159話
お待たせしました。時間軸戻ります。
目覚め前クマ→目覚め→二章→一章からの話の続きの三章です。
お世話になってる方々や引越し祝いのお返し、お隣りさんにジャムを作って、1階厨房にある魔道具でジャムの賞味期限を調べ終わったところからになります。
ウルスラと約束していたウェルエルに洋服着せよう作戦遂行の為、又つばめ本人が大きめサイズの服など購入のためお出かけ。未だにカボチャパンツのつばめは、果たして普通の下着を買えるのか。
調味料が購入出来そうな、場所の分かり辛い西地下街にウルスラの旦那が案内として同行予定。
作ったジャムの賞味期限を全て調べ終わったので厨房を後にする。
2階の居住区に戻りラッピングされたジャムを全て冷蔵庫に仕舞って行く。よし、完璧。
私は出かける支度をして、引越し挨拶用のジャムを箱に入れてからさらに保冷袋に入れてマシロさんをお供にお隣の本屋さんに向かった。
今日は日曜で隣の本屋さん『五月雨書店』は休みだが、2階が居住区になっている。店の外に階段を登ってインターホンを………無いな?ドアノッカーがあったのでトントンしてみた。
「はーい。どちらさんだー?」
「隣に越して来たつばめでーす」
ドア越しに聞こえて来た声に大きく返事をすると、内側からドアが開いた。
現れたのは無精髭を生やした人族男性の『雄也』さん。多分40代位。
「お仕事中でしたか?」
「いや、ひと息入れようとしてた。今日はどうした?」
「前に話していたりんごのジャムを持って来ました。この間は手ぶらですいませんでした」
「わざわざサンキューな。茶でも飲んで行くか?」
これから出かける旨を伝えると「また今度な」と言って気怠げなご様子だ。
りんごジャムと蜂蜜りんごジャムを保冷袋ごと手渡す。
「冷蔵だと1年、常温だと1か月持ちますが、蓋を開けたら冷蔵保存で早めに召し上がって下さい」
「わかったー…ふぁ〜……」
欠伸をしているが、どうやら徹夜で仕事してたみたいだ…お疲れ様です。
雄也さんは書店の店主さんだが、画家さんでもある。『五月雨書店』の営業時間が不定休の10時〜15時と短いのも制作活動の為らしい。
店番にアルバイトの方も雇う予定とかで、この間は丁度研修の子と一緒に店にいたね。
どちらかと言うと画家が本業で書店営業の方がついでみたいな感じなのかな?
ジャムも無事に受け取ってもらえたので、一旦自宅に戻って……ちょっと早いけど、待ち合わせ場所に向かおうかな。
ウルスラさんとクマさんに渡す用のジャムを持って、私は待ち合わせ場所の時計塔に向かった。
時計塔に到着して暫くすると、人型のクマさんが現れた。今日はちゃんと洋服着てる。黄色い長靴は変わらないけど。
「お姉ちゃんこんにちは」
「こんにちはクマさん。これ、よかったらどうぞ。エアコン設置してくれたお礼です」
「?」
手渡した保冷袋に蜂蜜りんごジャムが入っている事を伝えと、滅茶苦茶喜ばれた。クマさん用に大瓶で作っておいてよかった。いっぱい召し上がれ。
「わー!わー!食べるの楽しみだな♪そうだ、お姉ちゃんだから敬語は使わ無いで普通にお話しして?」
「うん、わかった」
弟のクマが可愛い件。もう少し慣れたら今度お姉ちゃんにモフモフさせてくれ、ちょっとでいいから。まだお互い仲良くなって無いから私自重しろ。
頑張れ私の自制心。「お姉ちゃんの変態」と、言われたら目も当てられないから。
クマさんとおしゃべりしてると、ウルスラさんと旦那さんらしき人がコチラに向かって来るのが見えた。
「待たせてしまったでしょうか?」
「いえ、私が早く来過ぎただけですから大丈夫ですよ」
挨拶もそこそこに旦那さんを紹介していただいた。旦那さんの詳しい話しとかは事前に聞いてなかったので、ちょっと気になっていたんだ。
「はじめまして。ウルスラがいつもお世話になっています。名前は『カンジ』と言いますが、ウルスラの旦那とでも呼んで下さい」
「はじめまして、こちらこそいつもウルスラさんには大変お世話になっています。つばめと言います。今日はよろしくお願いします、ウルスラさんの旦那さん」
ウルスラさんの旦那さんは細かなウェーブがかかった黒い長髪をうしろでひとまとめにした、ヒゲもじゃ少なめのドワーフ族だった。
おー…ウルスラさんの旦那さんってドワーフ族だったんだね。何か意外な気がするな?てっきり同じ獣人族辺りだと勝手に想像してました。
ー
カンジ ドワーフ族男性
父親がドワーフ族。母親が人族。
軍の中級魔道具技師(限定上級)として在籍していたが、当時ベスティア国軍に在籍していたウルスラに猛アタックされた末に結婚。「軍が天職の嫁を退団させるのは忍びない」との事でウルスラの妊娠を機に軍を定年で退役。将来的には家の家業を引き継ぐ跡取り息子。
今は子育て中だが、たまに家の手伝いと言う名のアルバイトをして自分の酒代の足しにしている。住まいは医療都市。