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149話



 第7長官室の仕事にも慣れて来て、最近は急ぎの仕事も任される様になった。


 侍女さんだけでは無く、色々な人からの手紙が職場にも届けられる様になって、最近では宛名だけ確認して返事のいらない物はまとめて捨てている。






 そんな時に土曜日の昼食後に読む本を物色していると、私は変な人に遭遇した。



「そなたがつばめか?」



「はい?」



 王宮内では余り見かけない黄色い髪の毛に細かなウェーブがかかっている。誰だこの人???




「本を読む暇があるのに何故私に会う時間が無いんだ?」




「どちら様ですか?」




「無礼だぞ」




 すいません。何が無礼かも良く分からなくて、本当どうしよう。作法とかマナー本とかどっかに無いかな?




「不勉強ですいません」




「よい。許す」




「…………」




「…………」




 どうしようかな?と思っていたら名乗ってくれた。あ、第3王子か。はじめまして、それでは仕事があるので失礼します。


 幸い借りようとしていただけで本は手にしていなかったので、私は地下に文字通り逃げ込んだ。そして、椿さんの執務室だと教えてもらっていた部屋にお邪魔する。




「ここに来るなんて珍しいな。どうかしたのか?」




「第3王子と名乗る方から声をかけられたんですけど、どうしたら…」




「ユリエル長官に確認する。誠一郎、呼んできてくれ」




「わかりました」




 待っている間にお爺サマと呼びたくなる様な方がお茶を淹れてくれた。ありがとうこまざいます、いただきます。


 お茶を飲んでしばらくすると、ユリエルさんと誠一郎さんが戻って来た。




「………直接話しかけて来る者は無視して構わない。しかし、当分の間は他の者が出入り可能な図書室での仕事は休みだ。今日は部屋に帰るぞ」




「待ってくれ!そしたら、神聖帝国から依頼が来ているレプリカだけでも見て欲しい」




「………今日の午後だけだ。私が迎えに来るまで地下からは出るなよ」




 それだけ言って、ユリエルさんは足早に部屋を後にした。


 その後、椿さんと先程お茶を淹れてくれたお爺サンこと、『ゲン』さんと一緒に地下の階段を下がって下がって…地下何階?と言う所の部屋に案内された。



 部屋はいつもの作業部屋みたいな作りだが、テーブル上には箱型の魔道具が数個だけで、壁の棚などが無い分広く感じる。




「この保存の魔道具は特殊なモノで、テーブルに固定してあるので動かせない。このまま翻訳作業をして欲しい。手袋等は用意してあるのを使ってくれ。部屋の物は全て持ち出し禁止だ」




「わかりました…」




「わたしは上に一旦戻るが、わからなければ源さんに聞いてくれ。後でまた来るからな。源さん、後はよろしくお願いします」




「任されよう」




 今回はいつもの付属の封筒が無いので、どこまで書いていいかわからない。


 源さんに細かな翻訳指示内容などを口答で聞きながら、作業を開始する。1番始めは前に拝見したレプリカだった。


 慎重に紙をひっくり返したり、文字だけ書き写したりする。確認作業を行って…はい、終了。

 翻訳した物と文字を書き写した物はそのままテーブルの上に並べて置いておく。サインは不要。




 次はよくわからない抽象的な言葉の羅列。次は……ん?読めない。




「これは…読めないですね。ただの絵みたいです。どうしたらいいですか?」




「『ただの絵』と記入して先に進もう。まだまだ翻訳するものがあるからな」



「?」



 残り3個でまだまだ?と思ったら後5部屋分残っているらしい。そ…そっか。それは急がないと。


 丁寧に…間違いが無い様に、なるべく素早く作業していると途中から椿さんが合流して、何やら私が書いた紙を箱に閉まって、さらに保存の魔道具もろとも大きな入れ物に入れはじめだ。




「新人、集中しろ。間違いがあっても後で直せないぞ」




「はい!」




 源さんに叱責を受けたあと気合いを入れ直して、3部屋終わった所でトイレ休憩。その後、5部屋目の途中で就業のチャイムが鳴った。






 今まで1枚の紙だったが、最後のだけ装飾された本の様な形状で中々終わらない。残り3ページと言う所で誠一郎さんが呼びに来た。




「ユリエル長官が迎えに来ました。このまま禁書庫まで行くそうです」




「……つばめ、行くぞ」




「後3ページ」




「………コンスタンティン様を待たせるのか?」




「パンケーキ」




「………」




「キャラメルソース」




「…………………おい」




「甘い生クリーム、ましまし?」




「………30分だ。後で迎えに戻る」







 ユリエルさんは部屋から出て行ったが、また直ぐに戻って来た。




「………粉がない。昨日使い切ったそうだ」




「バナナありました?」




「………あぁ」




「じゃあ、大丈夫です」




 また部屋から出て行ったユリエルさん。気にせず翻訳作業等を急ぐと、何とか全部終わらせる事が出来た。精神的に疲れたよ。



 椿さん達に挨拶もソコソコに、その後キッカリ30分で迎えに来たユリエルさんに強制連行。


 長い長い階段を降りて禁書庫に入り、肉体的にも疲れた私を待っていたのは笑顔のカールさんだった。




「準備できてますよ」




 今日作るなんてひと言も言って無いけど後日と言えない雰囲気で、私はカールさん自慢のキッチンに向かった。





司書達のその後




源「ユリエル長官をアゴで使うとは…」


椿「神様をお待たせするなんて、何て怖い物知らずなんだ」


誠一郎「生クリームましましって気になりますね。最近出来たパンケーキを出す店に皆んなで行きませんか?」


椿「コレ終わったら行くか」


源「私が奢るな」


 その後、源の奢りで美味しいパンケーキをお腹いっぱい皆んなで食べましたとさ。めでたしめでたし。






 

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