51 目覚め7
その後ユリエルさんとおっかなビックリコミュニケーションと言う名のお互いの世界について話した。
こちらの世界の魔法のこと、人族以外の人型種族がいて共存していることなど。
私は科学が発展した世界の話しと獣人族やドワーフ族、エルフ族は空想上の物語には出て来るが、現実では人族以外いないことなど。
「エルフ族に見えるんですか?」
「ああ、君の外的特徴はエルフ族そのものだ。特に目が」
私の瞳の色は緑色だ。
エルフ族の瞳は色素が薄いらしい。ユリエルさんは灰色だった。
前に異世界人が現れたのが約500年前。その時は黒目黒髪だったらしい。
さらにその前の異世界人が約700年前で『はじめは茶色い髪で次第に根元から黒髪になり、最終的に茶色い目で黒髪の人族と変わらない容姿になった』と書物に書かれていたそうだ。髪染めてたのかな?
ユリエルさん曰く、異世界人だと言うだけでも珍しいのにその容姿だとどんな扱いを受けるか未知だそうだ。
「………ユリエルさんの予想では?」
「……………」
眉間の皺が凄い事になっているので、多分碌な扱い受けないだろうな私。
「私はどうしたらいいですかね?」
「……事後に言うのは申し訳無いが、私の親戚と言うコトにした」
「ありがとうございます!」
「異世界人と公表するよりはマシな扱いだと思うが………エルフ族も特殊だ………」
なんと、エルフ族はよその国にほぼ出ない。
許可の無い他種族はエルフ族の国に入る事も出来ない………引きこもりなのエルフ族って?なので、珍しさから珍獣扱いされる。
その代わり多少世間に疎くても「エルフ族だから」で済まされると思うと言われた。
「そう言えば、皐月先生との自己紹介の時に今後は名前だけ名乗る様にと言われたんですけど、何か意味があるんですか?」
「…………………求婚名と言って…」
ふむふむ。
「…フルネームで名乗ると相手に求婚した事になる」
こちらの常識だと皐月先生にいきなり「結婚して下さい」って言っちゃったってこと?やっちまったね私。
「詳しく教えていただいてもいいですか?」
「………ああ」
カイザス国は色々な種族が住んでいるので、法律では定めていないが『3大常識』と言う暗黙の了解がある。
1つ目がエルフ族のローブ。
2つ目がドワーフ族の酒。
3つ目が獣人族の求婚名。
昔の獣人族は実力主義故に『己の名のみで生きるべし』と言う感じで、家名が無かったらしい。
そのため、嫁や婿に来て欲しい人に両親の名前と一緒に名乗る事で「母と自分と父共々よろしくお願いします」と言う意味で結婚して欲しい人に名乗っていたそうだ。
昔は婿や嫁に来て欲しい時に使っていたそうだが、いつの間にか普通のプロポーズの時にもフルネームで名乗る様になったらしい。
今は「家族になって下さい」とか「両親に紹介させて下さい」って意味で使うみたいだ。
それに合わせて、獣人族以外の種族もフルネームを避けて家名か名前のどちらかで自己紹介したり、呼びあったりしている。
「知らずに皐月先生にフルネームで名乗ってしまいました」
「…皐月殿は君を何と呼ぶと言っていた?」
「『つばめさんと呼ぶわね』と言っていました」
「……では大丈夫だ。君は求婚を断られている。」
え?私知らぬ間にプロポーズした挙句、知らぬ間にフラれたの?
ユリエルさんの話しだと、「家名と名前両方で呼ぶ」と言われていたらそこで婚約成立だったらしい。
その後皐月先生が家名と名前を名乗って私が皐月先生のフルネームを呼んでたら事実上の結婚だったと………まぁ、獣人族特有の習慣なので人族同士でお互いフルネームで名乗った所でいきなり結婚する事は無いと言われた。
異世界の常識って難しいね。
ー
求婚名(訳)
つばめ「小早川つばめです」
(婚約したいから両親に挨拶一緒に行こうよ)
皐月「小早川つばめさんと呼ぶわね」
(いいよ、婚約しましょう。挨拶いく。)
つばめ「ありがとうごさいます」
皐月「私は出雲皐月と言うの」
(どうせならもう結婚しない?互いの両親に結婚報告行きましょうよ)
つばめ「出雲皐月さんとお呼びしますね」
(やった!結婚するする!!)
※ニュアンス的にはこんな感じだと思って下さい。