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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第六章 グールVSエデン連合軍編
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395話

変態(朔夜(さくや))注意報。ご注意ください。




 コンスタンティン様にも食事を出す様にお願いして、今は食後。



「キン、軍の様子は?」



「苦戦してます」



「何だと……私はどれくらい寝てたんだ?」



「5年程」




 もっと早く聞けば良かった! 何て事だ!? 




「コンスタンティン様、一旦軍に戻る許可を下さい」



「え、やだよ?」



「観察するのは、また出来ます。2日だけですから」



「そんな短くて構わないならいっかな?」



 礼を言って直ぐに支度して出る。どうやら、私が寝てる間に大輔がちょいちょい来ていたみたいだ。最近ではそれも途絶えたと……すまん大輔。



 コンスタンティン様の居住区を出ると、私は勘をフルに働かせた。マズイ。どこから手を出そう?



「キン、作戦指令本部に行って来てくれ。私は病院に寄ってから向かう。リアム王太子に『皇后が目を覚ます』と伝えてくれ。マティアス様を捕獲しといて欲しい。大輔に何とかするから3時間休めと伝えて欲しい」



「分かりました」




 皇后は目を覚さなかったのか。仕方ないから、起こすしかない。多分、何もしなければずっとこのままだ。


 一気に情報が流れて来て頭痛がするが、今は構ってられない。1、2日で何となるとも思えないが、何とかしなければ。人員が少ないな……フォーゼライド国め。後で覚えてろよ。



「お久しぶりですね、狐の御人。ミアは元気か?」



「凄いな。良く分かりましたね? えぇ、順調そうですよ。今までどちらに?」



「コンスタンティン様の所にずっと世話になっていた。頼みがある。私のオヤジを作戦指令本部に呼び出しておいてくれ。終わったら、貴方はこのままそっと着いて来て欲しい。コキ使ってすまん」



「了解です。では、また後ほど」




 総合病院にたどり着いて……朔夜殿何で笑顔で出迎えしてるんだ? コンスタンティン様の仕業か。



「皇后の病室までご挨拶します。『医者』として」



「『研究者』の間違いでしょう。奥様がご懐妊した様でお喜び申し上げます。何てタイミングで……」



「戦地に(おもむ)く前にやらかした貴方に言われたくはないですよね。はぁ……これで子豚ちゃんは私の目の届く所で毎日愛でられます」



「返す言葉もない。番抑制剤を1本私用に処方して欲しい」



「喜んでご用意いたします。代金は──」



「金で払うから、臓器はやらん」



 軽口はこれくらいにして、皇后の病室に到着したところで中に通された。



「診察のお時間です。私が見てますから、貴方は席を外して下さい」



「はい。先生よろしくお願いします」



 悲壮感(ただよ)う侍女が居室から出て行ったのを確認してから、私はプラスチック製のカーテンを開けた。ベッドに横たわっているのは、色々な管に人工呼吸用魔道具を付けた皇后。



「ふぅー………………よし。皇后様、お目覚めの時間です。朔夜殿、呼吸器を外して下さい」



「……無詠唱? 今拘束を外しますから、暴れないで下さいね。皇后様、コレは貴女が寝てる時に無意識にベッドがら落ちないために付けてた物ですから、害はないですよ。安心して下さい。先に呼吸器の医療用魔道具を外しますから、そのままで──」



 朔夜殿が色々やってくれている間に私は皇后に話しかけた。ここはカイザス国の病院の個室である事。ずっと寝ていた事などなど。



「ちょっとナースコールで看護師呼びますね。検査用の魔道具や飲み物など持って来てもらいましょう。口がカラカラで喋れないでしょう? まだ起き上がらないで下さいね。クラッとするかも知れませんから」



『はい、どうされました?』



「患者が目を覚ましたから、コップか吸い飲みにぬるま湯とガーグルベース、私の医療カバン持って来て」



『少々お待ちください』



「皇后様、もう1度ライト当てますので目を見せて下さい。大丈夫そうですね。外で待機してる侍女を呼びますが、よろしいですか?」




「……は……ぃ……」




「ご家族にご連絡を──」



「リアム皇太子殿下が今こちらに向かっています。ご安心を」



 侍女に入室させる前に、朔夜殿は一旦部屋を出た。多分、皇后が目を覚ましたが、あまり刺激しないように言いくるめてるんだろう。


 入れ違いでそーって狐の御人が入って来たな。部屋の(すみ)に待機している。



「皇后様、ゆっくりなら起き上がっても大丈夫ですよ。喋るのはまだ無理そうですが」



「………」



 ベッド上で起き上がって、手を開いたり握ったりしているな。凄い精神力と言うか、適応能力だ。瞬時に状況を理解して、それに合わせて適応してる様に思える。


 身体が凝り固まっているし、多少元より痩せてはいるが……。そうこうしてると、侍女と複数の看護師に朔夜殿が部屋に入って来た。



「こ、皇后陛下。あぁ……あぁ……神様の奇跡に感謝しますっ!!!?」



「君、皇后様に吸い飲みで口の中を湿らせてくれ。もう起き上がって大丈夫ですか……そうでしたか……。あ、それとそっちの君、大型の検査用魔道具の手配を」



 流れに身を任せて、私はその場をソッと後にした。狐の御人に手招きして。後は朔夜殿に任せて大丈夫だろう。


 廊下に出てから、一目散に駆ける。



「どちらに行きますか?」



「天狗の御人ところに。貴方なら面会出来るだろう?」



「ええ」












 看護師が部屋の施錠を外すと、黒羽根の美丈夫はベッドに拘束されてブツブツと呟いていた。



「中毒の中和剤の開発が、中々進んで無いみたいです」



「思ったより酷いな。廃人一歩手前だ………………どうだろうか?」



「キツネ? 腹減った。桃食べたい」



「あぁ、良かった。大丈夫そうです」



「貴方はいったい何をしたんですか?」




 化け物だとコチラが思っていた相手に化け物を見るような目で見られるとは光栄だな。実際にそう思われてるみたいだ……私の勘がこの御人の能力を凌駕している。悪化とも言うが。


 そうか、恐らくはキンの子孫に当たるのかこの方は。



「説明の時間が惜しい。後は看護師にお任せしましょう。皇后のところに戻ります。部屋を出て、廊下を曲がったら気配を消して着いて来て下さい」



「……わかりました」




 皇后の部屋に戻ると、リアム皇太子が到着していた。侍女達には申し訳ないが退出してもらう。



「死神? どうしてここに? その姿は……」



「すまない。説明している暇がない。ベスティア国の入国審査用の島に『悪魔』認定を受けた者がその内向かって来ます。恐らく神聖帝国の方にそのまま流れて来る。このままでは、エデンに入って来てしまう……阻止するのにお力添えを。迷っている暇はない」



「分かりました。何をすれば宜しいですか?」



「皇后陛下?」



「入国審査官に手紙をリアム皇太子の直筆でお願いしたい。内容は今から書きます。ここで書いて下さい」



「皇太子に代わって私が許可します。言われた通りにしなさい」



 渋々と言った感じで書いてもらい、私はその手紙を受け取る。後でオヤジに頼んでジョゼフィーヌに乗って届けてもらおう。



「リアム皇太子、ご退出願いたい。私は皇后殿下とお話がある…………とてもデリケートな問題ですので。お医者様とお話を伺いたい。リアム皇太子はそのまま作戦司令本部の方にお願いします。私も直ぐに向かいますので」



「……皇后陛下、御前失礼致します」



「またね、リアム」



 リアム皇太子は、皇后の性別をご存知なんだろう。多分双子は気づいてなかったんだろうな。


 退出したのを確認してから、私は前置きも何もなしに皇后に話しかけた。



「皇后様、魔道具使用免許の限定特級を取得して下さい」



「「!?」」



「何ですかそれは?」



「カイザス国に属する者になれと言う事です」



「私に神聖帝国を売れと言うの? 馬鹿げてるわ……お話にならな────」



(うなず)かなければ、先の補償はない」



 皇后は睨みつけているが、私は(かま)わずに話の続きをしなければならない。話と言うか、(おど)しだな。



「この話を聞いた時点で、貴方には2つの選択肢しかない。死ぬより酷い仕打ちを受けるか、神聖帝国の為にひと仕事終わらせた後に第二の余生をカイザス国で過ごすかだ」



「…………卑怯だわ。どの道ひとつしか選べないじゃない……」



「誰が何と言おうと、貴方には生きて貰わねば困る」



 そう、ゴブリンのスタンピードを終えた後の未来の為に。



「狐の御人、貴方は臨時だが後からコンスタンティン様から3つ与えられる(はず)の推薦の許可をもぎ取る。仮の推薦枠をひとつ今ここで使って欲しい。同じ職場の人間くらい自分で選びたいだろう?」



 皇后様は急に現れた狐の御人に内心ドキドキしているが、顔には出さないでいる。静かに話を聞いてるだけだ。



「そうですね……許可しましょう」



「朔夜殿」



「私はもう、後1つしか残ってない。水島さんの言いなりで使うのはちょっとご遠慮したいですね」



 知ってる。私と愛しの魔女殿に使ったんだろう。ウチの嫁さんも相当酷い扱い私から受けてるが……この変態に捕まってしまった皐月殿は同情を禁じ得ないな。



「私はコンスタンティン様付きになったらしいので、これから諜報部の改革案を出そうと思う」



「それで私に何の旨味が?」



「毎回緊急時に退役軍人を危ない場所に投入して人手不足なるなら、1回死んだ事にして独立戸籍で内緒で生きる事にしようと思う。朔夜殿、良く考えて欲しい。貴方が死んで絶望を味わっている嫁を思う存分(なが)めた後………良い頃合いで姿を表して愛でる事が出来るのは普通では体験出来ない事だろう?」




 朔夜殿は片手で顔を覆った。見えてる顔は高揚(こうよう)して色付き、獰猛(どうもう)な笑みを浮かべている。



 ポタポタポタポタ……




「………タギる。素敵なプレイを楽しめそうだ❤︎」



「鼻血は止めて下さい。服も床も汚れる」



 私も含めてドン引きしている3人を気にせずに、朔夜殿はOKサインを出して部屋を出て行った。

 モップを持った掃除員が入って来て床を綺麗にして退出するまで誰も何も言えなかった。




 私は掃除の間、皐月殿に心の中で神聖帝国流の土下座をして()びる事に(てっ)するしか出来なかったな。


 生贄(いけにえ)にしてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 どうか未来で、素敵な愛を深め合って下さい(土下座)。



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