400話
新年あけましておめでとうございます。
今回珍しく連続投稿です。こちら1話目になります。
生産性のない話をした食後。
奥まった部屋に案内されてるが、ここは執務室か。寝室に入って、なんの変哲もないと見せかけた壁を弄り回して、更に奥に進む。
罠が張り巡らせてある部屋みたいだが、今は作動しない。完全に殺しに来る系の罠だな。
コンスタンティン様は大きな鍵を取り出して、複雑な扉の鍵穴に何本も刺して行く。
ガシャン
ガシャン
ガシャン
ガシャン
ガシャン……
10本目で扉の空いたと見せかけて、もう1本刺している。
「この扉開けられそう?」
「いや、無理ですね。何kg? 何tか」
「なら良かった」
普通に開けたように見えるが、何も使わず自前の筋力で開けたのか。どんな身体の作りしてるんだいったい。
部屋に入って扉を閉めるとすかさず施錠の音がした。
「………違うダンジョン?」
「凄っ……え? 魔力徴収してないのに分かるの?」
「全く扉の中の様子が想像出来なかったので」
「でも、ボス部屋を出たとか思わないの?」
「何か違うと言うか……。ここは密度が違う様な?小さいダンジョンだなと何となく感じまして……違うな。政府施設と多分ダンジョンコアの大きさは変わらないけど、作りの癖が違う」
「どう違うの?」
どう違う? どう違うか……何て説明しようかな? ダンジョンの作りのクセは結構分かりやすいと思うんだが。私的には。
罠の設置位置とかモンスターの出現場所とかマップとかこの場合は内装と雰囲気とか。
「政府施設は複数の手が加わってるが、ここはコンスタンティン様専用って感じがします。パッと見は寝室の作りに似ている。居住区の風呂は違うし、キッチンはキンに合わせてある。リビングは多分複数で考えた?」
「魔王城の裏ルートも誰が作ったかバレてたのか」
「居住区の霊山が描いてある風呂の製作者と一緒でしょう。『極悪罠ダンジョン』と、橋の助言をした……けど、似てるけどとてつもなく微妙にちょっとずつ何かが違うのがしっくり来ません。サミュエル・カミュが作ったとは言い切れない」
「君はやっぱり聡いね。そう、少しだけ違う存在なんだよ。私の悩みの種でもある」
更に先の部屋に入ると、完全に実験室だな。色んな器具や魔道具類があるが、魔道具技師の部屋みたいな作りだな。
更に先の扉に導かれたが、私はこの部屋が怖い。
「入らないの?」
「ボス部屋ですよね……。よく分からないが何だか怖い。入り口のところの部屋にして下さい。冷や汗が止まらない」
「ふふっ。まさかここまで来てダメか? じゃあ、やめよう」
ガチャンッ
ボス部屋の扉をコンスタンティン様が閉めたところで、私は息を吐いた。また今度と言う事はいつかは遭遇しなきゃいけないのか。
薄暗いボス部屋の床にポツンと鎮座した半透明の白いスライム。
ボス部屋に入ってもいないのに、何だかよく分からない不気味な気配を感じて本能が近づくなと拒否していた。
コンスタンティン様よりよく分からない存在がこの世界にいたと思うと。
最初にコンスタンティン様にお会いした時も身体が硬直して散々な目に合ったな。
冷や汗で済むくらいは、私も少しは進歩したのか。
「……一気に疲れました」
「流石にそろそろ寝かせないと、キンが心配するかも?で、不確かな存在の検討は?」
「分からないからコンスタンティン様に聞いてみようかと………………異世界人か?」
「それは私に聞いたっていわないからな? 読んだって言うんだよ?」
「? 何で魔族龍神種の番が異世界人?? あれ、何かがおかしい…………むぐっ……」
「やめろ、それ以上私の思考を読むな不愉快。ちゃんと口で言え。全く、厄介なのになって来たな? 天才の域を越えてる」
ジャミングや魔力遮断を中和して|掻〈か〉い潜って思考を読もうとしたら、コンスタンティン様に顔を捻り潰されそうになった。手が大きいですね。
「魔石1回外し……駄目だな死ぬかも。遮断しますが、コンスタンティン様も雑念沢山にして下さい。集中すると無意識化で心を読んでしまう」
「努力はしようかな?」
「嘘だな。コンスタンティン様、今日はやめましょう。違う日に──」
「駄目だ。私はもう待てそうにない」
何が待てないのかは分からないし、何を焦っているかも分からない。多分魔力暴走を起こしているんだろう。肌がビリビリする。目にハマった魔石に魔力集め放題だ。
「……コンスタンティン様、選んで欲しい。私に全て曝け出すか100年後と言わず、ゴブリンのスタンピードでエデンが滅亡するかを」
「折角ここまで来たのに……クソッ。素直に部屋に入っていればいいものを。最後の最後で……」
そうか、私はあの白いスライムに恐怖すると共にコンスタンティン様に囚われそうになって冷や汗出してたのか。危なかった。
無理やりぶち込まないだけマシな人だとは思う。回避した私偉い。
「無理やり入れてしまえばよかったのに」
「マシロにビビってるなら『その先』は無理だ」
「…………ん?」
「もうひとつ先にあるんだ。ダンジョンが」
ダンジョン三重使いで更にコンスタンティン様級のラスボス3段構えか。確実に世界最難関の作りのインスタントダンジョンだと思うココ。
私はコンスタンティン様の『望みの言葉』を口にした。今もっとも欲しいセリフらしい。
「コンスタンティン。『魔神になり代わり、貴方の3つの願いを叶えましょう』」
「? …………っっっ!!!!!? 大地神教との契約を今すぐ破棄」
「『かしこまりましたご主人様』」
目前に現れた契約書の束を読みもせず私は破り捨てる。
ガシャン、ガシャン
その代わり、私の両腕に重い重い手枷がはまっていた。




