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323話



「最初、最高司祭であった父上に抗おうと思ってました。カイザス国を内部から制圧して、神聖帝国……『聖女の家系』に取り込んで『我が君』を取り戻そうと躍起になっていた。自分が最高司祭の席を叔父上様から強奪する為に私に色々指示を出していた……結局全て失敗に終わりはしましたが…全てはそこに居る叔父上の掌の上の遊戯に過ぎなかった。私もそうです『我が君』と『真希様』の寵愛合戦に負けただけですよ」



「真希……前皇后様ですか?お亡くなりになったのでは?」




「………えぇ、それで父上は大分荒れた。叔父上様もですが………」



「待て、話が全然分からない。何故母上がそこで出て来る?」



 健介さんに話を振られた、『叔父上様』と大輔さんに言われてる恐らく……現最高司祭(監視兼給仕で来た人)は酒を優雅に飲みながら微笑みを浮かべて話に入って来る様子は無い。


 全く話について行けない私にカール様が教えてくれた。


 皇家の皇太子、健介さん、お亡くなりになった(健介さんと双子だった)恭介さんと言う方の母親が真希さん。

 椿さんと健介さんは腹違いの異母兄妹だったのか。


 真希さんの前の旦那さんが叔父上様と呼ばれたそこで優雅に酒を嗜んでいる人。

 


 どうやら、叔父上様(現最高司祭)?と真希さんの間に長年子どもが出来なくて離婚後、皇家の皇帝陛下(健介さんのお父さん)にお嫁に行ったらしい。



 大輔さんのお父さん(前最高司祭)に子どもはリリアさん、大輔さん、ジョンさんと3人居るが全員お母さんが違うとか……凄いね。



 最高司祭は総選挙で決まると言うが、兄、弟、現在また戻って兄の目前で優雅に酒を飲んでいる人に戻った形になる。



「恭介様は聡い方だったが、どうやら健介様は違う様だ。『聖女の家系』の兄弟と貴方の所の皇帝陛下が長年真希様の寵愛で醜い争いをしてた何て知らなかっただろう?」



「………母上のそう言う話は聞きたく無いんだがな」



 神聖帝国で長年愛のドロ沼劇が開催されてたなんて、私も知らなかったよ。教科書に記載されてた歴史の裏側恐るべし。



 コンスタンティンさん(大地神教神様)の寵愛合戦を『聖女の家系』の兄弟で、更に真希さんと言う方の寵愛合戦を国上層部の3人でしていた事になるらしい。複雑だね。



「私は父上(前最高司祭)がずっと許せなかった。私の母を蔑ろにして……私には時が来たら『聖女の家系』に迎え入れるからそれまでカイザス国の軍で頑張って自分の為に身を粉にして働けと。だから、そんなもの何もかにも壊してしまいたかった。リリア姉上は毎日何かに怯えて暮らしていた……いつか誰かに自分は殺されると。国を出たいと本気で嘆いていた。だが、立場がそれを許してくれなかった。だから手助けしたんだ」



「では、ジョンさんはそれに巻き込まれたと?」



「……弟のジョンには申し訳ないと思っている。アレの母親は戦友の愛した女だ。私も何とかしようとしたが、この通り罪人だからな………そこの叔父上様(現最高司祭)の所為で」



 聞きに徹していたカールさんが怒気の含んだ低い声で確認していた。



「何故『水島隊長』の奥方を利用したのですか?」



「どちらかと言うと私が利用されたも同然だ。この話は違う時にしよう…只でさえややこしい話が更にややこしくなる」



「……儂はそんなどうでもいい理由でリリアを差し向けられたのか」



「私にとってはどうでも良い理由では無い。リリア姉上の命は助かったが、父親に復讐してやると言う目的がキチンと達成出来なかった。本当は………全てを手に入れたと思った父上の目の前で、真希様を亡き者にしてしまいたかった。まさか途中で死ぬなんて」



 クスリッとこの場に似合わない笑い声がしたと思ったら、酒を飲み終わった現最高司祭が卵焼きに手をつけながら隣の大輔さんの方を向いた。



「親子揃って詰めが甘い。私がそんな事みすみすさせる訳が無いでしょう」





 現最高司祭以外結局誰も食事も飲み物も取れないでいる中で、1人だけ優雅に美味しそうにごはんを食べているその光景は異様に思えた。あ、端の席の皐月先生も普通に食べてたわ。




 神聖帝国の人って何か怖いね。



 コレが『聖女の家系』の総選挙で選ばれた神殿関係者の頂点の人か……確かに心の広そうなコンスタンティンさんでもこんな人相手にしてたら嫌になると思う。色んな意味で。




「計画変更して、リリア姉上の不祥事で父上を最高司祭の職から蹴落として、私が次の最高司祭に早めになろうと思っていた。父上に指示されたカイザス国乗っ取りも順調だと思っていた。『我が君』を神聖帝国に再び招き入れれば次の地位は安泰だからな……高々1人にそれを阻止されるなんて…あのメガネ。叔父上(現最高司祭)の差し金だろう!」



「さあ、何の事だか?」



「では、本来ならジョンさんは助かる筈だったんですか?」



「私の計画では、リリア姉上は『聖女の家系』及び大地神教から脱退。これまで国に尽くした事もあり、温情を与えて子どもともどもフォーゼライド国に追放処分する筈でした。ジョンはそのまま私の弟だ。しかし、私と最高司祭の席を争うといけないので『聖女の家系』の教育をわざと施してない。ジョンが望めば何処かの分家に婿にでも出そうと思っていた」



 カイザス国も手に入り、フォーゼライド国もリリアさんが入った事で橋渡しが出来た。

 どちらかから、若しくは両方から魔道具技師を派遣してもらって国の城壁結界を調べたかったらしい。



「神聖帝国は城壁結界……血統結界頼りの国防ではいつか国が危うくなる。それは私の望むところでは無い。最高司祭になたったら、手始めに神殿都市の結界から調べて貰おうと思っていた」



「それで、皇家の地位も脅かして神聖帝国をも牛耳り、カイザス国も手に入れた後ですから……フォーゼライド国を酒で釣りながらジワジワまた内側から国を乗っ取り。3国治める気でいたんてますね。何とまぁ、夢物語の様な計画でしょう…クスッ」



「夢物語だと?何がおかしい」



「皆様、食事をしましょう。折角のお料理が冷めてしまった……冷めても美味しいので、私はいい加減おかわりしたいのです。甥のしょうもない逆恨みの言葉より、私のお話でも聞きながら、楽しく宴会でもしましょうよ」




 それだけ言って本当に席を立った現最高司祭の空のお皿を片付けて……ついでに皐月先生の所も一回お皿を下げよう。



「あら、つばめさんありがとう。この野菜のソースが色々あって美味しいわ」



「ありがとうございます。副料理長が張り切って色々作ってくれたんです。肉厨房のローストビーフサンドは料理長オススメですよ。いいお肉が入ったからって言ってました」



「あら、じゃあ次はそっちも食べようかしら」



 各々また料理や飲み物を口に運び始めて、お食事はまた再開。私は温めるだけにしてあった海老グラタンを1つトースターでチンして、現最高司祭に勧めてみた。



「つばめ様…お…んみず…から…感動でまた前が……」



「危ないので、テーブルに運んでおきますね。熱いんで気をつけて食べて下さい」



 料理人さん達が作ってくれた料理を…食事を再開させてくれた事は凄く感謝してるけど、やっぱりちょっぴり苦手だなぁ。



 そう思っていたら、皆んなグラタン食べたいと言うので私は暫くトースターを駆使して海老グラタンの上に焦げ目をつける作業に徹した。



 


 今回お話が複雑なので、現時点での主に神聖帝国関係者の情報をまとめてみました。あまり気にしない方は飛ばして大丈夫です。

↓↓↓




神聖帝国関係者人物紹介


●神殿関係者●


『聖女の家系』大地神教総本山


○現最高司祭(兄)

※100年前も最高司祭。弟が罪人になり再び就任。

※100年前ジャンケンに負けて世界会議出席

(離婚)①真希

(再婚)②伴侶→息子、娘


○ジェームス(弟)前最高司祭

※100年前のスタンピード後最高司祭

※現在大輔同様罪人扱い

(死別)①伴侶→リリア→サイ、マリー

(死別)②伴侶→大輔(改名オリバー)

(死別)③水島の元嫁→ジョン



 リリアとマティアス(フォーゼライド国王)の間にサイ(エルフ族)とマリー(ドワーフ族)が生まれたのが、現在問題になっている。



『巫女の家系』飛び地(霊山付近)管理


○巫女の家系当主

(存命)ロジャー母→子沢山


 管理地に健介+ジョン+マリー(養女)がお世話になっているが、臨時会議の為カイザス国に滞在中。




☆カイザス国在住巫女の家系関係者☆


○皐月

※元巫女で今は魔女、第3医務室軍医

(??)無色の家系者→葉月

(死別)ヤンデレ→???、鈴木


○ロジャー

※当代巫女、第7長官室副長


皐月→鈴木→ロジャー母→ロジャー

※皐月から見たらロジャーはひ孫

※皐月の兄の末裔が巫女の家系当主



●皇家関係者●


○神聖帝国皇帝

※棚からぼたもちで真希を下げ渡される

(死別)①真希→皇太子、(恭介)・健介

(再婚)②皇后→皇子、椿(カイザス国在住)




 名前が和名っぽくない人は当時の最高司祭に名前をつけてもらってます。神聖帝国では大変名誉な事。


 例をあげると、ロジャーの名付け親は当時最高司祭だったジェームス(大輔パパ)。


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