186話
ユリエルさんとカールさんの出会いはサミュエル・カミュさんが亡くなって、コンスタンティンさんにカミュさんの日記を届けた時。
「………会って早々『毒を盛られて殺されたい』と言って求婚しだが、無視された」
「超熱烈だわ」
「カミュ様の日記…」
「続きお願いします」
エルフ族の最上級の愛情表現は『貴方になら殺されてもいい位愛してる』とか『殺したい位愛してる』らしい。獣人族の求婚も変わってると思ったが、エルフ族も大概変わってるね。
しかし、諦めないユリエルさんは体から籠絡しようとして逆に返り討ちになったらしい。しかし、カールさんも満更な様子では無かったのでその時はそれで満足していた。
「………カミュの話しや、日記に出てくる『カール兄ちゃん』と言う人物がカールだと知ったのは後だった。まさかカミュの兄だとは思わなくてな」
「あまり…似てませんもんね。お顔もですが、ご性格も。それにしても日記…」
「椿、日記は今は置いときなさい。話しの続きが気になるわ」
ユリエルはそのまま世界樹の国からカイザス国にカールさんの養子として移住し、軍に入隊。カールさんとの体だけの関係は現在進行形で変わらなかった。
最初はユリエルさんが成人(100歳)したてで若かったので、カールさんが気にして付き合わないのかと思ったそうだ。
しかし、待てど暮らせどカールさんは何も言って来ない。
「ユリエルさんはちゃんとカールさんに好きとか愛してるとかちゃんと言ってますか?」
「………毎度言っている。何なら結婚誓約書や婚約証明書を本人に渡しているが、無言で目の前で破り捨てられる」
「酷いな」
何故、何も言わないのだろう…他に理由かまある筈だと思って、軍から当時第7長官だったカールさんの元に移動。仕事を手伝いつつ、カールさんの故郷であるハイルング国の事を調べた。
「エルフ族の国は何処も閉鎖的で、おいそれと外部に情報が入って来ないものね。他国の書類を扱う第7文官の仕事に着いたのは確かに賢い選択だわ」
調べてわかった事は、どうやらハイルング国はカールさんに国に戻って来て欲しいみたいだった。手紙と一緒にお見合い相手の釣書がわんさか送られて来たそうだ。
「………釣書や手紙の処分を任された時は腑が煮えくりかえるかと思った」
「ほら、呑みなさいユリエル」
「………あぁ。ゴクゴクゴク……一番美味い酒を寄越せと言ったが、やはり旨いな」
皐月先生は空の瓶を受け取って、ユリエルさんに新たに酒を手渡していた。
しかし、カールさんは国に帰る気が無いと言っていたので安心していたのも束の間…国籍をハイルング国に戻すから一旦養子から抜けて、自力でカイザス国民になってくれと言われたそうだ。
「ユリエル、貴方あの高額な土地代どうやって稼いだのよ?大陸違うから私と違って全額だったでしょう?」
「………もしもの時の為に、カミュの名前を使って創作物を書くなどの時は、私に金が入る様にした。後は執筆者に少しばかり情報提供代などだな。当時の軍も副業禁止だが、文官はそこまで厳しくは無い。本当はいざとなったら、カールを連れて何処か遠くに逃げようと思って貯めていた金だったんだがな…流石に貯めていた金では足りなかったので、魔石を売ったり、カミュが作った武器類を一時的に研究機関に担保にして貰った」
カールさんはハイルング国籍へと変わるが、エルフ族大使館に住むと言うので家自体は戸籍を独立させたユリエルさんが100億円支払いで引き継いだそうだ。
本国に帰る素振りもないし、結局住む所がエルフ族大使館になっただけで関係は変わらず。
「………ミアを引き取ってくれと言われた時は諦めて私と結婚してくれるのかと思ったが……どうやら違った様だ」
「ユリエル様が不憫過ぎてわたし泣きそうなんですけど……」
椿さんの目がうるうるしている。
その後、カールさんはコンスタンティンさんの所に住み着いて、エルフ族大使館にも滅多に帰って来る事は無かった。でも、一応理由があるらしい。
「………ミアに話を聞いたらどうやら王位継承権の問題があるらしい。詳細はミアも知らされていないらしいが」
「王太子殿下がいるはずだけど。そう言えば、何であの国未だに王様が居ないのかしら…」
「それはわたしも気になりました。確か、ゴブリンのスタンピードで女王が亡くなったのに100年もそのままですよね?」
もうね、私は訳わからないので黙って話を聞くに徹してます。
「…………大概的には王太子が王位継承権1位で唯一の娘のミアが2位、3位がカールだ。他は居ない。しかし、ハイルング国の上層部はそうは思ってはいない」
本人達は了承して無いが、継承権1位カールさん、2位王太子、3位ユリエルさんらしい。
しかし、これもあくまでハイルング国上層部の考え。年齢や次の子どもの事を考えると現実的にはユリエルさんが今1番王位に近いと………。
「頓珍漢な質問だったらごめんなさい…そもそもミアさんは何で継承権とやらに入って無いんですか?」
「………詳細は話せないらしいが、ミア本人は資格が無いと言っていた。私が思うに、魔力量が関係しているのかと思うが…現在ドワーフ族並の魔力しか無いからな」
「王太子殿下は次の子どもは?」
「………ミアは無理だろうと言っていた。王太子にたとえ子どもが出来ても、恐らく王太子自ら継承権は与えられないだろうと」
「じゃぁ、ユリエルが次の王位に付かないと王家滅びるんじゃない。ユリエルは王様になる気無いの?」
「………正直に言うと嫌だ。仮にカールと結婚出来て王になったとしても、お互い違う相手も当てがわれるだろう………結婚なんてどうでもいいから、カールを独占出来ればそれでいいと思い始めている」
「カール様もカール様だ…何で今まで教えてくれなかったんだ?酷い話だと思う」
「………私もそこが良くわからないんだ…カールは何がしたいんだ?『隷属の魔石』で話せないのかと思ったら、そうではないと主のコンスタンティンに言われた…。カール本人に聞いても教えてくれない。私が勘違いしただけで、初めから私の事など好きではなかったのかも知れない」
「ユリエル様待って下さい。カール様に『隷属の魔石』とはどう言う事ですか?」




