55話
鈴木さんは馬車を停めに行ったので、私はガラス屋さんの店内に先に入った。
うわー…結構広いな。
2階もあるみたいだ。とりあえず1階から見て回る。
ガラスの皿…グラス…あった!蓋付の瓶がいっぱいある。んー…迷うな。
大きさもだが、微妙にデザインとかが違うみたいだ。とりあえず手に取って見てみる。
「つばめ様、お待たせ致しました。」
「鈴木さん。馬車ありがとうございました。瓶が見つかったんですけど、いっぱいあって迷いますね。」
「専門店は種類が豊富でございますからね。うんと迷っても、決まらなければ後日改めて来ても、違うガラス屋を見に行ってもかまいませんよ。」
そっか。今日決めなくてもいいのか。
何だか最近時間に追われて買い物してたから、「見つけたら買う」って買い方だったな…今とても新鮮な気持ちだ。
「ありがとうございます。もう少し見てみますね。」
「畏まりました。私めは他を見て参りますので、何かありましたらお声がけ下さいませ。」
「はい、わかりました。」
私は再び瓶を見てみるーーー。
結局瓶は買った。いっぱい。
大、中、小瓶についでにグラス、ガラスの耐熱ボール大、中。瓶の数は適当だ。必要数よりやや多め…中瓶の数が凄い量。
結構買ったなぁー………いっぱい買ったので、鈴木さんがお店の人と交渉して、瓶は一つ一つ箱に入れてくれるおまけ付きになった。助かります。
買った物は店員さんと鈴木さんで馬車に積んでおいてくれると言うので、お言葉に甘えて私は隣の手芸屋さんに向かう。
「いらっしゃいませ」
こちらの手芸屋さんはこじんまりとしていたが、至る所に反物がある…布いっぱいだー。天井付近まであるよ。
店内を一周したが、布が多すぎて選べないな………よし、店員さんに聞こう。
「すいません、果物の柄の布はありますか?」
「少々お待ち下さい」
店員さんは店の奥に消えて行って、少ししてから数本反物を抱えて戻ってきた。…店の奥にも布あるんだ…凄い量だね。
「こちら一部になりますが、いかがでしょうか?」
私の目の前にはさくらんぼ柄と苺柄、色々な果物が描かれた柄の反物がある。どうせだったら…
「苺、オレンジ、りんご、キウイ、バナナ柄の単体はありますか?できればほつれ難い布だと助かります。」
「ございます。集めて参りますので、店内ご覧になってお待ちください。」
あるんだ!ダメ元で言ってみたけど聞いてみるもんだね。
店員さんが布を準備している間に私はリボンが置いてあるコーナーを見る事にした。そこで鈴木さんと合流。
リボンもいっぱいあるなー………迷う。
布はバラバラだから白いレースのリボンにしようかな?いや、でもこっちのリボンもかわいいな………はっ!
「鈴木さんはお好きな果物とかありますか?」
「私めですか?強いて言うなら柑橘類が好きでございます。」
「食べれない物とかは無いですか?」
「御座いません。もしかして私めにジャムを頂戴する栄誉をお与えに?」
「ご迷惑でなければ…」
「つばめ様のような女性から頂戴したものなら、毒でも嬉しゅう御座いますよ。」
大袈裟過ぎてウケた。
鈴木さんが笑顔で禍々しい毒を受け取る姿が容易に想像出来てしまって…失礼だが吹き出した。
「少しお元気になられた様で、良う御座いました。」
「ありがとうございます。おかげさまで元気になって来ました」
店員さんに呼ばれたので、集めた布を見せてもらう。
思ったよりも種類があるな……果物の柄は子どもの洋服や小物に使われるので結構人気みたいだ。
今回は瓶の蓋部分に被せる位小さい物なので、大柄は避ける。
すると、小柄の中に同じシリーズのものがあったので、それを果物の柄ごとに購入した。
布の下地が白だったので、リボンは細い緑色の物に決定。
裁縫セットと布を切る用のハサミ、蜂の形のボタンを幾つか。後、ハンカチサイズの色々な布がまとめ売りされていたので一束購入して店を後にした。