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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
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274話




 ナロ元隊長を埋め終わる頃には、ジョゼフィーヌに乗ったオヤジが戻って来た。

 ひとつ目の井戸掘りの場所の特定が終わったらしい。竜人種のロックは道具と一緒にその場に置いて来たそうだ。



「オヤジ、分かりそうか?」



「大丈夫そうだな。何処まで出来るか分からんが、何とかするさ」



 その場でオヤジとは一旦別れた。これから物品と一緒に何往復かして井戸掘り組をロックが待機してる場所に送るそうだ。後で迎えに来てもらう約束をして、私はユリエルと共に徒歩で橋に向かった。














 橋に到着後ユリエルは、橋の真ん中まで来て、支柱を調べ始めた。

 座り込んで、ある部分をパカッと開けると中から複雑なパズルが出て来た。何度もやっているんだろう、ユリエルはそのままパズルを解いて…解き終わった所でまたパズル。



「3つある。でも、パズルはそんな大したヤツじゃ無いんだ」



 大した奴じゃ無いとは口で言っているが、ユリエルの目は真剣そのものだ。パズルが終わると、今度は問題文が出て来た。


 選択式の問題を全部で100問。



 終わった所で剥き出しの球体の魔石が出て来た。幾何学的な魔法陣が組み込んである。




「美しいな…」



「美しいだと?エグいの間違いだ。作成者の性格の悪さが滲み出てる……はぁ……ここまでは出来たんだ。でも、橋の設定解除は出来たが、肝心の罠の解除が出来ない。解除に失敗して橋を1本駄目にした」



 3本橋の1番右は罠解除に失敗したらカウントダウンが始まったらしい。

 ユリエルは急いで橋を渡り切った所で橋が爆破したそうだ。うわぁお。


 真ん中の橋は設定解除は出来たが、妨害工作にあって諦めたと。



「10分経つと、またパズルと問題分のやり直しだ」



 結界を展開させながら作業していたユリエルは、解いてる間にゴブリンが群がって100kg以上の落とし穴の罠に巻き込まれて海にドボン。



 魔道具や武器の一部が海中で消失、一部海水で駄目になった。防水仕様だが海水は受け付けなかったと。

 マジックバックは中に入った海水をダバダバ出して、中身は何とか無事らしい。


 懐中時計型の魔道具も一部機能停止で、こちらの2本橋に来てから修理したそうだ。



 周りが騒がしいんで、こちらの2本橋に来てから罠解除の手順を模索中。



「半日の縛りさえ無ければ……くそっ。カミュ許さない」



「あ、サミュエル・カミュ作か???道理で問題文が難解な訳だな」



 問題文の方は、間違えるとまたパズルからやり直しらしいな。パズルも問題文もランダム。確認しただけで、パズルは33パターン。問題文は10000問近く用意されてるらしい。



 たまに近寄る魔物を葬り去りながら、私はユリエルが見ている問題文を見てみた。エルフ族の古語で書かれたそれは、数学式の羅列が並んでいる。選択肢は10個。



 ユリエルは夜まで橋にいたが、一旦橋を出てまた中間の柱の前に陣取った。パカっと空いた所に灯りを照らして、高速で指を動かす。



「また初めからやり直しだ」



 球体の魔石は、ゆっくりと右に左に斜めに後ろや前に回っているらしい。

 全容を見るとしたら、高速でパズルと問題文を解いて観察するしか無い。



 魔石の魔法陣の全体が見えたら、今度は読み解き、魔法陣の何処を書き換えるか考え、考えがまとまったら次は半日滞在縛りの中で魔法陣を速攻で書き換え………罠解除させる気無いだろ。しかも、ハイルング王家の血が必要とか縛りが酷い。


 確かにこれはエルフ族でなければ無理だな。



 ナロ元隊長はこんなのに一日中付き合ってたのか。幾ら3本橋より魔物が少ないとは言え、フィールド上の橋なんで1日中だとかなりの数を狩らなきゃいけない。



「ユリエル、私は明日の夕方に野営地に帰る。人をつけるか?」



「………いや、もうニャン子みたいなのは見たくない。自分で何とかする」



「わかった。1年分の大まかな天気予報だ。雨の日は違う事をして欲しい」



「?分かった」



「ユリエル、1年が期日だ。それまでにここの2本橋を通れる様にしてくれ…じゃないと詰む」



「……分かった」



「後は、ハイルング国の貴族と渡をつけて欲しい」



 ものすっごい嫌そうな顔をしたが、嫌だとは言わなかった。始めに向かう城壁だけ指定して、後は候補地を幾つか上げておいた。


 私は途切れ途切れ話しながらたまに魔物を葬って、小さめの魔物からは魔石を抜き取りつつ、洗ってユリエルの横に置いておく。ユリエルは目線を前に固定しながら「ん」と返事をして、キリのいい所でマジックバックに入れていた。



 手渡すと海にドボンする可能性があるから。



 レーションで食事をして、魔道具から水を出して直接飲む。排泄物は海にバイバイだな。大きい方は海に流してから、そこら辺のスライムに綺麗にして貰った。うん、余り細かくは言わん、軍では常識だ。

 女性軍人が増えないのはコレの所為でもある……男でも最初は躊躇うからな。身体の構造上女の方は毎回なんで、不憫だと思う。


 長期間一箇所のフィールドで動けない場合はパンツの中にスライムを仕込んでオムツ代わりにもするからな。見張りの時とか私も良くお世話になった。

 上級持ちのスナイパー系やこだわりのある奴はわざわざマイスライムを常に持ち歩いてる位だが、私は野良で十分だ。



 軍に入ると、大体最初の方にスライムの使い方を教わる。

 今は学園の軍の選択授業や専門学校で丁寧に教えてくれるが、昔は実地で教えられたものだ…スライムを受け付けない者は大体最初の遠征訓練で挫折する。


 『自分のケツ位自分で拭ける様になって初めて半人前』と言うのが軍の常識だったな。因みに『他人にケツの拭き方を教えて初めて1人前』が昔のカイザス軍人の合言葉。学園上がりの今の若いのには通じないだろうがな。



 昔の考え方で言ったら、ユリエルは一生一人前どころか半人前にもなれない軍人だろうな。



 そんな軍人がこれから先も増えて行くのは時代の流れを感じるなー。と思いながら、いつもの様に世話になったスライムをそこら辺に放り投げて自前の魔道具で水を出して手を洗った。



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