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226.5 ジョン6



「美味しい…」



 食事会当日。

 桃で作られたシャーベットを口にして、私は思わず呟いた。


 その前の食事も彩り豊かなサラダや野菜とチーズにパンだけだと言うのに濃厚な味わいのスープ、半身に切られた…海から運んで来たと言う伊勢海老も美味しかったが、シャーベットは格別だ。


 おかわりを3回もしてしまった……マリーに習って一通り食べてからまたお代わりさせて貰おう。


 コース料理を食べ終わり、おかわりタイムに突入…よかった、私より全然食べてる皆さん。


 また桃のシャーベットをお代わりするのは少し恥ずかしいと思っていたが、お孫様が凄い量を頼んでいたので羞恥心は何処かに消え失せた。

 しかも、シャーベットに生の桃が追加されている……地味に嬉しい。



 昼食も終了して、庭に出れると言う部屋に移動。

 他種族との交流は今まであまり無かったので心配だったが、幸いマリーが『白虎姫』のお子様と仲良くなったのでそんなに苦も無くコミュニケーションが取れた。


 それにしても皆様お強い。マリーいつの間にそんなに………。




「子どもの成長って早いですね…」




「あっと言う間に大きくなって行きますよね。健介様の訓練はとても良い様だ。マリー様は将来有望ですね…うちの子も負けてられません」




「ふふっマリーも負けませんよ」




 きっと健介様がこの先も鍛えてくれるだろう………私が居なくても立派に育ててくれる筈。





 夕方になり、お別れの挨拶をマリーがする。


 健介様が『白虎姫』…ウルスラのお子様方に何やら話をしていた。



「国の最重要機密の話し合いに、其方らの母君と父君を今夜お借りした。極秘任務なので外部には漏らしてはいけない。口外しないと守れるか?」




「「うん!お友達にもナイショにする!」」




「良い返事だ。協力に感謝する」




 神聖帝国式の敬礼した健介様の真似をして、ウルスラのお子様達も拙い敬礼を返した。

 事情を知らない大人は微笑ましそうにその光景を見ていたが、健介様の目は本気ガチだった。


 未成年は解散となり、私達もマリーを皇后様に預けて元の会場に戻る。あれ?




「もうお屋敷に向かうのですか?」




「伴侶殿にチーズの入った卵焼きを食べさせたい。アレはとても旨いんだ」




 会場に入ると既に食事の提供は開始されていたが、健介様が言っていた卵焼きは無かった。健介様は隣で何やら嘆いている。



 巫女の家系の管理地でも出て来た事はあるが、チーズの入った物は食べた事は無かったな。




「厨房に問い合わせして参ります。少々お待ち下さい」




「すみません、ありがとうございます」




 暫くすると、湯気の上がる卵焼きがテーブルに並び始めた。私は健介様が薦めてくれた卵焼きを箸で摘んで口に運んでみる。




「……美味しい」




「そうだろう」




 それからは「この文字はつばめの字だ。絶対直接焼いている」のユリエル様のお言葉に会場に居たメンバーは卵焼きに殺到した。


 3回目のお代わりを要求した所で『ライブキッチン』と書かれた会場スペースに料理人が配置され、オムレツの提供が始まった。




「料理ってこうやって作られてたんですね……知らなかった」




 神殿に居た時はもちろん、管理地に引越してからも出来た物を食べていたので、不躾だとは思ったがオムレツの料理工程を見学させて貰った。



 その後は揚げ物の字が神様の養女様だと発見した方の合図に皆が料理に殺到。私も一通りいただいたが、どれも美味しい。


 私の野菜のかき揚げには玉ねぎととうもろこしが入っていた。他の方の話しだと、どうやら具材が微妙に違うらしい。

 次に出て来た魅惑のバター醤油味のポテトが最高。




「大変申し訳ございません。つばめ様は立て続けの揚げ物提供で身体が火照って、現在小休憩中でございます。今暫くお待ち下さい。代わりにデザート類の追加をいたしますので良ければ皆様ご賞味下さい」




 そう言えば甘い物はまだ食べていなかったな?と思って足を運び暫くはデザートコーナーから動けない羽目になった。どれも最高です。ケーキもタルト美味しい。


 その後数々の料理を食べて、もしかしたら、美味しい物を食べるのはこれで最後かも知れないと思い始めた頃、最後の大詰めだとばかりに甘い物がいっぱい出て来た。

 食べ納めだ、よし限界まで詰め込もうかな。




「何だか先程から元気が無い様に見えますが、大丈夫ですか?悩み事なら聞きますよ?」




 ウルスラに声をかけられたが、「私はもう直ぐ死ぬんです」なんて言えない。

 何て誤魔化そうかな?と思って咄嗟に口に出た言葉に私は後で後悔する羽目になった。




「健介様に閨に侍る事を許したら、断られてしまって。代わりにマリーと3人仲良く添い寝をする事になりました」




 その言葉に近くに居た尻尾が付いてる獣人族の男性が盛大にムセた。

 小声で話したつもりだったが、どうやら聞かれてしまった様だ…ハ…ハズカシイィィィィ。




「………防音の結界を展開する。少し離れよう」




 またまた近くに居たユリエル様とウルスラに会場の隅まで連行されて、根掘り葉掘り聞かれた。




「私はいつも押せ押せですが、ユリエル長官はどうされてますか?」




「………最近はベッドで待ちの姿勢だな」




「そうですか………」




 私の言葉にウルスラさんは「援軍を頼んで来る」と言って出て行ってしまった。



 現れたのは年配の人族女性と魔女様………まじょさま???????




「あら、随分楽しそうな内緒話ししてるみたいね?混ぜて貰えて嬉しいわ」




 元『巫女』皐月様。

 『巫女』職を賜わったのにも関わらず、大地神教巫女派から脱退し食肉と禁酒の規律を破った数奇な鬼の血を持つ者。


 大地神教を抜けるにあたって『巫女』職を返上し『魔女』の称号を与えられた……神聖帝国では敵に回したく無いカイザス国民No.1である。


 因みにNo.2は隣で結界を張っていらっしゃる…『サミュエル・カミュの孫』ユリエル様だ。



 私は今日死ぬかも知れない。姉上、マリーごめん。




補足


ジョンの中ではコンスタンティンは神様なんで、国民だと思われてません。別格扱いです。



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