309.5 マシロ5
アイツの声聞いてると吐きそうになるけど……。
いや、でもユリエルの話は気になるからここまで来たら聞くよ!アイツがいるのは怖いけど、この恋の行方凄い気になる。
あ、そうか…忘れてた。つばめ、異世界人だったね……そうか。
え?『カミュ様』も異世界人でしかも転生者???
それって………
マシロが呼んだから来たって事?
いや、でも………駄目だ思い出せない。つばめに前に会った事あるのかな?
あの時は人なんて全部同じの下等生物だと思ってたから、よく分からない。
やめた。考えても思い出せないのは仕方ないよね。
そんな『呑気』に考えてたからバチが当たったんだろうな。
「本当は土足禁止だけど、マシロが掃除してくれるからとりあえずこのまま上がろうか?業者は作業中土足だったしね」
ズリズリ…
久しぶりに掃除させられた。惨めな気持ちいっぱいになる。マシロはスライムだもんね。掃除するのが仕事だよね。
これが…マシロに与えられた罰だもんね。
真っ赤に広がった血の海に、所々焼けた大地。
元の地形は異世界人達が広めた兵器で所々エグれ。
異世界人達の発想や直接その手で生み出された悪魔や巨大な魔物達。
それが、マシロの『使命』だと思ってた。
あの血の海の中に、もしかしたら『マシロ』にとっての『つばめ』がいたのかも知れない。
元の世界に大切な人が居たのかも知れない。
殺めた数多の生き物にも、今のマシロと一緒で感情が、こころがあったのかも知れない。
たまにうなされてるつばめは、もしかしたら…マシロの所為で泣いてるのかな?
『苦しい』。心が苦しいよ、つばめ。
苦しくて苦しくて掃除が捗らない。こんなじゃ、アイツに消される。
そんなこんなでいたら、つばめが迎えに来てくれた。
「マシロさん、お掃除お疲れ様。スコーン一緒に食べましょう」
お疲れ様?スライムだから、地べたに這いつくばって汚れを綺麗にするのは当たり前なんだよつばめ。
スコーン???マシロに取っといてくれたの?一緒に食べてくれるの?
ユリエルはもういっぱい食べたんだ。
つばめ、マシロと食べる為に待っててくれたんだね。つばめ超優しすぎるよ。
『マシロ、最近お利口だからちょっとご褒美をあげるよ?ーーー』
やっぱりアイツは酷い奴だ。何てこころがあたたかいと同時に苦しい『ご褒美』だろう。
こんなご褒美なら、何も考えずに地面をずっと這いずってた方がマシだったかも知れない。
それでも、許されないだろうけどつばめと一緒にいたい。つばめが優しくしてくれるから、マシロも優しくしたい。
あの頃は何とも思わなかったけど、マシロがした事は…今は悪い事だったと思うよ。
悪い事したら『ごめんなさい』って直接謝らないと駄目だよね。絵本に書いてあった。
でも、今のマシロにはその手段がまだ足りない………やっぱり勉強して、もっともっと字が書ける様にならなきゃ駄目だ。
ごめんなさいもしたいけど、つばめにもっと色々伝えたいなぁ。
ああ、苦しいなぁ…つばめ、マシロはこの持て余した感情をどうすればいいんだろう?
感情を無くすのは簡単なのに、それを手放したらつばめに優しく出来そうに無い。
『葛藤』
なんて厄介で複雑な感情だろうね。こんな感情を教えてくれたつばめを『恨む』と同時につばめに『大好き』だと伝えたい。
我が名はマシロ。又の名をユグドラシル。
母様の悪戯によって世界は魔石をもたらし、植物からなる『世界樹』より我は生まれた『世界の意志』。
母様より賜った『使命』の為に異世界召喚と言う誘拐事件を引き起こし『世界大戦』を勃発させた張本人。
異世界人のもたらした多くの知識は、世に混乱と数多の恩恵をもたらした。
兵器に思想にダンジョンなどなど。あげたらキリが無い。
その数多の混乱を引き起こした者として、罰を受け『邪神』の手により封印され、スライムにされたのが我だ。
我は人の信仰により生まれし神により裁かれた『女神』の成れの果てである。
昔は『女神信仰』が当たり前だったがな。とんでも無いのがいつの間にか生まれたものだ。
因みに我は厳密には『女神代理』とか『世界の代弁者』とでも言うかな?
今の世の『人』は何もかも知りもしないか。
知ってる者どもはもはや『人』では無いからな。我の様に。
『矜持』もその内戻ってきたら、前とは違う形でこの世界を…『使命』を全うしたいな。
そうなったら……マシロは大好きなつばめと離れ離れになるかも知れない。
それでも、つばめが泣かずに済む世界を、つばめがずっと笑顔でいられる世界を守りたいから、マシロはーーー。
マスターコード確認
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『次元の狭間』に干渉
『次元の裂け目』を開きます
つばめ、頼むからいつまでも笑っていてね。この空の下で、マシロはいつまでもつばめの幸せを『願う』よ。
いつか知った、この胸があったかくなる感情は『嬉しい』。マシロは嬉しいよ、つばめの為に世界を守れて。
つばめ、つばめ、マシロに感情を、『矜持』を思い出させてくれてーー
ありがとう つばめ
ー
世界樹〜マシロは永遠に〜END




