167話
『囮役』の説明を受けて私が承諾すると、瑞希さんはウルスラさんと一緒に部屋から出て行った。
その後は普通に仕事して、昼にプレゼント用のジャムを配って周ったりしたよ。午後も普通に仕事。
仕事も終わり定時で帰宅して入浴やら諸々を済ませる。
ついでにバナナのジャムも作ってラッピング済みだ。夕飯は軽く済ませ、大分早めに布団に横になる。
キーーーーーン
キーーーーーン
ガチャ
来たぁっ!!?布団から飛び起きてリビングのマシロさんを確認。ピョンピョンその場で跳ねてはいるが、こちらに寄って来る気配はしない。
私は複雑な心境で寝室の扉を閉めて、枕元に置いてあった肩掛け鞄を斜めがけして、ローブを羽織り保冷袋も忘れずに。ベランダのドアを開けた。
ブーツに足を突っ込んだだけで、靴紐は後でいっか。
転移装置の上の印を確認しながら乗り、コンスタンティンさんを思い浮かべる………………白い光が輝き始めたので、発動の呪文を唱える。
「『転移』」
相変わらず眩しいっ!?
コンスタンティンさんを思い浮かべて浮かべ……あ、余計な事考えたかも。
光が治って目を開けると、知らない庭に居た。あーれー???
「おや、珍しいモノが迷い込んだ様じゃな?」
少し先の縁側に腰掛けているのは、キセルを吹かせた……真っ白い超絶美女。
「こんばんは?」
「今晩は。おぬしは何処から迷い込んだのじゃ?まぁ、良いか。近うよれ………もっとじゃ………まどろっこしい。取って食ったりせんわ」
「うわぁっ!!?」
「軽いのぉ。もう少し食べた方が良いのでは無いか?……よっこいせ」
白い超絶美女にお姫様抱っこされて運ばれた。そしてそのまま縁側に腰掛けられた。いや、あのさ…。
「下ろして貰えたりすると…助かります」
「ならん」
駄目らしい。そっかぁ。
物凄く私の顔を観察されているので、私も白い超絶美女のお顔がよく見える。眼は全部赤いのか。
髪は真っ白い長ーいストレートの長髪。眉毛もまつ毛も白い。肌も、色白通り越して陶器の様だ。お人形さんみたい…いやー、コンスタンティンさん並に見応えのあるお顔だね。
因みにね、胸はボイン通り越してバイーン。さっきから腕に当たってるよ。
「ここって何処ですか?」
「おぬし知らずに来たのか!?………まぁ、今は良い。ところで、我の顔は気に入ったかえ?」
「は、はぁ…」
「なんじゃ、好みじゃ無いのか…………これならどうじゃ?」
「え?」
「反応が薄いの…おぬしは好みのタイプは無いのかえ?」
「タイプ………もふもふ?」
「そうか、ケモノが好みか。兎と狐はどちらが良いかの?」
「うさぎ…」
ちょっと待てと言って一旦私を縁側に座らせて…やっと解放されたよ。靴紐結んじゃお。
白いユリエルさんは庭先に出て大きなうさぎになった。も…もふもふだと。
「触ってもいいですか?」
「好きにせえ」
了承を得たので、私の腕を広げても端に届かない大きな白いうさぎを全身で撫でくりまわした。もふもふ。もふもふ。ふわふわ。もこもこ。
駄目になる系のソファにしたら気持ちいいだろうなぁ…家に欲しい……はっ!!?っていかんいかん。ここ何処よ!?
「あの………」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ
「早かったの…もう迎えが来たようじゃ。おぬし名前は?」
パリーーーーーーンッッッ
「えっ…あ、この音なんですか?名前?私の名前はつば……むぐっ!!!?」
「死にたいの?」
名乗ろうとしたらコンスタンティンさんに口を手で塞がれた。
迎えってコンスタンティンさんだったのか。ところで物騒な単語が聞こえたけど大丈夫かな……私は生きてる多分大丈夫。
「折角張った結界が見るも無惨じゃ…黒いの、どうしてくれる?」
「コレあげるから、張り直してくれる?余りは好きに使って。じゃ、帰ろう」
コンスタンティンさんは何かを投げたよ。アレ何だろう?と確認する前に景色が変わった。
こうして私は白い特大うさぎと別れて、コンスタンティンさんの居住区リビングに転移。
「ふぁ〜…ねむ。」
「今何時で…?え!?コンスタンティンさんっ!!!」
コンスタンティンさんは、そのまま床に崩れ落ちて動かなくなった。