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214話




 健介さんは懐中時計を取り出して、操作した後に指輪を外して何やら指輪から針の様な物を出しいた。指に針を刺して、懐中時計の内側に血を垂らし擦り付けている。


 赤い薄い膜が懐中時計から展開された。




「………血統結界か。興味深いな」




「分析するな。ユリエルの張っている物に比べれば玩具レベルだろうが、一応国の機密に触れる話はこの結界を展開する規則だ。不便だと笑えばいい」




「……やはり精度はイマイチだが、魔力消費を抑えるには中々良さそうな………ふむ」




「だから分析するなと言っている。ヤメロ馬鹿」




 2人で戯れあっている隙に、鍋の中身の減りが凄い。

 唐揚げ食べるか聞いたら、鈴木さんとユリエルさん以外食べるとの事で予備の唐揚げ用の肉を揚げる事にした。




「カール様は本当にハイエルフ種なのか?」




「……恐らくとしか言えないが。違うのか?」




「皐月様は『巫女の家系』の始祖の娘だ。年齢は千を越えている。老化が始まっていないなら、カール様は魔石喰らいなのかも知れない」




「………そうか」




「ユリエルは普通のエルフ族だろう。もしかして、カール様より寿命が短い可能性がある。『白虎姫』の伴侶の前で言うのははばかれるが、既に婚姻を結んでいるので言わせてもらう。長寿種に寿命の短い方が迫るのは余りに酷な話しだと私は思う。国に引き篭もる筈のエルフ族だが、愛が重いと話しが外に漏れる位には有名だ………諦めろ」




「私の場合は、ウルスラが死んだら次を探せと言われています。探す気はないですが、奇跡的に酒蔵から入り婿を希望されたら、肉屋を辞めて結婚するかも知れませんけどね…エルフ族の方には無理な生き方かも知れませんね」




「…………そうか」




「生涯共にするのが叶わぬのなら、他に御内密にされている理由もユリエル様にお話し出来ないのやも知れません。しかし………んー…あーあーゴホンッ。私め独り言を言いますので、皆様はお食事とお酒をお楽しみ下さいませ。」




「唐揚げ揚がりました。タルタルソース付けても美味しいですよ」




「え?どのソースだ」




「美味しいわー…この『タルタルソース』最高ね」




「私めの亡くなった父ですが、母に対して異常な位の愛情を持っておりました。幼い私めに嫉妬する位で、母に言わせると『ヤンデレ』と言うそうで………」




「コレは旨いな。辛い油とも良く合う」




「ちょっとその唐辛子オイルくれよ……辛っ!!?舌がビリビリする!」




「見た限りだと、カール様も『ヤンデレ』な気がします」






 しーーーーん






「………本当か?」




「独り言を続けますと、あくまでも勘で御座いますが、父と同じ臭いが穂かに…本人は隠している様ですが、長年父と過ごしました私めが思うに、アレは父と同種だと思われます。相当な狐か狸で御座いますので、愚鈍な母は気づいて無い様子ですが。」




「商才のある『鬼の商人』が言うと説得力があるな」




「更に独り言になりますが……『ヤンデレ』と言うのはある意味とてつも無く一途で御座います。幾ら長寿種でも、商売娼婦や男娼では無い同じお相手を、100年以上に渡って肉体関係を築くのは無理な様に存じますね。何処ぞの『推定隠れヤンデレ』の元を離れてほっつき歩いている、この食事会主催者様の今後の身の安全が私めは心配で御座います。独り言は終了ですが、お帰りの際は皆様お気をつけ下さいませ」





「………何故私の身の安全なんだ?」




「独り言を再開させますと、母は父から監禁、軟禁、調き……若い娘さんがいらっしゃる前ではちょっと話せない様な事をされておりました。例を上げますと、店の店員の男性に母が話しかけましたら、夫婦の部屋から数週間から1年母が出て来なかった事が度々有りました。精神面も強い方ですが、治癒力高い筈の母が部屋からヤツれて出て来て『死ぬかと思った』と言うのが、毎度セットで御座います。結婚したら逃げられませんので、婚姻を結ぶ際は慎重に。独り言を終了しても宜しいでしょうか?私めも何処ぞの狐か狸に殺されたくは御座いませんので」




「………あぁ、独り言に感謝して良いのか嘆けば良いのかよく分からない」




「熱烈通り越してヤバイ人種ね『ヤンデレ』。怖いわぁー」




「ユリエル隊長ドンマイとしか言えない某…」




「問題は解決か?」




「新たな問題が発生したと思います。ウルスラも嫉妬深い方ですがそこまでは…」




 皐月先生の思わぬ夫婦生活を聞いてしまったけど、ちょっとユリエルさんの今後が心配になって来たよ。


 私は〆の雑炊を和風鍋で作りながらどうしよっかなと考える。




「トマト鍋の方ニンニク入れて辛くしても大丈夫ですか?」




 皆んな大丈夫との事なのでスープだけになった鍋にニンニクスライスと一味唐辛子を加えて海老の頭を投入。


 先に雑炊の方を食べて貰って、トマト鍋の方は海老の頭を取り出して、代わりにニョッキとチーズを追加して召し上がれ。




「うめぇなっ!」




「具材の旨味が出たスープにこのモチモチしたのがたまらないわ」




「私めは雑炊が大変気に入りました」




「何を食べたが報告したら嫁に怒られそうです。美味しいです」




「つばめとやら、相談なんだが」




「はい、何ですか?チーズ追加しますか?」




「チーズ追加?くれ。そうじゃ無くて……いや、チーズは欲しいのだが……はぁー………お前俺の家の料理人にならないか?」




「………駄目だ」




「それはお許し出来ません」




 何故かユリエルさんと鈴木さんが答えたけど、私は健介さんに事情を説明した。




「すいません。私来年の4月になったら学校に通って、その後自分の店をオープンさせるので無理です」




「それは残念だ。気が変わったらいつでも言ってくれ」




 健介さんは魔道具の展開を解いて、酒の注文をしていた。それに続く者続出。皆んなまだ飲むの?




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