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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
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287.5死に行く者達7




 神聖帝国の者とお別れして、私達援は羽馬を乗り継ぎ、最前線の野営地に向かった。



「お疲れのところが申し訳ありません。水島指揮官が面談希望を求めています。良ければ皆様このままお越しください」



「わかったわ」



 神聖帝国の治世を任されている皇家。年齢的にと肩書きで代表者は私になるので、カイザス国の軍服を来た者に返事を返した。


 鞄ひとつの荷物を持ったまま、私達は大きな天幕に通される。椅子に座った所で紅茶を出されたので、ひと口頂くと直ぐに入室許可を求める声がかかった。静かだが、透き通る様な低い声。何故か耳に残る。



 入って来た者を見て……うーん…元々の顔の造形は良いのに……何と言えばいいのだろうか?雰囲気が常人じゃ無い。目が死んでるからかしら。何だか勿体無いとも思う。


 最高司祭様や皇帝陛下とはまた違った意味で思わずかしずきたくなる様な不思議なーーー。






 これが死『神』。

 

 



 私がボケッとしてる間に死神が空いた席に着いて、ジェームズが挨拶しているので、私も続けて名乗りを上げる。


 呆けてる場合では無い、皇家に有利になる様に話を持って行かないと。



 結果だけ言うと、全く持って無理でしたわ。

ジェームズがしゃしゃり出て来て、何故か恭介まで乗っかって来た。

 




「話が割れた。ジャンケンしましょう」



「望むところよ。じゃーんけーん」



「「ポンッ」」



 のぁぁあぁぁあああっ!!!?ま…負けたですって。ニヤリと笑ったジェームズの顔を憎らしげに見ていると、血統結界を展開された。




「貴方が思っているよりも、エデンは危ない」



「何ですって?」



「あの信仰心厚い最高司祭様が、ワザと皇帝陛下でジャンケンに負けて、神様の元を離れて世界会議に出席しなければならない位だ………ワザとでも皇帝陛下に負けるのは物凄く嫌みたいでしたがね。一緒に行くかと言われて真希、断ったんでしょう?」



「皇帝陛下が先に仰られたのよ。言われなくても私もお断りしたでしょうけどね。ジェームズこそ、変わりに行けばよかったのよ」



「残念。真希を取り返す最後のチャンスだったと、荒れていましーーー」



「すまんが、実の息子の前でそれ以上戯言は無しだ義理父上」


「母上のそう言う話は聞きたく無い」



「素直に神殿に入っていれば、最高司祭様も少しは心穏やかに過ごせたでしょうに。何時迄も『皇后』なんて地位に縋り付いて…みっともないな真希。貴方も落ちぶれたものだ」



「堪え性の無いジェームズが高魔力の娘をこさえなければ、私も最高司祭様も心穏やかに過ごせたのにね。何処かに貴方の隠し子の男児がいたら、親子共々抹殺されるでしょうけど…種を撒くときは気をつけあそばせ?貴方の子どもの洗礼式の前にジェームズのお葬式になんて参列したくないわよ」



 

 的確に人の心をエグって揺さぶりをかけて来るのが相変わらず上手い。

 あはは、オホホホホと言いながら、いつもの挨拶代わりの腹の探り合いは終了。既に疲れたわ…。


 話し合いは皮肉を交えながら、主導権はジェームズに譲り秘匿内容は神聖帝国が優位に進められる様、持って行こうと言う事になった。

 一旦条件を飲んだと見せかけて、他のお願い事を聞かざる様得ない状況に陥れるのが味噌だ。



「義理父上、水島指揮官に頭脳戦の話し合いは無理だと思うが?」



「あんな若造に負けるものか」



「いや、そもそも勝ち負け以前の問題だと思うが…恭兄、とりあえずほっとこう」



「?」


 息子達の言葉は気になるが…何故か哀れみの目を向けられた。


 ジェームズと私が色々謀略を仕掛ける準備の話し合いをあれこれ考える。

 しかし、死ぬ順番でまた揉めた……私は1番で言いと言ったが、全員に止められた。



「ジャンケンに負けたのは真希だ」



「あら、矢面に立つ為にここに来たのよ?国に1番不要なのは今現在私でしょうに」



「そこは水島指揮官に決めさせよう。過半数生き残るなら優先者を3人だけ大まかに決めれば何とかしてくれる筈だ。義理父上、母上、それでいいか?」



「まぁ、いいでしょう…ガチガチに決めても、あちらも作戦立案がやりずらいだろうし。良いですか真希?」



「そうね。それもアリね」










 死神を天幕に呼び出し頭脳戦を仕掛けるも……返り討ちと言うか、何だか話しにもならない展開になった。

 神聖帝国の聖女の家系と皇家しか知らない国の機密を何故死神がサラッと混ぜ込んでいるのかしら?




「勘です」



「皇后様〜」



「嫌ですわ。ご自分で何とかなさい。私にも無理だから」



 国の重要機密を勘でさも当然の様に堂々と話してたの?うん、無理だから。本当無理だから。

 あのジェームズが思わず私に助けを求めて来るくらいの相手に私がどう対処しろと言うのよ。


 確かに、勝負にもならないわ…多分いや、絶対ジャンケンしても10回やって13回負けそうな理解出来ない相手。



 それから次々話される言葉もツッコミどころ満載で、思わず「いやこうなるでしょ」と素で言ってしまった。しかし、死神の返答の言葉も意味が分からない。


 息子達の謎の言葉を今更実感して、私は諦めて途中から思考を放棄したけど責めないで欲しい。





 話しは終わって、放心状態状態で天幕から出ると恭介は死神の「夜から雨」の言葉を微塵も疑って無いかの様に次々指示を出して行動。



 スライム風呂にテンション上がって、質素な夕食を取り、健介に言われた通りに割り当てられた天幕で休む。

 天幕の同室者は恭介と健介。流石に血の繋がりの無い異性の中で寝かせられ無いと皇帝陛下の命令である。

 本当はそれすらも嫌みたいだったが、ひとりで寝かせるよりはマシみたい。


 ベスティア国の様に女性軍人が在籍してればこんな事にはならなかったが…。

 私の世話をする侍女を連れて行くと言う提案は私自身が却下したのよ。


 魔力量が多くて身体がある程度頑丈な私はいいが、多分普通の女性には無理だわ。

 かと言って、私同様閉経を迎えた高齢の者を連れて来るのも、いざと言う時に足手まといになってしまう………足手まといは私ひとりで十分だわ。

 私の世話をする為だけの人手を割くなら、出来れば国の為に城壁結界の人員に回してもらいたい。



 貴族社会では考えられない行いをここ最近で…特に今日、随分としたなーと思って、硬い簡易式のベッドで横にり………頭と身体は疲れている筈なのに寝れない。寝返りをうっていると、何かが天幕に当たった音がした。





 ザーーーーーッ




 何かが断続的に当たったと思ったら、大雨が急に降り始めた。



「うひゃあっ!!?え?本当に雨???」



「母上、お休み下さい」



「死神の天気予報くらいで驚いていたらこの先身が持ちません。軍の朝は早い」



「夜会慣れした母上には大変かも知れませんが、日が沈む前に食事を済ませ、朝日と共に起きねばなりません。最初は寝れなくても、瞼を閉じて横になっていれば身体の疲れはある程度取れる」



「あ、はい……おやすみなさい」



「「おやすみなさい」」



 真っ暗闇の天幕の中、私は必死に瞼を閉じた。







「…は……え」



「……ん…?」



「母上、起床の時間だ」



 誰かに譲り起こされたと思ったら、軍服を着込んだ息子…髪が短いから恭介か。


 あれ?ああ、そうか私野営地にいるのか。

 身体が多少のギシギシするが、少しは寝れたと思う……眠いけどね。



 支度をもたもたしてたら、恭介がボタンを止めるのを手伝ってくれた。ごめんなさいね、手のかかる母親で。



「健介の方が手がかかったな、母上はまだマシな方だから気にするな。アイツは私にブーツの紐まで結ばせたからな」



「あら、そうなの…ふふふっ」



「すまない、母上。私が婿に行ったばかりに皆には苦労をかけている…」



「今までが聞き分け良すぎる位だったもの。偶には我儘言っても神様も罰はお与えにならないわ。恭介も結婚したてで、こんな所に駆り出されてこき使われて大変ね」



「こき使われてる自覚はあるが、軍の采配をまた任され、戦友たちと日々過ごさせて貰っていると……何だか昔に戻った様で全く苦では無い。義理父上とリリア殿には内緒にしてくれよ」



「口を滑らせない様に気をつけるわね」



「脅しているのか?悪い人だな……。母上とも、気軽にまた話せて嬉しいと思っているのもあるんだぞ?」



「その言葉に免じて内緒にしてあげるわね。また恭介と立場を気にせず話せて私も嬉しいわ」



 聖女の家系と皇家は昔から仲が悪い。

 国民には体外的に友好関係をアピールしているが、両家の心情的にはドッロドロのギッスギスだわ。


 私が下げ渡された話は、国民には最高司祭様の英断として語られている。


 子を身篭れない私を憂いて、せめて不自由無い良い家(皇家)に嫁ぐ様に指示を出し、最高司祭のお導きのお陰で私に次期皇帝を身篭る栄誉をとか何とか。

 神様の奇跡が私の身に降りかかった為に子どもが産まれた事になっている。



 実際には只の相性の問題だっただけの話しだが……無色の家系がカイザス国建国で一族のほぼ全てが神聖帝国を出て行った弊害がここに来て出て来ている。


 どんな魔力量の相手でも子がなせる可能性が有ると言う事で、神聖帝国に高魔力者を輩出すると共に近親婚の弊害を無くすためのワンクッションで、血を薄める役目も担って来た一族だ。抜けた穴は大きい。




 危険を犯してまでエルフ族の血を入れるのは、何も高魔力の神聖帝国人を増やす為だけでは無い。




 エルフ族は近親相姦による奇形児リスクが格段に低い種族だ。しかもーーー。




 エルフ族と無色の家系の者が混じると、そのリスクが限りなくゼロに近くなって行く。










 昔1度だけ見た、無色の家系歴代最高傑作と言われる橘家の金色に輝く髪を持つ男の顔を思い出そうとして…やめた。


 顔の作りは死神同様良い筈なのに何故か印象に残らないあの人は、目も金色に輝いていた気がする。今ではもう良く思い出せない。



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