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202話



 最近朝市に来ているので、顔見知りも出来た。そのひとりがお粥の屋台の人。




「今日はどうする?」




「大盛りで。あと、お米1袋下さい」




「はい、お待ち」




 自炊もするが、やっぱり外で食べるのも美味しいよね。

 今日も隣の野菜売りの屋台でトマトを買い、お粥を啜りながらトマトをむしゃむしゃ食べる。後でネギとか買って行こう。今日は水曜日なので、アルバイトの子いないなー。



 最近は頻繁に買い物が出来るので、冷凍ストックの野菜が減らない。寧ろ急な来客用に備えて、増えていく一方。


 お次は串焼きの屋台。




「今日は熊のにーさんいないのかい?」




「すいません、今日はひとりなんです」




 クマさんが一緒だと大量に買うので、売り上げが良いと前に喜んでいたな…串焼きの屋台の人が寂しがってたと伝えておこう。そしたら、朝ごはん一緒に食べてくれる口実になりそう。




 

 米とネギと幾つかの野菜を携えて、本日は帰宅。帰り道でユリエルさんと鉢合わせしたが、あちらはこれからお粥を食べに行くらしい。


 私は自宅に到着後、買った物を仕舞ってクマさんのお弁当用にサンドイッチを作ろうか。



 トマト煮込みのハンバーグは、昨日の内にハンバーグを取り出して汁の方を煮詰めてソースにしておいた。


 バターを塗ったフランスパンを半分に切って、切れ込みを入れてハンバーグを挟んでトマトソースをかけてラップに包んだからOK。

 汁漏れするかもしれないから半分ずつフリーザーバッグに入れる。



 同じくフランスパンにバターとマヨネーズにマスタードを塗ってレタスと一緒にチキンソテーをサンド。こちらも半分に切ってフリーザーバッグにin。


 丸パンには甘いずんだペーストをたっぷり塗る。


 後は瓶詰めのピクルス。ピクルス液は抜いた。それとりんご3個に大きめのバナナを3本。全部保冷袋に入れればOK!



 私はりんごを齧りながら、馬車の迎えの時間まで過ごした。





 いい時間になったので、支度をしてからマシロさんに行って来ますして1階まで降りる。



 鈴木さんとクマさんが居たので挨拶して、クマさんにお弁当を手渡した。




「瓶が入ってるから気をつけてね。食べたのは洗わずに私に渡してくれれば大丈夫。保冷袋ごと、2階のドアノブに掛けといて貰ってもいいかな?」




「うん。ありがとうお姉ちゃん」




 人型クマさんにハグされて頭同士をグリグリされた。頭の匂いを嗅ぐのは止めなさい。




「…………」




 スーハースーハーするのは止めたが、返事は無い模様。




「………朝から何イチャついている。行くぞ」




「ユリエルさんおはようございます」




 全員揃ったので、馬車に乗り込み出勤。ユリエルさんとは馬車乗り場で別れたが、クマさんが図書室の前まで送ってくれるそうだ。

 受付でクマさんの保冷袋を登録して、図書室の道のりを歩く。




「お姉ちゃん、昨日のパンを包んでた布は保冷袋と一緒に返せばいいかな?そうだ、りんごのヤツが美味しかったよ…ありがとう」




「うん、一緒で大丈夫だよ。今日は丸いパンが枝豆の甘いやつだよ」




「………楽しみ」




 はにかむ弟が安定の癒し。今日もいっぱい食べてねクマさん。


 図書室前に到着したので、クマさんと別れて私はドアを潜った………。




「待ってたぞ。この間は女子会ありがとう。で、ユリエル様はその後どうなったんだ?」




「あ、椿さんおはようございます」




 ここにも1人、ユリエルさんとカールさんの進捗状況が気になる人を発見した。







「家出中か…中々思い切った事をしてるなユリエル様。くっ…わたしも男子会に参加して話しを聞きたい……」




 始業のチャイム前なので、地下の作業場で話しをしている。

 一応手は2人共動かしてるよ…主に話メインだけど。




「そうだ。わたしの兄を送り込んでもいいだろうか?丁度エデンの臨時会議があるとかで神聖帝国から来ているんだ」




「会議があるなら忙しく無いですか?」




「いや、会議自体はまだ先で、今はわたしの家に遊びに来ているんだ。政略結婚だが、同性の伴侶で……つばめも一度会っているだろう?ジョン義理兄のパートナーがわたしの兄だ。養女も取っているので、ユリエル様と少し似ている境遇だと思う」




 『神聖帝国最古の聖書レプリカ』の話しの時に会ったジョンさんか!


 とりあえず、ユリエルさんに確認してみるのはどうだろう?と提案したら「ユリエル様に手紙を出してみる」と言って部屋をダッシュで出て行った。



 ポツンと部屋に残された私は、本格的に解析依頼待ちの巻物の翻訳作業に取り掛かる事にした。いや待てよ…政略結婚って言ってたけど………ユリエルさんがジョンさんの本にサインしてた家名『皇家』じゃ無かったかな?



 教科書に神聖帝国の皇帝は『皇家』って書いてあったけど、もしかして血縁者だったりして………まさかね。

 いや、でもエデンの臨時会議に………やめた。考えても仕方ないよね。今は仕事しよう。チャイムもさっき鳴ったし。





 今日の分の仕事を終わらせて、私は地上の図書室に来た。

 ヴァニア大陸の『世界樹の国』関係の本を探してみたが、あんまり無い。

 一応手に取り、パラパラめくってみる……ヴァニア大陸で書かれた本みたいだ。



 国全体に結界魔法。城壁には強固な城壁結界が掛かって居ると思われる。尚、詳細は不明。他国民が国境線を越えると生死を問われないため、国境線を越えた生存者の証言のみで余り情報が少ないらしい。


 世界的に有名なサミュエル・カミュが国境線を越えて『世界樹の国』で安否不明。その後、親族と思われるエルフ族3名が弔いの旅の為国から出て来たが、国の内部事情は秘匿されたまま。恐らく高度な魔道具技術を有していると思われる。

 弔いの旅によりサミュエル・カミュの死亡を確認。

 現在はエデンに血縁者(孫)と思われるユリエル・カミュがカイザス国の戸籍を取得したと思われる。



 ユリエルさんの名前が本に載ってる…ちょっと吹きそうになった。

 そっか…私もこんな秘匿されてる国の元住民だと思われてるのか。確かにこんだけ情報が少ないんじゃ、他の国から見たら異世界みたいな国だね。



 現在、世界樹の国のエルフ族はユリエルさんしか外で確認されていない。

 そんなユリエルさんより、希少な異世界人で…更にバレたら扱いがどうなるか分からない私って………。


 コンスタンティンさんが前に言っていた。独り立ちしたいならそれ相応の覚悟が必要だって。

 あの時は良く分からない言葉だと思ったけど、色んな事を学んで知って行く内に、私って結構無茶な生き方してるなと今更ながら実感。

 今も、そして恐らくこれからも、コンスタンティンさんがいる王宮を出たのが正解か悩みながら生きて行くんだろうな。




 とりあえず、なんて善い人達に巡り逢ったんだと感謝しながら生きて行こう。



 王宮にいる時は何でも知ってると思ってたあのユリエルさんが、街では買い物ではしゃいで、恋愛関係の悩みを抱えながら生きてる様に………大なり小なり皆んな悩みや苦労はあるよね。私も頑張ろう。



 私の当面の目標は豆腐と梅酒探しだね。

 梅は実は目処は立ったんだ…でも、梅酒あるかもしれないからもう少し探してみる。乾物屋さんで乾燥わかめ見つけたけど。

 豆腐は………気まずくてカールさんに聞きたくても聞けない状況下だから当分先かな?




 豆腐とワカメの味噌汁の完成が、ちょっと遠く感じる今日この頃だった。

 


 

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