190.5 ユリエル姉4
「すいませーん!カミュじーちゃんのお使いで来ました」
「えるふ様!ヨオコソオ戻リ下サイマシタ……グスンッ…良カッタ」
6番目の話が通じなかった人の所に戻り、世界基準だと言う『共通語』のダイヤルに翻訳の魔道具のメモリを合わせると言葉が通じた。
日記の内容を読んでもらい、うん…そう言えば夜の濃い話し多めだったね。フェイと佐藤の日記の後だと、何か戻って来たなーって感じ。
出会い頭に言葉も交わす前にチューするのは、カミュじーちゃんが手を出す最速記録更新だね。
「早く帰りたい」
「もうちょっとだから待ってナイン」
最近は早く国に帰って家に引きこもりたいが口癖のナイン。
うん、何だか性格がカミュじーちゃんに似てるとは思ったけど、前にも増してナインも変な人になって来たね。
話も終わってさて帰ろうとしたら、プレゼントだと言って装飾品を手渡された。
「ヨロシカッタラオ連レノ方モドウゾ」
「ボクもいいの?ありがとう。じゃぁ、代わりに良い物あげるよ。どっちがいいかな」
「アリガトウゴザイマス…エ?…………」
「死ぬまで身体を焼かれるのと、苦しまずに死ぬのはどっちがいい?」
苦しまずに死ぬ方を選んだので、ナインはそのまま首をはねた。
こうして『弔いの旅』が終わり、ワタシ達は1つの国に『愛無き滅亡』と、1人のカミュじーちゃんの親に『愛ある死』を与えて帰国した。やっぱりお外は怖い所だから自分の国が1番だね。
国に帰って荷解きも早々に、密かにカミュじーちゃんの家をワタシの『両親』に譲り受けていたと言うナインによって家に引きずりこまれてそのまま暫く。
「『ミカ』〜、ナイン〜お客さん来たからいい加減出て来てー」
「助かった!」
「チッ」
お客さんは小柄な竜人だった……悪魔?
「始めまして。カミュ殿の友人の………長い名前ですので『トカゲ』とでも呼んで下さい。実はカミュ殿からローブを預かっているんですけどお引き取りいただけますか?後、こちら私の日記になります」
「わざわざありがとう!本当ありがとう、色々ありがとう!何ならもう少し早く会いたかった」
「ミカ…お疲れ様だね」
産みの親に慰められた。うん、『両親』もカミュじーちゃんとは別に独立した家に住んでいるけど、ワタシの生みの親も大変な目にあってるのは知ってる……ばーちゃんも生みの親もワタシも変な人達の所為で酷い目にあってるからね!はやく集合住宅の皆んなの所に帰りたい。
「実はローブは私の上司が預かっていたんですけど、あの方が此方に伺うと国際問題に発展するので、代わりに私が届けに来ました」
その言葉を聞いて嫌な予感がしたので、ローブのボタンを確認した…やめてカミュじーちゃん、全部大きいボタンとか。
全部で4つ。全てコンパス型で、ひとつ目は『トカゲ』と書かれていて、起動させると青い色のコンパス。トカゲに近づけると針がグルグル回っている…うん、本人。
残りを全て起動させると2つ目は赤色、3つ目は黒色………出たよ黒。カミュじーちゃん、だからやめてってば。4つ目はーー。
「壊れてるのかな?」
ボタンが起動したが、色も何もついてないし針も動かない。
「恐らく既に亡くなった方なんでしょう。魔力の反応が無いみたいですね」
因みに書かれた名前は2つ目『龍神』、3つ目『ピピ』、4つ目『○※◼️△☆』。読めないのが逆に怖いよカミュじーちゃん。
そして龍神って魔王だよね…トカゲの上司らしい。
その後カミュじーちゃんの話しをトカゲとして…佐藤並に迷惑かけてた。ごめんトカゲ。
「苦労もしましたが、あの人のお陰で刺激的な日々でした。亡くなったのが残念でなりません」
「トカゲ、凄い良い悪魔!懐が大っきいね」
素直な感想を行ったらナインに抱っこされて膝の上に乗せられた。解せない。
そして、話は誰がコンパスを持ってカミュの友達に逢いに行くか。
「もう、ミカは連れて行かないよ」
んー…でもなぁ…。実は産みの親の相手が妊娠している。また集合住宅に戻らないで当分育てると言うのでどうしようかな。
先に生まれた子は本人の希望と教育の為に集合住宅に移った。今は同年代の子と楽しく暮らし、たまに家に帰って来るらしい。
ちなみに私も1人産んでナインの希望で元カミュじーちゃんの家で子どもと一緒に暮らしてる。集合住宅に子どもを移してまた弔いの旅に出ようかと思ったけど、ナイン嫌そう。
「ユリエルもうコンパスの相手の所にたどり着いたかなぁー…」
「もしかして、『ユリエル』と言うのはエデンにたどり着いたエルフ族ですか?」
「ユリエル目的地に着いたんだね!」
「私も外界には余り出ないので、詳しくは知りませんが…一時期世界会議の議事録で名前を見ましたね。私もたまたま見る機会があっただけで、その後の詳細は知りませんが」
『コンスタンティン』と書かれた真っ黒な色のコンパスを携えて弔いの旅に出た話しをしたら、トカゲから「飛べないエルフ族が大変な旅に出ましたね…可哀想に」と言われた。
うん、ワタシが言うのも何だけど、カミュじーちゃんの孫で本当可哀想な子。




