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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
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271話



 半数を撤退させた所で、本格的な雨。数人肩を叩いてて送り出す。雨だから体重制限ランダム。何処で穴が開くか普通は分からない。



「行けるところまで頑張って欲しい」



「特大の貸しひとつだな。地獄で会おう」



「死神に選ばれるなんて光栄であります。続きの武勇は地獄で聞かせて欲しいな。」



「地獄で先に待ってるなー!頑張れよー」



「ヒャハーッッッ!?ひと暴れして来るやー!!!」



「水島指揮官ご武運を」



「またなっ!」



 撤退するかも者、残る物と各々近場の者に束の間の別れを告げて肩を叩かれた者は嬉しそうに駆けて行った。



「お前はもう少し付き合え。50回行ったらベスティア国側まで全速力で戻れ。私を追い越した125歩目辺りで大きく左に跳べ。不安だったら横を通り過ぎる時にタッチする。次に出す足が最初の1歩目だ」



「よろしく頼む。ご武運を」




「お前はもう一方の橋まで知らせに行って欲しい。落とし穴の事は考えなくていい。『ヒャハー』言ってる奴に巻き込まれるのを気をつけろ。橋を渡りきったら回避優先で行け。1度でも攻撃したら死ぬぞ。到着したら合図を送ってくれ。その先は彼方の指示に従って欲しい」



「了解。坊主、無理すんなよ」



「ああ、程々にしとく」



 絶対程々じゃ無いだろうって顔してるが、あえて言い返さなかった。考えるのにいっぱいいっぱいでな。



 全員送り出した所で、弓矢を筒に入るだけ入れて、残りはその場で全て消費してから私は立ち上がった。



 後ろに3歩。下がると目前に穴がポッカリ空いた。



「おー…なるほどなるほど」



 穴の先は真っ暗闇だが、海なんだろう。きっかり5秒で跡形もなく消え去った。



「なんとかなりそうだな……ふー……」




 肩の力を抜いて、息を吐き出してから程々の速度で歩いてハイルング国側に足を進めつつ、途中通り過ぎる者がいたので、手を出してタッチしてやる。



 私はピカピカ光っていた魔道具のスイッチを切って、目の前にいた2匹のゴブリンを素早く後ろに投げ。



 ゴブリンは悲鳴を上げながら、今しがた空いた穴に落ちて行った。うん、大丈夫そうだな。





 やって来るゴブリンを大きめのナイフで切りつけて投げつけたり、放置したり、少しずらした位置に押しやったり……今のところはまとめて仕留めてランダムに開く穴に先に置いとくのが効率いいな。


 大体数匹まとめて置いとくと、ほっといてもその内落ちるけどな。

 ちょっと暇だったんで色々やってみた。



 何匹か私を通過してベスティア国側に向かって行ったが、恐らくたどり着く前に落ちるだろう。

 まぁ、最悪橋を渡りきっても神聖帝国軍が待ち構えているんで、大した数じゃ無いし大丈夫。



 たまにピカピカ魔道具を光らせてゴブリンをわざと誘き寄せていると、もう一方の橋から合図が上がった。よかった。無事にたどり着いたのか。



 彼方も今頃戦闘中だろう。

 ゴブリンの約半数はあちらに任せたので、雨の2日間頑張って欲しい。




 たまに座って弓を放ち、矢を抜き取りつつ、これから開く穴の前でピカピカ身体を光らせておびきよせたり。



 少し休憩したくて小雨の時はベスティア国側に戻って、何人か行って来てと声をかけて交代してもらったり。トイレがな。後、食事も…動いてるんで腹が減るし、幾ら夏でも雨なんでな。体力奪われる。



 2度程休憩して、いつの間にか朝になり、昼は大雨で途中雷が橋中腹にガンガン落ちたり。

 その間休憩出来てよかった。あちらも流石にこの大雨で動けない様だ。たまにガッツのあるゴブリンが来るんで、それはベスティア国側の橋前で仕留めた。


 雨は小雨だが、風が強い午後。何人か羽馬に乗って、ゴブリンの巣をつつきに行かせた。半数は現地に降ろして、半数は空の羽馬を先導して戻って来た。



 穴の開いた城壁に、ウジャウジャしてるゴブリン目掛けて元気な高齢者は嬉々として乗り込んで行ったらしい。



 夕方、巣に行かせた者達が超大量のゴブリンを引き連れて橋まで戻って来た…元気だなー。スキップしてるのもいるん位だ。高齢者は余裕しゃくしゃくだが、追っかけて来るゴブリンが鬼の形相で怖い。相当な煽り加減である。





 雨足が強くなって来た………さて、私はまた頑張るか。




 私は次の日の朝方までゴブリンを開いた穴にこれでもかと落としまくった。




 昼頃にはハイルング国側に張っていたもう片方の橋前の陣も撤退作業が終了したので、私たちは羽馬とほぼほぼ徒歩で野営地に戻って来た。



 皆んなビッショビショなんでとりあえず着替えと、怪我した者は処置を受け、神聖帝国に防衛戦、ベスティア国に橋以外のハイルング国島地に日帰りの遊撃を任せて、その後は泥の様に眠った。



 気がついたら、次の日の昼過ぎだった。

 部下が用意してくれた朝食兼昼食を軽くすませて、井戸掘り組に声を掛けて野営地の外に向かう。


 ちょうど籠を引っ掛けたジョゼフィーヌが降り立った所で朝の挨拶を済ませて、親父から書類の入ったケースを受け取る。



 荷物は一旦その場で確認作業だ。


 私は大輔の手紙を一旦無視して、他の書類に目を通す。





「オヤジ、暫く私の天幕で寝て来ていいぞ、ジョゼフィーヌは相手しとく。誰か案内してやってくれ」



「ん、助かる」



「了解しました」



 向こうも時間差で雨だったんで、恐らくジョゼフィーヌの様子をちょいちょい心配で見に行ったオヤジも疲れてるんだろう。文句も言わずに素直に寝に行った。




 その間私は至福の時間を過ごしたとだけ言っておく。あー…ワイバーンやっぱ欲しいな。



 オヤジが起きて来て、「オレのジョゼフィーヌだからー!!!離れろバカ息子!?」と言われるまで、私とジョゼフィーヌのイチャイチャは続いた。



 


 大輔の手紙の返事は『私は無傷だから心配するな』とだけ既に返しておいてあるので問題ない。




 戦死者10名

 重傷者10名

 




 ゴブリンを討ち取った数に対して多いと思うか、少ないと思うかは人それぞれだと思う。



 死んだのは事前の出立前や戦場で私が肩を叩いた者達だ。



 個人的には多いなと思うし、私の無傷の代償は少ない様で実はデカい。










 デカい犠牲を払って出来た時間稼ぎの褒賞は、問題児の部下の顔を見に行こうと思う。




 私は1週間分の天気予報の追加と、各自に指示を出して最前線を後にした。







 大輔にはまた事後報告だな。すまん。



 

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