20 目覚め前クマ3
「……牙はあったか?」
「い…いいえ、無かったわ」
「…彼女の体を触って倦怠感などは?」
「それも無いわ」
「僕もなかったよ」
「……種族判定の魔道具を持ってくる。少し待て」
そう言うとユリエル長官は個室を後にした………魔族って…
「魔族?女神が?」
「………ユリエル長官の様子を見ると、エルフ族よりは可能性が高そうね」
「でも、魔族って大昔に別の大陸にお引越ししたんでしょ?何で王宮のこんな所に居るのかな?」
「とりあえず待ちましょう…ウェルエル、午後の訓練だけどお休みしてここに居てくれるかしら?隊長には後で誰か人をやって伝えとくわ」
「………はい」
ユリエル長官が来るまで僕は女神を観察した。
魔族かぁ…魔族って皆んなこんなに綺麗なのかなぁー……
ダークブロンドの肩に付かないほど短い髪は毛先だけ内側にカールしてる。
キラキラしててツヤツヤしててとても輝いて見える。
まつ毛長いなぁー…お鼻は高いし、お口は少し肉厚で唇は薔薇色だ。
肌は白いし、体の大きさの割に顔は小顔だね。
手足はスラリとしていてどこもやわっこい。
女神だなー…目は何色なんだろう?
どれくらい女神を見ていたんだろう?
いつの間にかユリエル長官が戻ってきて、手には黒い箱を持っていた。
「……彼女の腕を上げて箱に触れさせろ。私は魔道具を動かす」
「はい」
丁度近くに居たので頼まれた。
女神の腕を両手でそーっと持ち上げる。あぁ…腕にも包帯が巻かれてて痛々しいよー。
黒い箱の表面に文字が浮かび上がった…
種族 人族
性別 女
年齢 28歳
※エラーコード4
最寄りの政府機関に速やかに連絡して下さい。
は?人族?????あれ?魔族じゃないの?
あ、エラーコードだ。
「はぁー………………コレは私の手に余る…コンスタンティン様に相談するしかない…」
「えっと…その身長と顔付きで人族なのかしら?人族にしては目鼻立ちがはっきりし過ぎで、まだエルフ族とかドワーフ族だと言われた方が納得するわよ?」
「……私も古い文献でしか読んだことはないが……多分人族なんだろうな」
うわぁ〜…エルフ族の古い文献なら相当昔のなんだろうな……だって平均寿命は人族の5倍だもんね。
エルフ族の国だと成人100歳とか、人族の寿命終わっちゃうよ。
「……毒物反応と細かい身体検査をして、しばらくこの個室に隔離してくれ…検査が済むまで誰も出入りするな。医務室は封鎖する」
封鎖?皆んな出られないの?
「ユリエル長官は大丈夫なのかしら?彼女に触れて、医務室の外に出たり入ったりしてるわよね?」
「……ローブに浄化作用のある魔法陣が組み込まれている。私はコンスタンティン様に指示を仰ぎに行くが、こちらの事は任せた」
わー!浄化の魔法陣って家一軒分位お金かかるって聞いたことあるよ。エルフ族のローブって凄いね。
ー
エルフ族ローブの浄化作用
体表面の清潔を保ちます。お風呂に入らなくても綺麗サッパリ!
エルフ族はしばしば寝食入浴色々忘れるので重宝されてます。
成人の際に親から譲り受けたり、新しいものをオーダーメイドで作ります。
浄化作用の他にもオプションで性能をカスタマイズ出来ます。