158話
とりあえず当面の食料と言う事で、ロジャーさんが買って来てくれたらしい。
「ティーセットや茶葉までいただいて、ありがとうございます」
「いえ!お引越しおめでとうございます。何を渡そうか迷ったんですけど……疲れた日には紅茶でも飲んで、ホッと一息ついて下さい」
折角なんで、早速3人で紅茶をいただく事に。あー…染み渡る。暫く雑談してからロジャーさんは帰って行った。
「8時になったら1階正面に鈴木が迎えに来るから、それまでに支度しといてね?」
「はい。コンスタンティンさん、色々手配していただいてありがとうございました」
「どういたしまして。それじゃ、またね?」
そうしてコンスタンティンさんは転移装置から帰って行った。
私は皐月先生からもらった目覚まし時計で時間を確認。まだ余裕があるので、仕舞った物の確認や部屋をもう1度見て回る。
本当に王宮から出れたんだ……スピード引越しだったね。
荷物は少ないけど、ロジャーさんが持って来てくれた食料もあるし何とか生活出来そう。
早く買い物行って色々部屋の物を増やして行きたいな。
いい時間になったので、タオル地のハンカチや身だしなみ用品を肩掛け鞄の中に入れて行く。一応筆記用具もね。
今はスカスカだけど、コレから中身増やす予定だから問題無いもんね!直入れだから、とりあえずポーチ欲しいよ。
ローブを羽織りブーツを履いて玄関のドアを開ける。
「いってきます」
ちょっとさむーい。
夏頃この世界に来て……大分寒くなって来たね。
ユリエルさんのお下がり以外の冬服早く買い足さないと、寒がりの私にはキツイかも。
部屋も少しヒンヤリしてたから、エアコン欲しいな。そもそも、エアコンあるかな?冷蔵庫とかあるから多分大丈夫だと思いたい。無かった時はまた考えよう。
おどり場に足を踏み入れ、階段を降って壁沿いに進む。
1階店舗前のスペースに止まった馬車の前に鈴木さんが既に待機していた。
「つばめ様。お早う御座います。今日から送迎を担当させて頂く事と成りました、今後とも宜しくお願い致します。」
「こちらこそよろしくお願いします鈴木さん」
鈴木さんと挨拶を済ませると、私は振り返って自宅の外観を眺めた。外からはこんな風に見えるんだ……
。
1階は現在シャッターが降りていて販売スペースは見えないが、近い将来あそこで食べ物を売って生活して行くのか…こう見ると中々立派な建物だね。
何売ろうかなぁー。自炊もしたいけど、市場調査がてら街で外食とか食べ歩きしてみたいな。
異世界に来てから早い様で長かった3ヶ月。こうして私は自分の帰る場所を手に入れた。
馬車の発進の合図や、色々説明していただいて馬車に乗り込む。あっと言う間に王宮に到着。
降りる時に鈴木さんに手を差し出されたので、何かと思ったら降りる時危ないから捕まれと………よろけたら鈴木さんを踏み潰しそう。大丈夫ですか、そうですか。
私に潰されても本望だとか、ジョークの言える紳士だね鈴木さん。面白い人は嫌いじゃ無いのです。
ここで私がコケたら冗談じゃ無くて本当に鈴木さんが危ないので、細心の注意をはらって馬車から降りたよ。足と手に注意を向けて降りるって中々難しいね。
「お早いお帰りをお待ち申し上げております。行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます」
馬車乗り場を降りて道沿いに進むと、建物の入り口前にロジャーさんが立っていた。
受付での魔道具の検査や王宮に入る際の手順などを教わり、第7長官室の道順を習う。
ドアをノックして開けると、既にユリエルさんが出勤していた。
「おはようございます」
「…ああ」
そして、私の机の上を見るとこんもりと手紙の山が出来てた……えぇー…。
「……それを片付けろ。仕事が出来ん」
よく見れば、ユリエルさんの机の上にも書類の束。置ききれなかったのか、いつもお茶をするテーブルの上に『急ぎ』、『後』、『未分類』と積み上げられた書類の山。
「……1週間休みは無いと思え」
「………はい」
新生活と共に激務が一緒にやって来た。
私が街での1人暮らしを満喫出来るのは暫く後の話し。
2章王宮生活編終了です。
次回予告
3章 食事会編
女子会、男子会、食事会、皆んなで集まって美味しい物を食べながら色々お話しします(3章閑話含む全92話予定)。
閑話にユリエル姉の『弔いの旅』の話しが登場予定です。
近親婚、ガールズラブ?、ボーイズラブ?のタグを増やしました。苦手な方はご注意下さい。
ここまでお読み頂きありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。