表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つばめと学ぶ異世界生活事情  作者: とりあえずごはん(・ω・)
第四章 ゴブリンのスタンピード編
273/499

229話




「エデンの魔族は……失礼しましたわ。エデンには魔族はいませんので、仮定のお話しとお考え下さいね。一応、発言を許可していただけますかしら?」




「許す」




 エデンには獣人族に紛れて魔族が生活しているのは暗黙の了解だ。


 学者の話しだと種類にもよるが、エルフ族より高魔力で身体の作りが頑丈な魔族が囚われると長期に渡ってゴブリンを生み出し続ける事が可能で、更に厄介なのがゴブリンの生態だ。




「これからお食事される方には非常に言いづらいお話しですが…ゴブリンって攫った女性に自分の食事を分けてくれる迷惑な魔物ですの。主に魔物の肉ですが、好物は魔力豊富な『人類』ですもの。魔族とは食事の好みがとっても合いますわよね………あら、失礼。食後の方にもよろしく無いお話しでしたわね」




 運悪くやって来た伝達役が、内容も伝えずに口元を押さえて外に出て行った。きっとトイレに駆け込んだんだろう。




「部下を見て来ても良いでしょうか?伝達内容を聞いて来ます」




「処罰はしなくていいが、当分伝達役からは外してやれ」




「ご配慮感謝します」




「あら、ごめんなさいね。でも、この程度のお話もダメなら今後はお部屋に入らない方が良いかもしれませんわ……お話しの続きもそうですが、ゴブリンのサンプルが届きましたら、皆様に解剖に立会っていただきたいので。」




「それは有難い話しだな」




 獣人族狼種、蜥蜴とかげ種などに紛れてエデンには主に魔族人狼種と竜人種が居る。他も居るが、数が多いのはこの2種類。


 主に『つがい』と呼ばれる相性の良い相手を誘拐して囲い込む習性があるのが問題視されているが………人を食う奴も実はいる。エデンでは殺人になるが、表沙汰にはなっていない。



 エデンに定住の際は番抑制と避妊の魔道具を埋め込むなどの措置が義務付けられている。


 産まれた子どもも体内に魔石が確認されたら義務で埋め込まれる。それが嫌で、別大陸に移り住む者もいるが。 





「よかったですわー…避妊の魔道具は埋め込んでいるのね。それを聞いて安心しました。仮定の話しですけどね。……それでは、鳥種優先ですわね。でも、そもそも獣人族全体がゴブリンの特殊個体が生まれやすい種族ですので、充分ご注意下さいね」



 伝達内容は別室で商人から酒を大量に買って、ハイルング国に順次輸送出来る目処が立ったと言う物だった。



 その後は初期、中期、停滞期、後期の話しや注意点をサッとしてもらう。


 指示を出しながら各自順番に小休憩。ベスティア国の羽馬でやって来る後続の伝令に備える事にした。


 学者の話しの続きはまた伝令が来た後だ。











「ベスティア国側から南に見てハイルング国との間に海を挟んで3本橋が掛かっていますが、私が目視で確認した所、ハイルング国側にゴブリンが二百匹以上居ました。後、ハイルング国の城壁の1つが城壁結界が消えていて……ゴブリンと交戦中。西の2本の橋はゴブリンはいません。他の城壁内部は城壁結界が展開されていて、中の様子は伺えませんでしたが、場所によってはゴブリンが漏れて出て来てました。ハイルング国側からベスティア国に援軍要請無いため、王都がある『島地』には上陸不可。……1時間後に王宮に戻る予定なんで、伝言あったら持って行きます。後、先に来た鳥種の奴は1日休ませてやって下さい。飛ぶのは速いですが回復が追いつかなくて。もし良ければ速達の手段にこちらに滞在させるのも有りかな?卵はゆで卵じゃ無ければ食える奴ですから、そんなに食事に気は使わなくて大丈夫です」





「報告感謝する。後で密書を届けて貰う。あの若い奴は少々借り受けると王様に伝えてくれ。食事を用意させるので、好きなだけ食べて行って欲しい」




「ありがとうございます。昨日の夜から何も食って無くて倒れそうだったんです」





 現在は夕方だ…流石獣人族タフだな。幾つか肉でも土産に持たせよう。



 後続の正式な援軍要請書簡を持った伝令の話を聞いて、とりあえずの密書を作成。


 作戦本部をカイザス国に設定したい事や学者が用意したゴブリンの生態資料、具体的な今後の対策。船を使って軍を派遣するなどなど。

 後は、やはりサンプルを送って貰おう。冷蔵で配達お願いします……と。




「ゴブリンがこちらに来るまで、近隣魔物の肉を狩ってしまおう。数がある程度揃ったら、高級用に切り替え全て保存に回せ。肉の生産率を上げる。特に鶏を扱っている所に話をつけろ。学者、ゴブリンの移動速度はどの程度だ?」




「私、学者ではございませんのよ?『お茶屋の娘』とお呼び下さいね。もしくは『花子』でも構いませんわ。ゴブリンの移動速度は初期の弱い個体ですとそんなに早くはございません。近い南の橋から来たとして、ごはんと睡眠を取りながら真っ直ぐこのカイザス国に向かうとなると……約5ヶ月後。」




「『花子殿』と呼ばせてもらおう。現時点を持って軍属と元軍人の定年退職者に資格の限定解除命令。1ヶ月後に全国民にフィールド限定の解除命令を出す。定年退職者の希望者は2日以降に復帰を許可。第3隊長…受け入れ体制が出来たら一緒に肉狩りに参加させろ、恐らくゴブリンの騒ぎでこちらに逃げてくる魔物が出て来る。カイザス国近辺はなるべく先に狩ってしまおう。明日の朝に国の全ての城壁に1回目の緊急放送を流す、内容の詳細はこれから吟味。1ヶ月後に海から船を使って軍を派遣する。学園都市の中級魔道具技師以上1名に出頭要請」





「私、中級魔道具技師免許持ちですのよ。どうかしら?」





「…………中級魔道具技師の出頭要請を取り消す。」





 自称『お茶屋の娘』の調査報告にズラッと並んだ免許・資格一覧にもう一度目を通して「コイツ本当に人族か?」と再び思いながら、命令撤回の言葉を口にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ