第10話 シスターレナ。
戦闘訓練で汗を流したので、シャワーを浴びていた。
お湯は勿論出る。そこまでの修理を終えているのだ。・・さてと、もう一度スキルを習得する為に出かけようと思った。
・・・斬撃系を習得したから、次は遠距離を習得するか。
・・・と考えていると誰かが近づいてくる気配を感じた。
・・・悪魔になって感覚を鍛えてきた成果が現れたことにちょっぴり嬉しかった。・・・しかし、気を許すわけにはいかない。
何故なら、この洋館に立ち寄ろうとする人はこの田舎にはいない。
・・誰もが気味が悪がって近づこうとしない。
・・まぁ、住んでいる人が無害だとアピールする為に、時々降りては老人達の手伝いはしているが。
・・とそんなこと考えている場合ではない。
・・私はグローブを着け、戦闘態勢に入った。・・・玄関からくる気配。足音がわずかにする辺り、相手は隠す気はない。・・余裕と取るべきだろう。
・・私は覚悟を決めて、扉を開けた。
・・すると、目の前には金髪のシスターが立っていた。
・・美人とそれ以外に思いつかないほどである。
私は。
「・・・これは、教会のシスターさんですか?・・こんな田舎まで寄付のお願いでも?」
少し皮肉っぽいことを言った。
シスターは何故か立ち止まり、固まっていた。
・・何も話さない。・・日本語は無理か?・・しかし、英語はできない。
・・勉強しているが、中々に上手くいかない。
・・私は。
「あ~~~。・・・Do you speak Japanese?」
簡単な英語を言った。
・・しかし、相手は反応しない。・・すると、急に背を向けて倒れた。・・・何事かと思い、駆けつけた。・・目を閉じ、呼吸は安定。
・・気絶しているようだ。・・何故なのか分からなかった。
何もしていないのに。・・・と、しゃがんだ時に私は自分の格好を見た。
・・・トランクス一丁の姿である。・・・裸を見て気絶する人は初めて見た。
このまま放置するわけにもいかず、抱きかかえて家の中に入れた。
・・ベッドが一つしか無い上、私が使っているのを使うわけにはいかない。ソファーに寝かせることにした。私は服を着替えて、コーヒーを入れる準備をした。
・・ヤカンから湯気が上がった頃、シスターの寝起きの声が聞こえた。
私が顔を出すと、急にビクついた。・・・悪魔であるが、ヤクザモンではないよ。と身振りしながら。
・・シスターは座り直して。
「・・え~~と、その、・・・・し、失礼しました。・・・何分、その、・・み、見たことがなかったもので。・・・いえ、同性だけの場所ではなく、ちゃんと男の方も居ましたし。・・夏には海水浴で男の水着姿も見ましたし。・・だから、その、え~~と。」
何を言おうとしているのかよく分からんが。
とりあえず私は。
「・・まぁ、落ち着いて。・・こんな山の田舎であんな姿を見れば、驚くのは当然です。・・とりあえず、今コーヒーの準備をしていますので、話はその時にでも。」
そう言って、台所に戻った。
・・・そう言えば日本語を普通に話していたな。・・人間、有り得ない者を見ると固まるとは言うが。気絶までするとは。
・・この二十年で起きた出来事で一番の衝撃である。
コーヒーを二つ持ってシスターの元に戻った。
・・・手早く、テーブルに置き、私は彼女に対面するようにソファーに座った。
・・・しばらくの沈黙の後。
シスターはコーヒーを一口飲み。
「・・・ふぅ~~~。・・・先ほどは失礼しました。・・改めて名乗ります、私の名はレナと申します。見ての通り、シスターです。・・と言ってもまだ駆け出しで仕事も今回が初めてです。」
そう言って少し赤面していた。
・・随分とかわいらしい所があるのだな。
・・私は。
「・・仕事というと、寄付とか宣教とかで?」
この質問にレナは。
「・・い、いえ。・・そのようなことはちゃんとした手続きの元でおこなわれます。・・勝手にしていい行動ではありません。・・私の言う仕事とはここに住む良くない物のことです。」
この言葉に私は緊張した。
・・もしかして、悪魔のことか?
・・私は。
「・・良くない物。・・例えば、悪霊とか悪魔とか?」
この質問にレナは。
「・・両方です。この屋敷はその昔、悲惨な事件があったと聞きます。・・その為に廃館として放置されていました。・・ここに来る前に村人から聞きましたが、人が住んでいると。・・失礼ですが。あなたも同じ職の方ですか?」
なんと言っていいか分からない質問に私は。
「・・・似たような者かな。・・この屋敷にしたのは単に一人で静かに暮らすのにちょうど良かったから。・・・悪霊が居たのは分かったから退治した。・・それだけだ。」
そう答えた。
正確には浮遊霊だが、この際どうでもいいことである。
・・シスターは何故か驚いて口に手を当てた。
「・・退治?・・それって、浄化ではなく、消滅ということですか?」
震える声で聞いてきた。
・・この仕草で何となく察した私は。
「・・・消滅したかは分からないが。・・・少なくとも、仏教なりの方法で対処した。」
それなりの答えを言った。
・・悪魔の私が浮遊霊を取り込んだ。そんなことを言えば、戦いは必然。・・このシスターがどれ程の力があるのか分からない以上。
迂闊なことは言えない。
シスターは。
「・・そうですか。・・・仏教にも浄化がありましたし。・・少し、安心しました。」
そう言って胸に手を当てている。
・・・やはり、悪霊であろうとも救いたい派か。
私は。
「・・・一つ聞いていいか?・・・レナさんは、今までに浄化の経験は?」
この質問にレナは。
「・・いいえ。いつもは神父様がやっているのを側で見ているだけでした。」
自信なさげに答えた。
・・新人で未経験者。・・よくも一人で来たと思った。
私は。
「・・・そんな人が、一人で?・・普通は誰か付き添いで来る者ではないのですか?」
この質問にレナは。
「・・・その、私は皆の中で落ちこぼれで。・・本来なら教会で仕事をしているのですが。・・今朝、礼拝客の方が忘れていった雑誌にここの事が掲載されていて。・・ちょうど神父様は他のシスターと一緒に大事な用で出かけていましたので。・・これはチャンスと思って。・・・」
そう言って口淀んだ。
・・なるほど、手柄を立てて見返してやりたいと。・・典型的なダメな行動だ。
個人ならともかく、組織として動いている以上。勝手な行動は厳罰もの。例え、成功したとしても叱責を受けるのは必定。
・・・私は。
「・・今朝、ということは今は昼の一時だからそんなに遠くから来たわけではないな。・・悪いことは言わないから、今すぐに戻った方がいい。・・今なら、お布施周りでごまかせるかも知れない。」
この提案にレナは。
「・・そ、それはいけないことです!!ウソをつくことは神のお怒りを買う事柄です!!・・しかし、このまま何もせずに帰るというのも。・・」
そう言って黙り込むレナ。
・・・どうしたものかと考えていると。・・突然。
「・・よぅ~~。元気~~~?・・お前さんに言いたいことが。・・・」
インプが現れた。
・・・手を顔に当てる私とキョトンとするレナ。
・・二人を見た後インプは。
「・・お邪魔だったか?・・・失礼しました~~~。」
そう言って消えた。
・・・未だにキョトンとするレナ。
・・・私はどうしたらいいのか考えていると。
「・・あの、そう言えばお名前と正確なご職業を聞いていませんでしたが。・・」
明らかに不審がる顔に私は。
「・・俺の名は紅川仁朗。・・・職業は、・・・悪魔だ。」
言い訳のしようが無いので素直に答えた。
すると、レナは即座に立ち上がり、距離を取った。・・それなりの訓練はしているようだ。
レナは。
「・・なるほど、あなたがこの屋敷の不吉の正体でしたか。・・・あやうく騙される所でした。」
そこには今までの笑顔の人間ではなく、仕事する人間の顔である。
・・私は覚悟を決めて、グローブを嵌めた。・・ちょうどいい、このシスターを使って、技の練習をするか。
・・しばらくの膠着状態。・・・先に動いたのはレナだ。
彼女は懐から十字架を出して。
「・・悪魔よ!!この聖なる光で浄化しなさい!!」
そう言って私に向けてきた。
・・・やられる。そう思ったが何も起きない。体にも変化はない。
・・・しばらくの沈黙。
・・レナは驚いた顔で。
「・・な、なんで?・・何時も神父様はこれだけで悪霊を退治しておられたのに。・・故障かな?」
そう言って十字架を見るレナ。
・・故障って、機械じゃないんだから。・・・神父に騙されてないかと思ってしまった。
・・アホらしくなった私は、レナに即座に近づき、首筋に手刀を食らわした。
すると、レナは白目をむいて気絶した。・・やったことはなかったがこうも上手くいくとは。
・・私は彼女を抱えてある場所に向かった。
地下室。
ここはかつてこの屋敷の主人達が監禁、拷問に使っていた場所。
・・私が入った当時は拷問道具は全て警察が押収したようだが、一部の壁にめり込んだ物や牢屋はそのままになっていた。
・・・私はある意味、幸運だと思い、レナをめり込んだもの。
・・・X磔台に縛り付けた。
・・・しばらくして、目を覚ましたレナは自分の置かれている現状を理解した。
両手両足に付けられた枷。助けを呼べない暗い部屋。そして、悪魔である私。
・・・私は。
「・・・では、始めるとしよう。」
そう言ってロウソクに火を付けた。




