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342話




 書類を箱で持って帰って来た累さんに、今後第7長官室の人員が少なくなったらどうするのか質問してみた。



「エデン臨時会議で話が出ると思うけど、軍も文官も配置換えや新規雇用を大幅に行うみたいね。後は孤立した部屋自体を廃止するみたいよ」



 第7文官長室となっているのが『第7文官長』となり、離れた場所の独立した部屋自体をなくすそうだ。

 第7文官の使っている部屋の中に、第7文官長と第7文官福長専用の執務室みたいなのが1部屋出来る形になる。


 文官長と文官副長にそれぞれ補佐官が付くとか。

 補佐官が文官長や文官副長のスケジュール管理等も行うらしい。



「補佐官が仕事の手伝いも監視も受け持つ形になるわね。配置換えも今度から頻繁に行うみたいだから、1年で移動とか有り得る。各国の共通語が浸透して無いから多分第7文官が最後に手が入るわ。他国の言葉を翻訳出来ない人を回されても困るもの」



 共通語がエデン内に浸透したら、第7文官自体の仕事は殆どなくなるので規模が縮小される形になる。

 最終的には他大陸から来た書類関係を翻訳する位で済むだろうと。


 後は通訳だけど、それも毎回必要では無くなるので文官で話せる人や外部に依頼する形を取るそうだ。



「コンスタンティン様はもっと壮大な計画立ててるみたいだけど、それは臨時会議で発表されるから少し待って頂戴ね」



「分かりました。楽しみにしてます」




 その後は急ぎだと言う書類を累さんと私で出来る範囲で片付けて、定時になったので私はお仕事を終えた。累さんは残業だけど、第7文官の何名かにベスティア国側の使節団は任せて書類仕事に専念するそうだ。





 ドアを開けるとウルスラさんとクマさんが立っていた。



「餡マン美味しくいただきましたつばめ様。ありがとうございます。ミアにもお礼を言うよう言われました」



「お仕事お疲れ様ですウルスラさん。お口に合ったようで良かったです」



「お姉ちゃん、お兄ちゃんから手紙預かったから渡しておくね。急ぎみたい」



「ありがとうクマさん」



 ハルさんはもう少し貸して欲しいと言われたので了承しといた。どちらかと言うと、私の方がハルさんを借りてる感覚です。


 これからウルスラさん直々に手解きするそうで、1時間残業みたいだね。よかったねハルさん。


 手紙をその場で読むと……ん?



「もしかして、鈴木さん迎えに来てくれてますか?」



「はい、直接お話があるとかで先程到着して馬車乗り場に待機中。鈴木商会の総合取締役の方もご一緒だそうです」




 手紙を見ると、カールさんは内輪の食事会の材料などを鈴木商会に頼んでいたそうだ。

 カールさんから私に料理担当が変わったので、注文されていた材料の変更があれば確認して欲しいと……なるほどなるほど。人数の変更もあるから、確かに必要だよね。


 カールさんにも一回確認しに行った方がいいかな?手紙だと埒があかない気がして来た。


 ウルスラさんに挨拶してから、馬車乗り場に向かうと鈴木さんと剛さんが既に待機していた。



「つばめ様。お仕事御疲れ様で御座います。御早いお帰り嬉しく思います。」



「急に押しかけて申し訳ありません。良ければ馬車の中でお話し伺ってもよろしいでしょうか?」



「お二人共わざわざ此方まで来ていただいてありがとうございます」



 相変わらずのジェントルマンな鈴木さんに馬車の乗車口の扉を開けてもらって剛さん、私、クマさんが乗り込む。鈴木さんは馬車の運転。



「大輔さんの手紙には元々の予定は王太子が到着次第直ぐに食事会を行うと書いてありましたが…明日って事ですか?」



「大まかな日取りは随分前から知らされていたので、明日か明後日の予定で組んでおりました。何でも、王太子殿下のお身体の具合が余り良くないそうです。内密にお願いします」



 エルフ族って身体の作りが頑丈で病気や怪我も余りしないって聞いたけど、具合が悪いとかよっぽどだよね。

 そんなんで食事の席に着いても大丈夫なのかな?



「カール様がお婆様(皐月)に王太子の症状を前から相談されていたご様子で、到着と同時に診察も受けるそうですが…恐らく、食事が足りていないのではないかとの見立てで」



 腹ペコで体調不良なのか。それは食べないとだね。

 カールさんが注文予定だった材料の一覧表を剛さんに見せて貰うと………凄い数と言うか量だね。え?これ全部って私1人じゃ作りきれないよ。



「凄い量ですね…」



「カール様は長時間料理を作るご予定でしたが、ユリエル様が抜けて王太子殿下の話し合い手がミア様しかいなくなるのはまずいと、つばめ様にご助力願ったそうです。しかし、それではつばめ様の負担がかなり大きくなりますので…これからカール様と会う約束を取り付けております。良ければご同行願えませんでしょうか?」



「はい、構いません」




 私が同行に承諾すると、剛さんは御者台の方にある小窓を開けて鈴木さんに目的地の変更を告げた。








 



 エルフ族大使館に到着後、執事の春日井さんに案内されて部屋に通され、お茶を振る舞われているとカールさんが部屋に入って来た。


 鈴木さんは馬車で待機。剛さんと私が席に腰掛けてクマさんは私の後ろに立って待機している。護衛っぽいね。

 カールさんの後にも1人エルフ族の方が待機していたので、あちらも護衛かな?



「つばめ様、お忙しいのにすみません」



「カールさんの方が忙しそうですね……その白い衣装良くお似合いです」



 ハイルング国王の衣装らしいよ。ザ・王様って感じがするね。カールさん既にハイルング国王なのか。



「カール国王様?と、お呼びしてもよろしいですか?」



「おやめ下さい。堅苦しいのは他で充分です…これから人が増えたら、ますます王の様に振る舞わなければなりませんので、公式の場以外では今まで通りでお願いします」



「はい、分かりました」



「では、お時間も限られておいでの様なので、早速本題に入らせて頂きます。まずはカール様が指定された日付けとーーー」



 剛さんが主体となって話をした結果、日付は明日の14時に食事が開始。そのまま王太子がお腹いっぱいになるまで。凄いアバウト。



 私は朝市の販売と農業都市の買い付けが終わったら合流予定で、それまで副料理長が補助を1名連れて料理の仕込みに入るそうだ。助かる。



「口うるさい者どもが居るので、最低限の人数の出入りしかできませんで、申し訳ありません」



 カールさんが後ろのエルフ族男性の方をチラッと見た。なるほど…さっきから眉間に皺寄せてて怖いんだよね。共通語は通じないので、話してても分からないと言われた。


 もし失礼な事されたらカールさんに告げ口しろと、念を押される。りょ…了解です。



 私は朝市の販売とか仕込みもあるので、14時前後から調理に入り、遅くとも夕方18時までにはこの場を後にする。


 副料理長と補助の方は12時〜15時まで。その後鈴木邸に帰るみたい。その時間しか貸し出し出来ないと剛さんが言っていたので、やっぱり鈴木商会の料理人さん達も忙しいみたい。



「皐月は明日の王太子診察後、一旦王宮に帰りますが夕方から手が開くそうです。皐月が来てくれればユリエルの手が開きますので私が調理に入れると思いますが………つばめ様は大輔を雇われたのですか?」



「はい、雇用契約自体は結びましたので、明日が初出勤日になりますね」



「折り入って相談なのですが、私に大輔を夜から貸し与えて頂けないでしょうか?つばめ様の店の仕込みなどが終わってからで構いません。本人に交渉したら、貴方の許可が出てからしか動かないと言われました」



 大輔さん、好きにお金稼いでいいんだよ。全然構いませんから。朝までには帰して下さると助かります。


 王太子が朝までにはお腹いっぱいにならなかったら、一旦休憩時間を儲けて、また同じローテーションで次の日も挑むと。




「面倒ですが、食事の席に誰か話し相手と言う名の同席者がいないと成人王族は食事が食べられないのです。王太子の胃袋の量がどれ程か分かりませんが、ミア1人では心許ないのです」




 しかも、ハイルング国王族の食事量では王太子の胃袋を満足させられないだろうと。


 確かに、私がカイザス国の王宮客間で出されていた量じゃカールさんやユリエルさんでは満足出来ないだろうな…アレより更に少ないらしいよ。しかも1週間に1回とかザラ。


 ハイルング国の王侯貴族は食事量が少ないのを美徳としているらしい。エルフ族の高魔力保持者の証みたいな意味合いで。


 お菓子と紅茶の摂取量の方が下手すると多くなるみたいね。



「お菓子なら王太子1人でも食べられますか?」



「可能ですが、余り沢山は無理でしょう。内輪の晩餐会と言う事で人払いをしてから料理を食べる事になります。自室に引っ込むと、周りの目がありますので菓子を多量に食べるのは宜しくない」



 王太子お腹いっぱい計画は内緒で行われるので、極力周りに漏らさない様気をつけてくれと言われた。分かりました。





 ハイルング国側からも料理人は来るが、王族と家臣などの厨房は分けてあるとか。

 エルフ族大使館には厨房が3箇所用意されていて、下働き用の簡単な厨房と言うか、規模の小さいキッチンもあるのね。




 後はカールさんが何を作ろうと思ってどの材料を注文したのか聞いて行く。これだけは作りたいと言うのを省いて、私は材料を選んで追加の材料などを剛さんにお願いする。


 私が作るコースメニューを書いたメモを剛さんとカールさんに手渡して確認してもらう。

 前半は副料理長が作れる料理を中心にし、後半は私が作れそうな料理名を並べる。


 作った料理の持ち込みは不可なので、このエルフ族大使館でコツコツ作るしか無いね。



 神聖帝国の神殿関係者の料理も肉や一部魚、飲酒が駄目だが。ハイルング国も中々縛りがある。



 まず、極端に熱い料理は出せない。冷たいのは大丈夫みたいだけどね。


 次に、王太子は固形のお肉は食べない。


 カールさんと一緒で、スープの出汁やサラダに乗ってるベーコンとかなら食べれるみたいよ。

 後は、味付けは薄味が基本。極端に塩っぱい物や辛い物は避けた方がいいと言われた。


 それと、一皿づつ出すのが基本。盛り付けも出来れば綺麗に。


 最初はコース料理をエンドレスで出す形にして欲しいと。大丈夫です、コース料理ですね心得てます。




 王太子本人にも、お腹いっぱい計画当日まで内緒らしいよ。「不味くて食べられない」って言われない様に気をつけよう。



 


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