・私は近くにある拳大の石を思いっきり投げた。・・・`怪力`のスキル発動状態で。
・・・その速さは凄まじく、時速二百はあるほどである。
サキュバスは為す術無く頭を吹き飛ばされた。・・・燃えていたサキュバスは鎮火が完了したのかゆっくりと起き上がった。しかし、それを待つ私ではない。
・・近づき、`炎爪`で斬り裂いた。・・・気絶している者はこれだけの騒動でも起きない。地雷缶の効果は絶大である。・・・サキュバスは全滅した。
残った神父に私は。
「・・・残りはお前だけだ。・・・勝負するか?」
この挑発に神父は。
「・・・いいでしょう。・・・中々やるようですから。こちらも本気でいきますよ。」
そういうと優男がゴリラ並の巨体に変身した。
コウモリの翼に蛇の尻尾、顔は山羊。・・・典型的な悪魔の姿になって。
ヨウルは。
「・・ただし、二対一だが。」
この言葉に私はクエスチョンマークが浮かんだ。
・・サキュバスはいないのにどういうことだ。・・・まさか、伏兵がいるのか?
・・警戒すると、後ろから悲鳴が聞こえた。
振り向くと、レナが苦しんでいた。・・・背中からコウモリの翼が生えたからだ。




