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190.5 ユリエル姉1



 ワタシの周りには変な人達がいる。


 特に外からやって来たと言うカミュじーちゃん。


 その変なカミュじーちゃんの考え方や教育方針?それに着いて行けるユリエルとかが変なんだと思ってた。



 国を出て来てから、どうやらワタシの勘違いだったらしい事が判明…外の世界からしてみたら、ワタシの方が変な存在だったね。



 切っ掛けはばーちゃんとカミュじーちゃんが亡くなって『弔いの旅』に出た事だった。




 「このダイヤルはねーちゃんが持って行け。俺は自力でなんとかする。ごめん…バイク、槍、弓、だけはメンテナンスが終わったら持って行くけど、後は前に自作したのがあるから大丈夫だ。じーちゃんの家にある他の武器と魔道具は好きにしていい」




「ユリエル、車はワタシが持って行っていいの?」




「ああ、メンテナンスしといた。そっちは2人旅だから燃料も使って。」




 32個の座標と名前入りボタンと共に手渡されたのは33個の名前と『共通語』と書かれたダイヤル式の魔道具。


 じーちゃんが亡くなった次の日に早速1番近くの『友達』の所に車で向かった。







 街の近くで車を降りて車専用の指輪型魔道具に車を仕舞う。




【×△●?】




「んー、ごめんわかんないやちょっと待ってね」




 1番近いボタンの名前を確認。名前の所までダイヤル式の魔道具のメモリを合わせて起動させると…どうかな?




「これで分かるかな?」




「ア…アア。モシカシテ『弔イノ旅』デスカ?」




「そうなの。座標がこの城壁なんだけど、入れるかな?」




「ドウゾオ通リ下サイ」




 ダイヤル式の翻訳魔道具がちゃんと機能するか分からなかったけど、ちょっと聞き取り辛い以外は大丈夫みたいだね。



 城壁を通り、座標の所まで行く。ドアを開けようとしたが開かなかった…そっか、じーちゃん確かノックしろって言ってたな。




 ドンドンッ




「すみませーん、カミュじーちゃんのお使いで来ました」




 ガチャッ




「え…えるふ様!!?」




「こんにちは」




 1番近い所はハズレだった…家の血筋が絶えたので住宅の持ち主が変わっていたみたい。日記は最後の血筋の人の遺言で墓に入れたと言う事でその場を後にした。




 その後、2番目は引越ししたと言う事で座標の位置が変わっていた。

 住所を教えてもらったけど…地名とか番地とかよくわからない。結局、家に住んでいた人の案内で何とか無事にたどり着けた。




「ありがとう」




「コチラコソ、有難ウゴザイマシタ」




 ドアを開けようとして…そっかノックするんだっけ?




 ドンドンッ




 しーん




 ドンドンッ





「留守の様だね」




「ちょっと待ってみようか」




 変わった街や住宅の作りだねー、なんて夫と話しながらドアの前で待っていると、暫くしたら毛があるのに汗だくだと分かる獣人がこっちに走って来て凄い謝られた。大丈夫!全然待って無いよ、3日位だったから。



 護衛の仕事をしていると言う獣人は「エルフ族が待っている」と仲間伝いに知らせを受けて、急いで帰って来たそうだ。


 お仕事は大丈夫なのか聞いたら仲間が引き受けてくれたそうで、雇い主にもむしろ早く帰れと言われたそうだ。


 半年くらいは余裕で待てるからそんなに急がなくても大丈夫だったんだけどな?




「ごめん、字は読めないから日記を読んで貰ってもいいかな?」




「分カリマシタ」




 所々聞き取りづらい所もあったけど、何とか最後まで読んでもらった。うん、会って10秒でベッドインか。カミュじーちゃんの馬鹿…新婚に何て事聞かせるんだよ。




「ドチラガかみゅ様デスカ?」




「言い忘れてたけどカミュじーちゃん亡くなったんだ。もう待たなくていいよって言いに来たの」




 獣人に滅茶苦茶号泣された。『弔いの旅』の最中である事を伝え、カミュじーちゃんの最後はばーちゃんと幸せそうに天に召されたと伝えると更に泣かれた。


 軽くカミュじーちゃんの話をお互いにして、雑談の中で街の作りが不思議だと話したら、何処もこんな作りだと言われた。


 皆んな別々に暮らす人もいるなんてカミュじーちゃん並に変なの?と思ったけど、実は後30人カミュじーちゃんの友達に会いに行くんだー、なんて話したら「次ニ早ク行ッテ下サイ!」と急かされた。ので、2番目の住宅を後にした。




 3番目と4番目の座標は凄い近くだったから同じ街だと思ったけど、更地だった。次に行く。




 5番目の座標はポツンと小さな家が一件。家の周囲に結界が張られていたのでどうしよっかな?とりあえずノック。




 ドンドンッ




 ばりーーーーんッッッ




「ありゃ?脆いねこの結界…不良品かな?すみませーん!カミュじーちゃんのお使いで来ましたー」




「かみゅ様ダッテ!!!!?」




 家から飛び出して来たのはドワーフだ。凄ーい。写真で見たことあるけど実物もヒゲもじゃもじゃ。



 今回はちゃんとカミュじーちゃんが亡くなった事を先に話した。ドワーフのもじゃもじゃは残念そうにしてた。


 ここら辺一帯は大きな国があったが、ドラゴンのブレスで全部吹っ飛んで跡形も無くなったそうだ。




「どらごんノぶれすニモ耐エタ結界ガ…」




「ごめんね。ノックしたら壊しちゃった」




「のっくハモウ少シ優シクシテクレ」




「次は気をつけるね」




 カミュじーちゃんを待つ意味も亡くなったし、結界が壊れたので何処かの街に引越しを考えると言うので、じゃぁ一緒に行こうよ。と、言う事になった…壊したのワタシだしね。




「そんな少ない荷物でいいの?」




「コレ以上ハ持テ無イ」




「じゃぁ、代わりに収納してあげるよ!家ごとでいいかな?」




「?」




 家の基礎からえぐって予備のマジックバックに収納し、専用の指輪から車で出す。




「うしろの席どうぞ。ベルト付け方分からないかな?最初はそうだよねー、ワタシもカミュじーちゃんに初めて車に乗せて貰った時は着けて貰った」




「ボクが着けるよ。ここに嵌めるんだ」




「モウ好キニシテ」




 道中話しながら、6番目の街に到着。

 ドワーフのひげもじゃは入国手続きと土地を譲り受けてたので、そこに家を出してくれと言われた。



「広くていいね。地面ちょっと掘るから離れて離れて…これくらいでいっか。はいどうぞ」




「アリガトウゴザイマス」




「ごめん。結界壊しちゃったけど、簡易結界はローブに付いてるから予備が無いんだ。もじゃもじゃはあんまり荷物持て無い様だから代わりに予備のマジックバックあげるね」




「本当アリガトウゴザイマス。家宝ニシマス」




 もじゃもじゃと別れて、ワタシ達は弔いの旅に戻った。





補足


 もじゃもじゃはヴァニア大陸では超有名な魔道具技師兼鍛治師の家系でしたが、カミュが作った魔道具を目の当たりにして、「魔道具って何だろう?知ってる魔道具と全然違う」となった。


 ユリエル姉が言った広い庭は王宮の庭。マジックバックは家宝じゃ無くて最終的に何処かの国で国宝になった。


 



 

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