96話
まず、大前提としてこの国に住む場所があるかどうかが戸籍取得の鍵らしい。
「私が30億ぺリン支払ったのはカイザス国に土地を借りる為のお金ね。一軒家分の土地に住む権利を30億ぺリンで買ったの。土地を持つのが戸籍取得の条件だからよ」
「借りるんですか?土地を買うんじゃないんですか???」
「この国の土地は一般人には買えないのよ。住む権利を買えた後も毎年少なくない額を家賃代わりに支払わなければならないしね。移住した当初は大変だったわよ金欠で………」
30億ぺリンの価値がよくわからないが、皐月先生の反応を見る限り安くはなさそうだ………それで貸家で更に自分で家まで建てなきゃ行けないなんて大変だな。
「ふふっ、ごめんね?大変なら出て行っても構わなかったよ」
「……いえ、大丈夫デス」
…………まさか。嘘だろ。
「もしかしてコンスタンティンさんの土地なんですか?」
「正解。だからつばめを養子にしても支払うお金は無いよ。親の土地に住むのにお金払うなんて変でしょう?私しか使えない手だけどね」
家一軒分の土地を何処か選んでコンスタンティンさんから住む権利を無料で貰い受けて家を建ててしまえば、養子縁組から抜けても住む場所はあるのでカイザス国の戸籍は取得出来ると言われた。
その場合、毎年の土地貸し出し代は支払う義務が発生するらしい………国全土がコンスタンティさんの土地って訳わからないね。研究者で地主的な?
「でも、それだと子沢山の家は将来どうなるんですか?」
皆んな実家暮らしだと、下手したら将来的に夫婦が何組も同じ場所に住む事になる。
それとも、元々カイザス国民だと土地を買う権利も安いのかな?
「つばめ、先に言っておくけど君の世界の常識と大分違うから驚かないでね?この国だと、よっぽどの金持ちじゃないと子沢山の家庭は無いんだ。子ども1人を育てるのに凄くお金がかかるからね。アパートみたいな賃貸住宅もあるけど、そこに住めるのは2人までで子どもが欲しければ家に住むしか無いんだ」
全く理解が追いつかないが、噛み砕いて説明してくれた。
まず、子どもが居る家庭は一軒家なのが大前提。
子どもが2人以上居る場合は1人が親から家をもらい受ける事が出来る。
兄弟姉妹でいつまでも一緒に住んでいる場合もあるが、大体は成人したら家を相続する子ども以外はアパート暮らしか王宮だと寮暮らしとなる場合が多いみたいだ。それか、新たに自分で土地を借り受ける。
子どもが結婚して家庭を持ちたい場合は、大体医療都市に移ると言われた。そちらは子どもが居る世帯に優しい制度があるらしいよ。
いや、でもアパート暮らしで、できちゃった結婚とかどうするんだろう???
「もしかして、つばめさんの国は結婚していなくても子どもが出来るのかしら?」
「はい、出来ますね…こちらは違うんですか?」
違うらしい。この国だと夫婦間にしか子どもは産まれないみたいだ。
お金が無いと子どもを産む事も出来ないし、産む人数も夫婦の総資産によって制限されるらしい………この世界ではカイザス国が子どもを産むのに審査が1番厳しい国だとさ。
「法律で定められているから、つばめには申し訳ないけど避妊の魔法をかけるよ?」
普通は産まれて直ぐに避妊の魔道具を身体に埋め込むみたいだ。
とりあえず1年間有効の魔法をコンスタンティンさんがかけてくれて、それ以降は今後の私の進路によって考えようと言われた。
「1年間じっくり考えて?ちなみに1年間税金免除だから免除中ガッツリ稼ぐといいよ。何をするにも先立つ物がないとね」
コンスタンティンさんに元の世界に戻る方法は無いと言われた。
そっかぁ…無いのかぁ……帰れないのか……
カールさんにパンのお代わりいかがですか?と言われたのでいただく。
サーモンと付け合わせのじゃがいもがまだ余ってるのでよければいかがですか?と言われたのでそれもいただく。
やけ食いじゃなくて、これが通常運転です。
サーモンは今度ムニエルで出て来たのでレモンをかけて食べると…サッパリした味になってこれも美味しい。
パンは白いフカフカのパンでほんのり塩気があってそのまま食べても美味しい………どうやらパンもカールさんの手作りみたいだ。
料理もするが、お菓子作りが趣味らしい。女子力高いなエルフ族って。
カールさんとお話ししていると、顔面の女子力高めなユリエルさんが戻ってきた。
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補足
王宮の敷地内はコンスタンティンが住んでいて、国を運営するのに無料で貸し出してくれています。
ちなみに、土地貸し出し代で徴収したお金は運営費と言う形で国に渡しています。
消費税などの税金とは別に家賃収入?で国家運営している変な国だと思って下さい。
王家王宮内に勝手に住み着く
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勝手に建物増やす(後宮とか)
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女性たち(側室、妾)を住まわせる
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いつの間にか子どもが増える
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コンスタンティン「人の家で何してるの?」