156話
カールさんがリビングに冷たい紅茶を運んで来てくれて、コンスタンティンさんは一気に飲み干してお代わりを貰っていた。
「あの窓と玄関は今日の作業が終わったら、防犯の為につばめが部屋にいないと開かない作りにする。緊急時医療関係者が家に入るのとは別で、つばめの体調が著しく悪くなったり、何か予期せぬ自体になったら登録者全員の合意でつばめの了承無しに玄関から入れる作りに当面しようと思ってたんだけど、それでいいかな?」
「はい、よろしくお願いします」
「ちなみにその登録者に私は含まれない」
「???…何でですか?」
「私が『つばめの家の玄関開けるから立ち会え』って登録者に言ったらどうなると思う?」
「皆んな立ち会うと思います」
「そう。何の疑問も持たずに皆んな合意してしまうから余り意味が無いし、逆もまたありえるでしょ?私が扉を開ける必要が無いと判断したら直ぐに頷いちゃうだろうな」
現在登録者は4人。ユリエルさん、ロジャーさん、皐月先生、後は呼べば来る護衛の人。
コンスタンティンさんを除くと、ロジャーさんと護衛の人は直ぐに合意するけど、ユリエルさんと皐月先生は『扉を開ける必要はあるか』と少なくとも疑いはするだろうと言われた。
「この世界の多くの人間は理解しないと思うが、私は自分のことを人間だと思ってる。そりゃ、普通の人より頑丈だし、寿命も長いしどっかの国では崇め奉っているけど、別に全知全能の神って訳じゃ無い。普通の人間の尺度とは違うが腹が減れば物も食うし、眠たければ寝るし、魔力を消費すれば疲れもするんだよ。時には間違いだって犯す。絶対の信頼を置かれても正直困るんだ……わかった?」
「なんとなく?でも、コンスタンティンさんって法律的には私のお父さんですよね…娘の家に合鍵持って遊びに来たり、具合が悪かったら家に様子を見に来たり、私が居なくても部屋に上がるのは無しなんですか?」
「……そうきたか。正直そんな返しで来ると思わなかったけど、つばめは私の事『父親』だと思えるの?」
「父親…………んー…よくわかりません」
「そうだよね。もう説明するのも馬鹿らしくなって来ちゃった…カール助けてくれない?」
「嫌ですよ。主が自分で何とかして下さい」
「はぁ…つばめ、明日も仕事らしいからもう今日は寝よっか?」
「……はい」
コンスタンティンさんに案内されたのは結構奥まった所にある部屋だった。
執務室っぽい部屋の隣にある寝室に寝てくれと言われたのでベッドに横になる。
「ごめんね?寝る所は今こことカールの所位しか無いんだ。今日だけ我慢して」
「もしかしてコンスタンティンさんのベッドですか?」
「カールのベッド使う?私は徹夜だからここは使わないよ」
「イエ、大丈夫デス………あ。」
「どうしたの?」
そう言えば、洗濯物回しっぱなしなのを忘れていた。畳んでおかないと。
「いいよ、パパが畳んどいてあげる」
「え゛?それは流石に…」
「つばめって私のパンツとか平気で畳めそうだよね?」
「たためますね」
「それと一緒だよ。代わりに今度私の服畳んでね…今日はもう寝な。明日朝早くに起こすからね?」
「………はい。おやすみなさい」
「おやすみつばめ」
疲れた…大変な日だった。目を閉じるとすぐに睡魔がやって来た。
こうして私の怒涛の1日は終わりを告げた。
「この際父親も有りかもな…」
枕元で呟かれた誰かの言葉は、夢うつつだった私の耳に届く事は無かった。
ー
つばめのパンツを畳んだのは
コンスタンティン「また呼び寄せてごめんね?」
皐月「どうしました?つばめさんに用意した物で何か足りない物でもあったかしら?」
コンスタンティン「つばめの洋服畳んで欲しいんだけど、お願い出来るかな?いい酒あげるから」
皐月「え?それだけですか?…お酒は欲しいですけど。わざわざ洋服畳む為に、こんな秘匿する様な移動手段を私に教えたんですか???」
コンスタンティン「そうだよ?」
異世界人ってカボチャのパンツ愛用してるのかしら?と、皐月にあらぬ誤解を与えたが、無事につばめの洋服は畳まれてリビングのテーブル上に置かれたとさ。めでたしめでたし。