150話
コンスタンティンさんに、遅れてすいませんと謝罪したら「こっちが急に呼び出しただけだから気にしないで?待たされたとも思わなかったし」と言われた。
コンスタンティンさんの中では、30分は大した時間じゃ無いらしい。100年待たされたら流石に呼びに行くかもとか言われたけど、本気か冗談か判断に困る。
ちなみに、カールさんに台所借りてすいませんと言ったら「レシピください」と言われた。了解です。
現在はカールさんのキッチン近くのテーブルで皆んなでお話し中。
ユリエルさんが「粉が無い」と言っていたのはホットケーキミックスが無いだけで、薄力粉とかはちゃんとあったよ。
折角なのでパンケーキじゃなくて、オーブンを借りてケーキサクレにして焼いている最中だ。
キャラメルソースと生クリームはカールさんにお願いした。お手伝いまでして下さって、重ね重ねありがとうございます。
「王子は無視して構わない。話しかけられてもこちらが話さなければ問題無い。手を出して来たら流石に奏が止めるだろう」
「シカトしろって事ですか?」
「そうだ」
それは…精神的苦痛が凄そう。
でも、ユリエルさん曰く必要な事らしいので何とかやってみる。ダメだったらまた考えよう。
手紙の返事位は出すけど、それ以外はノータッチの方向で話しがまとまった。
ケーキサクレは焼きはじめて10分たった所で、生地に切れ目を入れてから再びオーブンに戻す。
まだ焼けないので、後の焼き加減もカールさんにお願いして、私はユリエルさんと一緒に一旦客室に帰る事にした。
夕飯を急いで食べてから再びコンスタンティンさんの居住区に戻る。
「これくらい焼けば大丈夫ですか?」
「良さそうです。ありがとうございます」
竹串で生地の真ん中を指してみたが、ちゃんと焼けてるみたいだ。
切り分けた後に生クリームと切ったバナナ、キャラメルソースをトッピングして出来上がり。
いつの間にか皐月先生もコンスタンティンさんの部屋に来ていて、一緒にバナナのケーキサクレを食べる。
「美味しいわ。フルーツのパンケーキも美味しかったけど、私はこっちが好みかも」
「それはよかったです」
「つばめ様、ちなみに粉を使わない物は何だったんですか?」
「普通にバナナを潰して卵と混ぜて焼くとパンケーキっぽくなるんですよ」
「…………作れ。これじゃ足りん」
結局バナナのパンケーキもどきを作る羽目になった。全員食べるそうなので、結構な量だね。
材料は至ってシンプル。バナナと卵。追加でバニラビーンズを入れる。
バナナをマッシャーで潰して、卵を入れて泡立て器で混ぜ、バニラビーンズの中身を入れる。
ちなみに、バニラビーンズは包丁で縦に切り目を入れて中身を削いで出した物。
熱したフライパンにバターを投入して、後は生地を入れて両面焼くだけだ。今回は小さめの円形にして火の通りを早くした。
焼き上がったバナナパンケーキもどきにバターと蜂蜜をかけて、生クリームを添えればバナナパンケーキもどきの完成。
「凄い。見た目はパンケーキですね」
「味は………パンケーキよりムチっとしたクレープに近いかしら?これはこれで美味しいわね」
「………………」
ユリエルさんはひたすら無言で口に運んでいた。どうやら相当お腹空いてたのかな?
「味は普通のパンケーキの方が美味しいんですけど、こっちは材料が少ないんで作りやすいんですよね。前は良く弟に……………」
おとうと?
「……さ……」
「…つ……さん?」
「つばめ、ボーっとしてると残りユリエルに食べられちゃうよ?」
「え?」
どうやら私はフリーズしてたみたい。皐月先生がホッした顔をしていた。
「すいません、ちょっと考え事してて。そうだ、弟に良く作ったんですよ………元気にしてるかなぁ…」
「そうなの…弟さん元気にしてるといいわね」
「ははは。そうですね………」
「…………」
「………食べないならもらうが?」
「いや、ちゃんと食べますよ。まだ足りませんか?」
「………普通のパンケーキを食いたい」
「ええ?」
結局その後ユリエルさんが満足するまで前回食べ損ねたと言うフルーツの乗ったベリーソースのパンケーキを量産する羽目に。もちろん生クリームましましで。
「手伝ってもらってすいませんカールさん」
「大丈夫ですよ。私の分のフルーツパンケーキと、バナナのパンケーキもどきのレシピもつけて下されば」
「待って!それじゃ私も食べるわ」
こうして私の長い長い土曜日は終了。
6連勤で更に追い討ちでパンケーキ等を大量に作ったため、次の日のお休みは疲れ過ぎて客室で寝て過ごしたのは言うまでも無い。
ケーキサクレを作る手順は、今回省略させていただきました。工程は先の章で出て来る予定です。
しかし、これからは先は細かな料理手順や、味の感想など記載が無い場合もあります。
話を進め易くする措置になりますので、ご了承いただけると助かります。