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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
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253話



「水島、起きろ」




「………終わったか?失礼。終わりましたか?」




「ああ、私が第1隊長に就任した。宜しくな水島副隊長」




「こちらこそよろしくお願いします。大輔隊長」




 起き抜けに伸びと大きなあくびをして、会議室から一番近い仮眠室のベッドから出る。


 これから先は大輔が使う事になるな…なんて思いながら身支度を軽く済ませて、作戦司令本部の会議室に足を踏み入れた。




「人が少ない…ですね」




「もう夕方だ。最低人数よりやや多めに人を残して他は帰らせた。水島も書類関係に目を通したら今日だけは帰っていい。私は明日午後休みをもらう」




「わかりました。ありがとうございます」




 報告書と今日の会議の議事録の束に目を通す。


 うん、大輔だとは思えないゴリ押しな手段で私の隊長職辞任をもぎ取ってくれた様だ。

 それくらいしないと駄目だったと言う事か……予想より私想いの良い部下達を持ったな。



 私が第1隊長を辞めるにはまず軍の規律改正から始めなければいけなかった。

 隊長職の強制任命権はそのままだが、第1隊長職の定年制度の導入と、希望があれば人事移動後そのまま軍に残れる様にはしてくれたみたいだ。

 私の場合は残る事を希望して、副隊長に降格扱いだが………まぁ、役職がそれ以上は無いからな。どっち道降格しか無い。

 役職手当の分給料はガクッと減るが、仕事量もその分減った。



 下っ端の部下がそっとサンドイッチと飲み物を差し出してくれたので、礼を言ってから食べ始める。

 昼食も食べずに会議室から仮眠室に移動させてもらったからな。久しぶりに良く寝た。



 朝食を食べながら朝イチの会議に出席した私は、腹が膨れてからは眠すぎて眠すぎて………結局大輔に仮眠室のベッドに放り投げられた。

 話しを聞いてると見せかけて、居眠りしてるのがバレて追い出されたとも言う。




「おー…ついでに50歳以上の元軍人の復帰も決まったのか。凄いですね。助かります」




「何人かは既に優先的に声をかけてる。明後日以降徐々に復帰者が増えるだろう」




 優先的に声をかけたと言うリストにズラッと並んだ見知った名前を見て、思わず苦笑いを浮かべた。




「これは……私は助かりますが、怒られそうですね」




「…………」




 何も答えなかっが、恐らく人選を最終的に決めた犯人は大輔だろうな。

 私の元同期やら先輩やら仲の良かった後輩やら偏りすぎてて笑える。「何でもっと早く呼ばなかった」って言われるのが目に浮かぶ様だ。

 優先リストに上がらなかった奴らにも後で怒られるだろうな。



 しかも、軍人全員『遺書』の更新か。健康診断の時に毎年書いているが……若い者の意識改革か。

 急遽軍を辞める者が増えるだろうな……徴兵で結局呼び寄せる羽目になるので恥の上乗り行動になるだけだで多少の休みが増える感覚だな。



 嘆願書は……うん、見なかった事にして帰るか。







 会議室の者に挨拶してから、久しぶりの我が家に帰る為に下っ端部下に馬車を出してもらった。





 大通りに馬車が進み、農業都市の東門を通り過ぎてしばらくすると………まだ家じゃ無いんだが、馬車が止まった。うん、何だかやな予感がする。私は馬車から降りて御者台の部下2人に話しかけた。




「どうした?」




「水島隊長…すいません。馬が怖がって……駄目です。言う事聞きません」




「もう副隊長だ。ここからは歩いて行くからお前は本部に帰っていい。明日は東門まで迎えに来てくれ。ご苦労だったな」




「え?あ!ちょっと水島隊長っ!?」




 だから副隊長だって。まぁ、その内呼び方はなおるだろう。

 早足で我が家に向かうが………まぁ、そうなるわな。




「おー、早かったな!もっと遅くに帰って来るかと思ったぞ」




「オヤジ………捨ててこいとは言わないから、私の嫁を困らせる様な事はしないでくれ」





「軍の羽馬の寝床や高齢者施設だと受け入れが出来ないと言われてな。もう少し慣れればフィールドで放し飼い出来るんだが………いや、その……すまん。そんな怖い顔するな」




 「グガァー」




「はいはい、はじめまして。お前に怒ったんじゃ無い。お前の………オヤジ、コイツ名前なんて言うんだ?」




「うーわー。我が息子ながらちょっとジェラシー…連れて来るのも、手懐けるの苦労したのに……信じらんない……ムカつく!?」



 ワイバーンにおそらく挨拶されたんで、返事してから撫でていたら鬼の形相でオヤジに睨まれた。

 テイム契約してるから人っ懐っこいと思ったら違うらしい。名前はジョセフィーヌか。よろしくな。




「オヤジ、ジョセフィーヌ足の傷がちょっと痛いみたいだぞ。寝床が合わないんじゃ無いか?若い個体みたいだからまだ鱗がしっかりしてないみたいだな……ははは。それと小腹が空いてるみたいだがーーー」




「本当やめて、頼むから俺に世話させて本当勘弁して。ワイバーン見て興奮してるのは分かるが、そのムカつく笑い方やめろ。ジョセフィーヌは俺とテイム契約してるんだっ!?ジョゼフィーヌ!飯に行くぞ!!」




 オヤジはジョセフィーヌの鞍に跨って手綱を引いたが……無視して私に更に近づいて来る。

 私のおでこにジョセフィーヌの冷んやりした頭をコツンと当てられた。感動。




「ちょっ!!ジョゼフィーヌ酷い!まだ俺にもそんな事してくれた事無いのにーー…うぁわっ!?」




 力強く飛び立つオヤジとジョセフィーヌを暫く眺めて……かっこいいなぁー。私もちょっとワイバーン欲しくなった。てか、もう乗れるのか凄いなオヤジ。


 本当はオヤジと一緒に羽馬部隊にずっといたかったが、入隊したての頃しか乗れなかったんだよな。体重制限に引っかかって。


 成長して鍛えて筋肉の付きが良くてな…仕方ない。オヤジは人族だが、母親が獣人族だったんで、そっちの血が思ったより出ただけだ。獣の耳も尻尾も生えなかったんで分類は人族にしたんだがな。


 ワイバーンなら体重制限とかないだろうな〜………………家に入るか。






「お帰りなさい。お夕飯出来てますよ」




「ただいま。オヤジが迷惑かけたみたいだな…すまなかった」




「流石にビックリはしましたけど、迷惑じゃありませんよ。ワイバーンって目が綺麗で可愛いんですね」




「…………お前のが可愛い」




 あーもー…嫁最高。あの凶悪なワイバーンを可愛いとか言ってしまえるオレの嫁が可愛い。

 普通のご婦人は生きたワイバーンなんて目の当たりにしたら恐怖の余り失神するレベルだから。



 嫁の顔を見たら、職場で緊張の連続を強いられていた体と心が徐々に解きほぐれて行くのを感じた。


 久しぶりの嫁に会えた喜びと愛しさが込み上げてきて、夕飯では無く代わりにその場で嫁を貪り食ったのは仕方ないと思う。




 今日も私の嫁さんは最高に可愛い。



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