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310話

 


 さて、鈴木さんとコンスタンティンさんのお夕飯作りに取り掛かる。


 炊き込みご飯は既に後は炊くだけにしてあるんだ。

 具材は人参、椎茸、筍、鶏もも肉。ベースは昆布出汁にしてお醤油で味付け。後はスタイリッシュな土鍋で炊けばオッケー。


 メインディッシュは鈴木さんが持って来てくれた『冷凍メカジキ』。

 既に切り身にしてあったので、醤油と砂糖と日本酒に水を入れて生姜とネギを投入して落とし蓋をして煮て行く。途中で灰汁取りも忘れずに。


 後は付け合わせのほうれん草を茹で終わり、次に大根を煮て行く。

 小鍋に味噌と砂糖と日本酒を鍋で煮て、茹でた大根の上に掛ければふろふき大根の出来上がり。柚子の皮はお好みで。



 最後に豆腐とワカメの味噌汁。

 昆布出汁に花鰹で出汁を取ってから、乾燥ワカメを水で戻した物を加えてこれまた鈴木さんが持って来てくれた豆腐を切って加える。一旦火を消してから味噌を溶かし入れて食べる直前に再度煮立つ寸前まで加熱すればOK。



 コンスタンティンさんとユリエルさんに食事が出来た事を知らせに行くと、コンスタンティンさんだけついて来た。作業自体は終わったが、ユリエルさんはまだ色々見たいとの事でキリのいい所で来るらしい。



 コンスタンティンの夕ごはん


 炊き込みご飯

 メカジキの煮付け

 茹でほうれん草

 ふろふき大根

 ピーマンの胡麻和え

 豆腐とワカメの味噌汁

 白菜ときゅうりの浅漬け


 羊羹

 梅酒

 緑茶



 ピーマンの胡麻和えは、ハルさんにすり鉢で胡麻をすりすりしてもらいました。

 そこに砂糖と醤油を加えて軽く茹でた細切りピーマンを混ぜ合わせれば出来上がり。


 席に着いたコンスタンティンさんの前にオカズを並べて行くとピシリと固まった。



「……マジか。え?つばめもう揃えちゃったの???」



「どうぞ召し上がるれ。お二人共、頂き物なんですけど梅酒は飲みますか?個人で作った物なんで、あくまでも飲むなら自己責任ですけど…」



「あー…………あるんだ梅酒。折角だからいただこうかな?」



「私めも頂きとう御座います。」



 先にオカズを摘んでいた2人に土鍋ごと出した炊き込みご飯を混ぜ混ぜして、お茶碗によそって手渡す。

 コンスタンティンさんは暫くその茶碗を眺めていたが、鈴木さんにはご丁寧なお礼を言われて早速ひと口食べていた。



「美味しゅう御座いますつばめ様。これはまた…味の付いた米は豆ご飯や芋ご飯かと思っておりましたが『炊き込みご飯』中々良いですな。」



「お口に合った様で良かったです」



 それを聞いたコンスタンティンさんは、炊き込みご飯を口に入れて箸を持った片手で…………頭を抱えていた。

 鈴木さんも前にパンケーキの時にやってたけど、アレだよね。



「頭抱える程美味しいって事ですか、コンスタンティンさん?」



「つばめ、頭を抱えるのは困った時にするポーズだからね?ちゃんと美味しいよ、大丈夫。お焦げが旨い」



 ………前に頭を抱えてパンケーキを食べてた鈴木さんは果たして何に困ってたのかな?

 そして、今炊き込みご飯を食べてるコンスタンティンさん何にお困りですか?


 聞きたいんだけど、いつも大体ニコニコしてる筈のコンスタンティンさんが珍しく真顔で怖くて、美し過ぎて聞けない。



 鈴木さんはご飯は2杯でいいと言われたので、炊き込みご飯の土鍋をちょっとずらして、シャモジを付けてそのままコンスタンティンさんの方に移動させた。好きなだけ食べて下さい。



 私はパントリーに行って梅酒を2本持って来る。ついでにキッチンに行ってグラスも2脚。

 熟成10年モノと5年のやつだ。ちゃんと賞味期限の魔道具で調べて飲める事は確認済みです。味見もしましたバッチリです。



 梅酒を説明しながら注いで出すと2人はゆっくりと味わう様にして呑み始めた。



「まろやかだね」



「いいですな。」



「はぁ〜。まさか海の魚まで出してくれると思わなかったよ………つばめに鈴木を引き合わせるの早過ぎたかな?大体この豆腐も大方お前のところのでしょ?つばめ、海行って無いのにワカメなんてどうやって手に入れたんだよ。旨いよ。梅酒こんな早く手に入れちゃうなんて、ドワーフ族がいるこのカイザス国でどうやって手に入れたんだよ。旨いよ。ウィスキーで漬けたヤツ呑みたいんだけど?」



「梅を育ててる鈴木商会の契約農家さんのご好意で譲ってもらいました。梅の実もいただいたんで、個人的に幾つか仕込んでます。でも、ウィスキーのはまだ飲み頃じゃ無いんですけど、持って帰りますか?ちゃんとした日本酒のは神聖帝国から取り寄せ中なんですけど…」



「またお前か。てか、あるのかよ?つばめは私を喜ばせる天才か?はたまた堕落の女神か???」



 コンスタンティンさんが壊れた。

 鈴木さんは構わずと言うか気にせず食事を続けているが、バタンッと音がしたと思ったらハルさんが倒れてた。



「え?え?ハルさん???」



「あ、ごめんね?ちょっと魔力漏れちゃった。ふぅー………多分コレで大丈夫。起こすの可哀想だから自然と目が覚めるまで寝かせておきな」



「つばめ様、このお味噌汁美味しゅう御座いますな。」



「あ?え?…お…おかわりしますか?」 



「宜しければ頂戴しとう御座います。」



 あ、もう鍋で持ってこよう。

 てかハルさん本当に大丈夫かな?心配してたけど、直ぐに起きた。



「顔色悪いから、部屋に帰りな。ここにいるとまた倒れるかもよ?」



「…はい、すみませんが…そうさせていただきます。申し訳ありません、今日はこれで失礼します」



 フラフラしたハルさんを3階の部屋まで送ってから2階リビングに戻ると、鈴木さんとコンスタンティンさんが食事しながら静かに喧嘩してた。



「大体お前何なの。つばめの家の周りに色々店建てすぎじゃない?つばめもだけど甘やかすなよ、つばめと私が駄目になたらお前のせいだからな」



「私めそしたら、『神様も骨抜きにする店』としてつばめ様と新店舗でも建設いたしましょうかね。メニューに必ず炊き込みご飯を載せましょう。ああ、夜は裏メニューで梅酒でも提供いたしましょうかね。ドワーフ族が五月蝿いでしょうから個室を予約してから来店下さいませ。私めが毎度給仕として対応させて頂きます。」



「お前、私に何の恨みがあるんだよ?」



「数え切れない程御座いますが、最近ですと孫をそそのかされましたな。したくも無い婚約までして、なりたくも無い地位まで頂戴する様で、私め毎夜枕を濡らして泣くほど嬉しくて仕方がない心境で御座います神様。」 



「嫌味か。全くの濡れ衣だからな?私はロジャーに『どうかな?』って聞いただけだよ?」



「確信犯が何をごとおっしゃっておいでか理解しかねますな。アレはカイザス国に長くいますが、根っからの大地神教者で御座います。神様に聞かれたら大抵の事は断れ無いと相場が決まって……ロジャーめは、事が大き過ぎて最初冗談だと受け取った様ですが。私めが聞いても恐らく冗談だと捉えるでしょうな。『最高司祭にならないか?』などと、雑談ごとに混じって気軽に聞かれたら。神様はジョークのセンスが破滅的に無いと笑い飛ばしてしまいそうで御座います。」



 帰っていいですか?と、言いたいところだけど私の家ここなんだよね。

 マシロさんは何処にと思ったら、自分の机の下を必死にズリズリしてた。


 知らなかった。この2人仲悪かったのね。


 鈴木さんが愚痴愚痴嫌味?を言ってる途中で、コンスタンティンさんに手招きされた。

 私はまだリビングの入り口で立ちすくんでたのに、後ろ向きで手招きって器用な事するよね。


 そーっと近づいて隣に静かに正座すると耳元で「あげる」と小さく言われて卵を手渡された。


 このタイミングでた・ま・ご。


 しかもデカイんですけど。ダチョウサイズ?くらいかな???



「大体つばめ様の時もそうだ」



 私の話?



「養子にしたんなら、しっかり面倒を見ないと可哀想だとあの時も申し上げました。今もまだ思っております………仮にロジャーが『聖女の家系』を掌握しても、神聖帝国はつばめ様を諦めないでしょう。ご自身も大変魅力的な方だが、それに加えて神様の養女様ですぞ?大分カイザス国内は粛清が済んだ様で御座いますが、次は皇家が魔の手を伸ばして来る。貴方はその時どうするおつもりだ?」



 え…………。











「本当は、頑丈な檻に閉じ込めて私の手の届く所に囲ってしまいたいよ。それが1番安全だからね?でも、自立心が強くて、人との関わりを大切にしてるつばめがソレを望むとは思えない。身体は安全でも、つばめ自身の心まではどうする事も出来ないよ。仮に攫って地の果てまで逃げても、誰かが何処までも追って来るだろ。特にお前みたいなヤツが」



「全く否定出来ませんな。囲われたら私めが攫うでしょうし、何処かに逃げると言われたらつばめ様に泣いて縋って連れて行けと、後は神様を脅す位はするで…………………つばめ様?いつの間においででしたか?????私め穴を掘って参りますのでお手数ですが、つばめ様手ずから埋めて頂いても宜しゅう御座いますか?」



「……ごめんなさい鈴木さん。ちょっと私今両手が塞がってるんで無理そうです」



「卵で御座いますか?いつお産みに……あ、いや冗談で御座います。これではそこら辺の神様にジョークのセンスがスライ…ごほんごほんっ…石ころ並みだと申せませんな。」



 エルフ族って卵で生まれるの?違うらしい。うん、普通分娩?だよね。産卵しないよね。



「つばめが獣人族鳥種と結婚したら産卵になるかもよ?それか、魔族天使種とか」



「『天使』いるんですか?」



「ベスティア国内に何人か獣人族鳥種に混じってるかな?後は竜人種や蜥蜴種も卵になる可能性あるね」



 それにしても立派な卵だ。



「目玉焼きにしたら美味しいですかね…」



「私も食べた事無いから味は分からないけど、流石のつばめでも死にはしないと思うけど、食べたらお腹壊す位はすると思うけど。てか、食うなよ?そんなもん食べようとする発想がなかったからどう答えていいか分からないよ私?」



 食べるとお腹壊す「そんなもん」と言われてる卵何のためにくれたんだろうコンスタンティンさん。

 食べませんよ、食べませんけどちょっと気になるから調べる位はいいよね?てか、そもそも何の卵?




 産卵場所と言うか、ベスティア国『鳥人種保護指定区域』と言う場所で人の卵は保護されるらしいから、少なくとも人様の産んだ卵では無い事は確かだ。



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