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353話



 厨房に到着すると、ハルさんもお茶を飲んでいた。海老の殻剥き終わったのね。お疲れ様です。

 やっぱりりんごは丸齧りなので、わざわざ私の為に種取ってくれてたのか大輔さん。




 休憩が終わった所でメインの下拵えの続き。クマさんと交代した大輔さんはりんごを齧りながら私が渡したレシピの紙を再度読み込んでいた。

 大輔さんは休憩が終わったら、食事する部屋に入ってテーブルセッティングに向かうらしいよ。



 デザート類の製作も終わったみたいで、後は食べる直前に選んでもらって部屋で盛り付けするだけだね。


 麻美副料理長と烏丸井さんもお茶を飲んだら、最初の料理の盛り付け作業に入った。








「少し早いが、カール様と王太子が席についた。パンを運んで来る。最初の前菜をいつでも出せるようにしといてくれ」



「「「「はい」」」」




 本日の最初のコースは海老がメインだね。




 王太子昼ごはん?


 パン、サンドイッチ各種

 

前菜

 生野菜の盛り合わせ

  人参、きゅうり、大根、セロリ


スープ

 トマトの冷製スープ


メイン

 茹で海老と彩り野菜を添えて

  海老、パプリカ、白菜、さつまいも


フルーツ

 りんご


デザート

 苺のショートケーキ

 ブルーベリータルト

 レモンゼリー



 最初はかなりシンプルにして、量も少なめ。どちらかと言うとハイルング国寄りのコースに。

 ただ、お皿を彩るソースなどを付けて食べればカール様やミアさんでも美味しく食べれる様に工夫を凝らしてある。


 後は王太子に内緒で、スープの味を2人の分だけ調味料を足したりしてるかな。



 ミアさんが席に着いたので、最初のコース料理の提供が始まった。


 パン選びは春日井さんに任せて、大輔さんが前菜の皿を取りに来た。



「私が昔お会いした時よりかなり王太子は痩せ細っているな……顔色も悪いし、常人なら座っているのも辛いだろうに。流石エルフ族の王族。では、また後ほど。行って来る」



「行ってらっしゃいお願いします」



 ハルさんが次の皿を配膳用の作業台に並べておいてくれるので、麻美副料理長が盛り付け。盛り付け終わった所から余ったスープなどはラップして冷蔵庫に仕舞ってくれていた。私はまだ先のメイン料理の調理中。


 折を見てハルさんが片っ端から洗い物を食洗機に入れて片付けてくれている。


 烏丸井さんは手持ち無沙汰なので、パンの種類を増やす為に追加で焼いてくれている。助かります。



「皆さま本日はお越し頂き誠にありがとうございます。お料理中ですので、お耳だけお借りしたいと思います。エルフ族大使館執事長を務めさせて頂いております春日井と申します。本日はミア様と王太子殿下の給仕を担当させていただいております。まとめてのご挨拶になりますが、ご了承下さい。それでは、スープの器を運ばせていただきます。前菜の皿は後ほどお持ち致しますが、皆さま大変美味しいと好評ですのでご安心下さい」

 


「はい、よろしくお願いします。トマトの冷製スープになります。真ん中が王太子殿下の器になりますので、配膳の際はお気をつ下さい」



「ご配慮ありがとうございます。真ん中が王太子殿下用ですね。承りました……それでは失礼致します」




 よかった。美味しく食べてもらえてるみたいだ。暫くすると今度は大輔さんが厨房に入って来た。




「右がカール様、真ん中王太子、左がミアの皿だ。やはり王太子はあまりソースを付けないで食べるな。自分で味を調整して欲しいと説明したので、今のところは不評はない。カール様が色々聞き出してくれたが、ソースの味自体も嫌いではないとの事だ。彩りも良いとお褒めの言葉を頂いたので、このまま出しても構わないだろう」



「それは良かったです」



「麻美副料理長のソース美味しいですもんね」



 1回の提供量は少ないが、話しながら味わってゆっくり召し上がるスタイルみたいなので、あまり焦らず盛り付けしなくても大丈夫そうだと言われた。

 あまりにも早いようなら、カールさんから食べるスピードを調整すると言われたらしいので、とりあえず当分このままで。助かりますよカールさん。



 さて、私は調理に戻ろう。

 各自持ち場に戻って、各々の作業に没頭。


 海老料理のメインが運ばれ、スープの空の器を持って春日井執事長が困り顔で来た。





「皆さま全部召し上がりたいそうです。あまり聞いたことがありませんが……可能でしょうか?王太子殿下から確認して来てくれと言われまして…………」


 


 大輔さんはメインが終わったら希望が有ればその場でりんごを剥いたり切る係らしいよ。なので、代わりに春日井執事長が来たと。


 もしかしたら食べた事ない物あるかも知れないと思って、見本用にデザート3つをオシャレな板の上に乗せてどれにしますか?って聞いてもらうようにしたんだ。

 ハイルング国だと口頭でデザート名聞いて選ぶらしいけど。



 その3つのデザートを見て固まったカールさんが、全部食べたいと言ったのが始まり。


 王太子は最初オススメとエルフ族古語でスタンプ押されて焼かれたクッキーが刺さった苺のショートケーキを選択したが、ミアさんも全部食べると言うので、それじゃ私もお願いしますと。厨房に確認しに春日井執事長が来たと。


 数は人数分あるけど、大体デザートは1個選択が普通のハイルング国で果たしてデザートは一皿でずつ出すのか、盛り合わせで出すのが正解なのか謎。



「お手数ですがどうするのが正解なのか聞いて来ていただけますか?」



「勿論でございます。確認して参りますので少々お待ち下さい」



 麻美副料理長のフォローで、困った時は聞くに限るを発揮され、手間だろうからひと皿で出して欲しいとカールさんから許可が出た。



「つばめさん、手が空いたら皿の選択と盛り付けの配置を一緒に考えてもらってもいいですか?」



「分かりました。後5分待って下さい」






 さて、皿は白で丸皿の平でいいか。流石にゼリーの器はこのまま乗せると場所を取るのでスプーンですくって高さのある小さめのグラスに移して量も少なくしよう。


 ちょっと味気ないな?ゼリーの器をズラして、《いっぱい召し上がれ》と絞り袋に入れた苺ソースで大胆に書いて行く。

 


 最後に《オススメ》と書かれたクッキーを苺のショートケーキの前に置けば完成。



「こんな感じでどうでしょう?」



「いいと思います。なんて書いてあるんですか?形がエルフ族古語ですよね?」



「『いっぱい召し上がれ』って書きました」



「なるほど。ふふっ……つばめさんらしい遊び心あふれるひと皿ですね。配置はしますので、ソースの装飾はお願いします」



「了解です」



 大輔さんがメインの皿を下げに来たので、りんごの皮剥き終わったみたい。



「そちらは大丈夫か?」



「はい、つばめさんのおかげで乗り切れそうです」



「流石に面と向かって止められなくてな。あまりにも無茶な要求な時は言ってくれ……《いっぱい召し上がれ》か。くくくっ……本当に大丈夫そうだな」



 ちょっと夜の分の甘い物が減っただけだよ。あまったデザートは夜に回すハズだったんだけど、それだとカールさん食べれないもんね。食いしん坊さん。


 メインは作り終わったので、麻美副料理長が居る内に少し何かデザート足そう。



 私は牛乳片手に卵を取り出して焼きプリンを作ることにした。



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