74話
さて、それでは本を読む。
何で本があるかって?
実は家の左隣がまさかの本屋さんだった。看板出て無いから気がつかなかったよ。
本屋さんは土日休みの10時〜15時営業らしい。
大分遅れたが引越しの挨拶をして、ジャムを贈りたい旨を伝えるとりんごのジャムを希望された。作ったら持っていきますね。
本屋の店主さんの話しを聞くと私の自宅の右隣りは倉庫で、うしろは2階建ての単身者向けアパートらしい。
引越したら大体は隣りと前後の家に挨拶に行くのが王都クリスタの一般的なマナーだと店主さんに説明された。
アパートは挨拶行かなくていいみたいだ。
ちなみに、向いは大通りに面しているお店なのでこちらも挨拶は不要だと言われた。
日本だと『向こう三軒両隣』と言うがここだと『前後左右』らしい。
買った本の内容は共通語の冒険小説と獣人族語の短編恋愛小説集だ。
冒険小説はシリーズ物なので、面白かったら続きを買おうかなと思っている。
………………ん?
布団で寝転んで本を読んでいたら頬にムニムニヒンヤリした…何だマシロさんか。頬っぺたにひっついていた。
「どうしたの?」
ムニムニ
頬っぺたムニムニされた。マシロボディは不思議な質感ですね。
「マシロさんも本読む?」
こくり
「獣人族の文字読めたんだね」
ふるふる
読めなかったらしい。
マシロさんはうつむいてシュンとしている…たぶんだけどね。顔色どころか、顔すらあるかわからないから。
今日は冒険小説を私が朗読して、一緒に本を楽しんだ。
子ども向けの絵本とかも売ってたから、今度マシロさんにも買ってあげようかな。
もう第7長官室の仕事も忙しくならないみたいだし、本屋さんが開いてる平日に休みもらおう。
1時間程本を読んで今日は就寝した。
キーーーーーン
キーーーーーン
「ふわぁっ!?」
ビックリして飛び起きた。な…なに?
あ、マシロさんがピョンピョン跳ねてこっちに来た。そして私の肩に着地。
ピンポーン
このタイミングでインターホン鳴るとか恐怖でしか無いんだけど。「私、メリー」って名乗る人?じゃ無いといいな。
リビングにモニター付きのドアフォンがあるが………画面何も写ってない真っ暗………うーわぁー。
インターホン鳴ったら玄関の映像が映るはずなんだけどな。
通話ボタンが点滅しているので、押してみる。
「はい、どちら様でしょう?」
『僕だよ』
「…………クマさん?」
『そうだよ。こんばんはお姉ちゃん』