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つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
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235話


 最初に沈黙を破ったのは落とし物を届けてくれた猫種。



「私は辞表を出した父を連れ戻す為に後を追いましたが、南の橋付近で人質を取ってハイルング国に逃走。父は犯罪者になり強制的に辞職受理。追跡は諦めました」




 その後数日様子を見たが、ニャンニャンこと元宰相がハイルング国側から羽馬に乗り、出て来たのを捕らえる為に追跡を開始。


 ベスティア国から神聖帝国の飛び地に空から侵入。猫種の息子は海からその様子を確認。

 途中元宰相の羽馬が墜落した為徒歩で移動して、カイザス国に足を踏み入れた所で捕らえたそうだ。




「犯罪者は息絶えていたため、盛大に焼いてカイザス国に埋めさせて貰いました」




「魔物の脅威がある為、神聖帝国の土地に許可を出さなくてもベスティア国民が入れる様に計らいます。緊急伝令以外も入れます」




「ありがとうございます」




「カール様に再度出頭命令を再度出しましょうよ!何故来ないんだあの方はっ!?」




「エルフ族大使館に帰られました。出勤まで誰も入るなと既に断られたています」




「……一応手紙を出せ」




 幾つか話し合いをしていると、花子殿が話のキリのいい所で隣の部屋のゴブリンを起こそうと言う話しになった。


 会議室に居た面々と再び魔女が同席した所で、フルプレートアーマを装着した花子殿が色々な武器を持って結界内に入り、いきなりゴブリンを蹴り上げる。




「キシャァァァッ!!?」




「ゴブリンはこちらが攻撃すると襲って来ますの。初期のゴブリンの攻撃パターンは『噛み付き』もしくは『引っ掻き』ですわね」




 片手でゴブリンをいなしながら、ビデオカメラを回しているが…確かにそんなに強くは無い。ゴブリンは単体ならさほど強くはないからな。




「二足歩行ですのでちょっと対人戦に近いですが背が低いので、普通の魔物と勝手が違う所が特徴ですわね。最初は戦闘に慣れるまでは少々大変かも知れませんわ。普通のナイフで斬りつけて見ましょう」




「?キシャァァァッッッ!!!」




「皮膚は人よりもやや硬い位ですの。再生能力もそんなにありませんわ。急所も人と代わりません。脳、心臓、肺を2つ潰せば死にますし、首をかき切って出欠多量や窒素、ショック死色々ございますわね。ただ、ご覧の通り的が小さいので、よっぽどの名手で無い限り弓でゴブリン少数を攻撃するのは余り向かないかも知れませんわ。武装すれば牙や爪の攻撃も通りませんが、ゴブリンが群がってこちらが圧死や窒息する場合がございますの」




 ゴブリンの腕をナイフで切りつけたり、弓、槍、斧、棍棒、盾その他、防御や攻撃をいなしたり、攻撃してみたり。最終的には何もせずにアーマーを齧らせていた…ゴブリンの爪が割れたり、牙が欠けた。




「魔女様、ゴブリンに回復をお願いしますの」




「『治癒』」




 所々で魔女がゴブリンの治療に入り、次々武器で攻撃して行く。

 次は元軍属の高齢者が攻撃をいなしてみたり、死なない程度に反撃。


 ゴブリンの元気が無くなった所で肉と水を与えて暫く観察。ゴブリンは周りの者を威嚇しながら肉を食べている。直ぐに寝る事は無かった。




「ここが安全な巣では無いと気がついたんですわ。眠くなれば多分寝落ちしますの…ゴブリンの検査結果が出ましたので、隣の会議室に移動しましょう」




 医療班の代表者は第2医務室から出ていたが、魔女も同席したいと言う事で許可を出した。





「『ヌシ』はメスですわね」




「ふー…………」




 私は思わず、天を仰いで息を吐いた。

 花子殿が準備した資料は『ヌシ』がオスの場合を想定していたが、メスの方もちゃんと準備がされていた。余り碌な事が書いて無い。


 初期はオスの『ヌシ』よりは数が少ないが、ゴブリンの雌が産まれる確率が高くなるからジワジワと数が増えてくる。停滞期が無い。停滞期が無い代わりに最後に『終末期』と言う物がある。




「『ヌシ』のメスは文献が非常に少ないですの。私、始めは大きめなゴブリンを運んでくれたと思っておりましの。しかし、違いましたのね…初期のゴブリンでこの大きさなら、『ヌシ』は相当な高魔力保持者ですわ。検体検査の結果を見る限りですと、普通のエルフ族ではございませんわね…少なくとも700歳以上ですわ。『ヌシ』の大元のお相手も相当な魔力保持者だと思われますの」 




「ここまで酷い事例は見たことも聞いた事も無い」と言葉を締め括り、花子殿は黙り込んで検体データを見ながら、暫く考え込んでしまった。その間各自資料にもう一度目を通す。




 『ヌシ』がメスのゴブリンの増殖スピードは前期、中期、後期、終末期と4段階に分かれる。


時期   出始め個体   増殖


前期   ゴブリン    少ない

中期   ホフゴブリン種 普通

後期   オーク種    多い

終末期  オーガ種    大量



 

 考え込んでいた花子殿が仮定の話しをし始めた。




「これだけ『ヌシ』のメスが高魔力保持者ですと、幾らゴブリンでも孕むのは容易くありませんわ。その生まれたゴブリンも恐らく、普通のゴブリンよりは生殖能力は多少落ちますの。代わりに強い個体が生まれる可能性がございますわ……最悪、終末期の先があるかもしれませんの」




 共通して『ヌシ』は数を増やす為に先に弱い個体を大量に生み出す。

 ある程度生み出したら、徐々にゴブリンを腹に留め置く期間を長く設け、魔力を貯めて強いゴブリンの個体を生み出すのが普通らしい。




 『ヌシ』がオスの場合は、孕ませる相手が複数いると仮定すると、増殖スピードはメスの比では無い。



 しかし、『ヌシ』がメスの場合はオスに比べてゴブリンの雌を多く生み出すので、後からじわじわ数が増えて大変な事になる。




「後、落とし物の中身を確認したあくまでも…本当に仮定の話しになりますが、もしかしたら先に強い個体を生んだのかも知れませんわ。しかも、『ヌシ』が城壁結界の中で」




 エルフ族は単体でも強い。城壁結界の張られた所を攻め落とすのは容易では無い。


 これだけ高魔力の『ヌシ』なら、普通よりは短期間でゴブリン族オーク種、もしくはオーガ種も生み出せるだろろうと。



「ゴブリン族は強くなればある程度知能も発達して行きますのよ。統率の取れたゴブリンなら、普通のゴブリンよりも厄介ですもの。もしくは、こちらの方が可能性が高いですわね。余り考えたくは無いのですが、エルフ族の事を考えますとあり得るかもしれませんの……」




 何となく、その先は私も予測はついた。

 恐らくゴブリンを孕んだと知りながら、同族のエルフ族をわざと城壁の中に入れてしまったんだろう。




 エルフ族は愛が重いが、同族愛も結構重い。




「最悪だ………」




 誰かの呟きに、皆沈黙で「是」と答えた。



 


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