162話
『地下街出入り口』と書かれた階段を降り切ると、ちょっとしたスペース。
ベンチに腰掛けてる人が、待ち合わせ相手らしき人と合流していた。これからお買い物ですか?私もなんです。楽しみ。
その先は両側ズラッと並んだ店頭販売店舗。道幅広〜い。
大きめの光沢のあるタイル貼りされた道とも相まって、何だか駅地下の雰囲気と似ている。天井は高めで灯りもあるので地下だけど意外と明るい。
「とりあえず見て回りましょうか。説明は歩きながらしますね」
「はい」
カンジさんを先頭に歩きながら説明を受ける。
この西地下街は主に食品関係が置いてあるが、加工品がメインで所々小物や生活用品など。チーズの切り売りしてる!
先程入った地下街出入り口とは別に反対側にも出入り口があるっぽい。そちらは『西地下入り口2』と表記されてる。
この地下街の店頭販売スペースは全て貸店舗で、食料品や加工品などの食べ物は魔道具で賞味期限などを調べてから持ち込みされ、店頭販売されている様だ。
色々いっぺんに見て回れるから、買い物のしやすさで考えたら断然便利だと思う。ミニスーパーよりかは安いかな?
西地下街の全体の営業時間は年中無休の11時〜20時まで。
店舗によって店頭販売時間は違うので、詳しくは看板横に書かれている営業時間やカウンターに置いてある立札を確認するといいだろうと言われた。了解です。
「後は、東側大通りの朝市が終わってから流れて来る品物もありますね」
中心に行く程野菜や果物などチラホラ見えはじめた。野菜や果物は朝市より若干割高かな?
更に進むと空き店舗。基本的に中心は当日貸し出し用の店舗で入り口近くは年間、月間。後は合間に週貸しの店舗が入るそうだ。
年間貸し出しは大体看板が掲げてあるみたい。
一通り見終わると、カンジさんに何処の店がよかったか聞かれたが、正直いっぱいあり過ぎて迷ってしまったと伝えると、入り口付近にある馴染みの店を紹介された。
『案山子の調味料 西地下街店』
「テンションが上がる店ですね。よろしくお願いします」
「あら、お上手ですこと。こちらこそ宜しくお願い致します」
店員さんは人族女性。身なりがいいし、お上品な感じですね。
調味料などの品は北西区画のお屋敷住まいの人族の料理人によく売れるらしいよ。
早速カウンターに置いてある見本の品物を見せてもらうとスパイスを多く扱ってるみたいだ。
乾燥パセリと乾燥バジル、肉料理に合うと言うミックススパイスやシナモンスティック、瓶詰めのマヨネーズを購入。ウハウハです。全部賞味期限のシールが貼ってあるね。
後は子どものオヤツを買いたいと言うカンジさんについて行ったら乾物屋さんみたいな所だった。
鮭とばを買っていたので、私も便乗して買った。ついでにジャーキーもください!
ウルスラさん宅のお子さんは2人とも獣人族虎種らしいので、オヤツもジャーキー(肉)や魚肉の乾物に齧り付いて食べるのが最近は好きらしい。
「ジャーキーは実家が肉屋なので、そちらで生肉買って手作りしてます」
「………もしかして、大通りの『花丸肉屋』のお肉屋さんですか?」
「そうなんですよ。毎度お買い上げありがとうございます」
なんと、私が買いに行ってるお肉屋さんの息子さんがカンジさんだった。世間って狭いね。いつもお世話になってます。
ー
肉屋の息子カンジ
父「これ、孫に小遣いでも渡してくれ」
カンジ「どうしたの急に?こんな何でも無い日に小遣いなんて」
父「最近エルフ族が買いにくるんだよな。『エルフ族も思わず買う位美味い花丸肉屋』ってんで、前にも増して売り上げがいいんよ」
カンジ「はははっ!冗談が過ぎるよ親父。エルフ族が肉なんて食べる訳無いって」
後日、嫁の職場の方?の買い物に付き添う事になって内心度肝を抜く羽目になった。マイハニーよ、ウェルエル君は聞いてたがもう1人がエルフ族なんて聞いてないぞ。近距離のエルフ族何か拝みたくなる。
つばめ「わー、乾物屋さんですか?ジャーキー(肉)美味しそう」
カンジ「は…ははは。喜んでもらえて良かったです。ウルスラ、子ども達のオヤツに鮭の乾物買って行こう」
(あ、やっぱりこの人絶対店の常連さんだっ!!!親父疑ってごめん!今度いい酒持って行く)
ウルスラ「そうですね。喜びそう。最近お気に入りですからね」