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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第六章 グールVSエデン連合軍編
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385話




「ユリエル、いい加減離せ。周りが引き気味だ……グエッ……首を更に閉めるな殺す気か」



「……いっそ死ねばいい」



「物騒な事を言うな。折角生き残ったのに……大輔、帰って来て早々で悪いが引き継ぎのノートを見て欲しい。ユリエルは離れろ、苺を確保しといてやったから」



「……ふんっ。どこだ?」



「食堂に名前書いて箱ごと預けてあるから食って来い。それが済んだら武器の手入れして暫く休め。後で声をかける」



 出会い頭にユリエルに抱きとめられたので、甘んじて受けた。避けると長引くからな。今生の別れを決意したのに、私から『戻って来い』って指令書届いたらそりゃ混乱するよな。



「水島、随分(ずいぶん)と色々動いたな」



「私が出来る範囲でな。大輔は身支度と軽食に短いが仮眠取ったら会議に出席だな。ベスティア国がどうなったか直接報告して欲しい……その後ゆっくり休んでかまわない」



「食事しながら、細かなことを聞きたいから食事の手配頼む。部屋借りるぞ」



「ああ、好きに使え。もうお前が使ってかまわない……キン、一緒に来い。後の者は会議前の最終確認後、手筈(てはず)通り休憩を取れ。長丁場になるぞ覚悟しとけ」





 早足で食堂に向かうと、苺の箱を抱えたユリエルと入り口で遭遇(そうぐう)した。部屋で食べるらしい。




「よく頑張ったな、偉いぞユリエル。今はゆっくり休め……話しは後で聞いてやるから。会議終わったら部屋に行く」



「…………うん。待ってる」





 あの問題児のユリエルが懐いたんだが。言うこと聞かないのもアレだが、これはこれで何だかまずい気がする…………よし、予定変更しよう。



「ユリエル、すまなないが苺持ってエルフ族大使館のカール様の所に行ってみてくれないか? 多分心配しているからユリエルの姿だけでも見せてやれば少しは安心すると思うんだ。会議終わるの遅いから、先にそちらに顔を出して欲しい。話はまた今度な」



「………わかった。カール元気か?」




「多分前より元気じゃない……一緒に食事してやって欲しい。かなり魔力を使ってるから多分腹が空いてると思う。お前の持って行った物なら喜んで食べて下さるだろう。何か他にも持って行ってくれ。それじゃ足りないだろうから」

 



「……うん、そうする」




 いそいそと食堂に戻ったユリエルに続いて、私とキンも食堂に入る。ユリエルは何か直ぐに摘める物を見繕(みつくろ)って直ぐに出て行った。



「ふぅ〜……すまん、温かいスープと預けていたぶどうを出して欲しい」



「私もスープを大盛りで」



「へい、お待ち!」



 私が大輔の食事を選んで、キンが私の分を選んで行く。

 そうか、今日も大盛りか。食べるよ。食べるけどもパンは2つでいい。5個だと……わかった、間を取って3つにしよう。



「キン、私を()えさせる気か?」



「ズームォ様は食べた分動くでしょう。もう少し走り込みを増やして下さい。最近机仕事ばかりで身体が(なま)っている」



「アレか、お前の組み手に付き合えって事だな。分かったから食事をそんな無闇矢鱈に増やすな。キンは食べたのか? あぁ、先に食ったのか」



「ズームォ様、おっしゃっている事は正しいすが、急いでるからって会話自己完結しないで下さい。紅茶はポットごとにしましょう。鍛錬は空いた時間で構いませんので」



 時間あるかな?今はないな……キンすまん。












 コンコン



「大輔、入るぞ」



「どうぞ」



「失礼します」



 シャワーを浴びてそのまま荷解きしてる大輔を座らせて、私はワシャワシャ頭を拭いて行く。



「ガキじゃないんだからやめろ」



「先ずは頭乾かせ。思ったよりも無理をさせたようだ。会議終わったら明日の最低でも半日までは寝てろ……多分体調崩す」



「……何だと? 私が体調崩す?」



 代わりに荷解きしてやると、驚愕(きょうがく)の目で見られた。



「監視でもついてたか? 何で定位置知ってるんだ気持ち悪いな」



「付き合い長いんだから、こんくらい分かるだろう。大輔だって私の洗面用具の定位置くらい分かるだろう」



「…………すまん、戦場帰りでピリピリしてた。そうか、すでに体調悪いのか……自分でも気が付かなかった。いや、それにしても国に送る報告書をシレッと隠し金庫開けて仕舞うな」



「私が郵送してもいいが、明日以降の天気がハッキリ分からなくてな。返信がいつ届くか分からん」



 ビリッと肌に感じたのは大輔の魔力だな。魔力暴走一歩手前だ。遅い反抗期を(つの)らせて、今更思春期か? 違うな、これはストレスから来るものかな……。

 多分、ことが済んだら戻って来いとでもジェームズ様に言われたんだろう。



「……死ぬのか?」



「正直何とも言えない。コンスタンティン様次第だな。アレのことは私にも分からん。生きる努力したところで……はは。無意味だろう。1週間延命はしてもらえたが、先々のこともこちらに戻って来れるかも何ともなー……食いながらにしよう。スープが冷める」



 ドカリと腰掛けた大輔はそのまま食事を雑に食べ始めた。荒れてるな。



「大輔、話が終わったたら医者の所に行くか呼び出せ。無理すると長引くからな。それと、コンスタンティン様から事付けがあるが明日休んでから動くようにした方がいい。私とキンの分が増えるからと、食事の量を気にしておられた」



「そうする……ふぅ〜……何だか心がざわついて落ち着かない」



「負担をかけてすまない。やれるだけのことはやったつもりだが……大輔、これの報告は任せるが、皇后が集中治療室にいる。いつ目覚めるのかは分からん。目覚めないかもしれないので、国民に知らせるのはリアム皇太子に任せた。皇帝には知らせるだろう」



「本当に見つかったのか……」



「多分、海に落ちて海岸に流れ着いた……見つかったが、内臓の損傷が激しい。ゴブリンに(かじ)られた傷を無理に焼いて止血したんだろう」



 その状態で寝ないどころか失神もせずにひたすら血統結界発動させっぱなしとか……魔力量も凄いが、精神力が並じゃないよな。



「大輔、絶対に殺すな。奇跡的に目を覚ましたらもう1度戦場に出せるかも知れない」



「…………」



「神聖帝国で今1番の高魔力保持者だ。例え人工臓器になろうと、その魔力保有数は皇帝や最高司祭なんか比べ物にならないくらい多い。現時点で皇后を死なせるのは得策ではない。大輔頼むから頷いてくれ……恭介様は多分亡くなられた」



「……少し考える。こちらはジェームズ様には当面知らせない」



「分かった」




 嫌いなジェームズ様(父親)の想い人だ。本当は残虐(ざんぎゃく)に殺すか秘密裏に身柄を拘束してから、人質交換でもしたいんだろうな…………大輔の母親はほとんど捕虜(ほりょ)の扱いだから。


 敵だ敵だと思っても、なんや感や憎めないのはそのせいもある。私に嫁を授けてくれたのも大きいがな。


 ちなみに大輔に監視は今は着いてない。

 新規の移住者な1年間はついてるらしいが、とっくに1年過ぎてるからな。

 しかし、映像記録は保管されてると予測される……てか、国民全員そうなんだろうな。



「ベスティア国はどうだった?」



「酷い有り様だったな……あの城壁は籠城戦(ろうじょうせん)には向かない。ただの壁だ……王都は大丈夫だろう。オーガが桁違いに強いから他の城壁は無理だろうな。遠距離用の攻撃魔道具を扱える者を手配しないと危うい」



「……難民もどうにかしないとな。カイザス国だけでは到底全てを受け入れるのは困難だ」



「エデンで1番小さな国だからな。神聖帝国の皇家に頼むしかないだろう……中々そちらの交渉も骨が折れそうだ。エルフ族の空いた城壁でも使いたいが……ふぅ〜……頭が痛いな」




「ハイルング国の王都はゴブリンも全て追い出したので、ほぼも抜けの空だが……ダンジョンがなぁ……」



「ハイルング国のダンジョンはあそこにあるのか?」



 大輔知ってる癖に白々しいな。ツッコミは入れないでおこう。今のコイツを刺激したら、多分体調が悪化するから。




「あそこを使うなら、ダンジョンの中をあらためてからにしないと何が出て来るか分からん」



「何かいるのか?」



「……多分な。確信はないが、これはハイルング国に任せるしかないかも知れん。カール様はカイザス国から動けないし、王太子も今は動けないとなると……後にするか、ユリエルしか無理だな。しかし、単騎で突っ込ませて死んだら困るし難しいな」



「もう少し後にしようと思う。今はオーガの数を減らした方が得策だな。竜人種と組ませて、ユリエルにはそちらの相手を任せようと思う」



 飛竜もロックもユリエルもタフだからな。ユリエルのマジックバッグに食料入れれば補給なしで戦い抜ける。飛んで移動出来るし、機動力も戦闘力も恐ろしい組み合わせだ。



「オーガが憐れだな。多分直ぐに根絶やしにされそうだ」



「これから先にグールが増える前に何とかしないと、フォーゼライド国が合流する前にベスティア国が攻め滅ぼされるからな。ベスティア国王都がある港だけでも死守しないと、海路の補給が絶たれたら詰む」



 もう、当面の間は補給の関係でベスティア国王都を主軸に拠点にして動くと決めたらしい。


 徐々に範囲を広げて、立て直しする作戦だと。



「血気盛んな獣人族使い放題だからな。雑魚のゴブリン狩りは好きにしろと言っておいた。団体行動は後から嫌と言うほどさせるから、今の内に暴れ回ってもらうさ」



「獣人族に好きにさせたとか……前線任せた私の部下が今頃ヒーヒー行ってるのが目に浮かぶな。頑張り屋の部下だから、多少泣くくらいで何とかするだろう」



「俺もそう思ったんで、粗方片付いたから任せて来たさ。水島が一気にゴブリンが押し寄せて来るから、前線下げられるところまで下げろと言ってくれてたんで助かったよ……橋前の居残りと殿(しんがり)の一部犠牲で何とかなった」



「……これからは死人がわんさか出るだろうな」



「私の予想よりはかなり多く生き残ってるさ。何とかするから…………目の手術受けたら必ず戻って来い」



 大輔はぶどうを摘みながら雑談事を話して行く。どうやら、私の居場所は残しといてくれるらしいな。何て優しくて残酷な上司だろう。



「いいか、水島が戻って来るまで何としても持ち堪えて見せるからな。例え我が君に両腕もがれても、生きたまま内臓抉られても、その身体から魂抜け出る瞬間までは決して諦めるなよ。死んだら許さないからな。地獄での盃の約束はしない。生きて酒を()み交わすぞ」



「わかった。努力はする」




「相変わらず強情だな。そこは素直に返事しろ」




 キンの淹れてくれたお代わりの紅茶を飲み干したところで、大輔は病院に行って来ると言って席を立った。



 キンと私も食器類を手に持ってこれから食堂に向かう者についでに返却しといてくれと頼んでから、エルフ族大使館に向かった。



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