148.5 椿4
月日は流れて学園も無事に卒業し、わたしは現在学園都市の専門学校でお世話になっている。
在学中に『司書補佐』、『司書』や語学系の資格を授業で取得し、今は『修復師』と色々な他国の言語を学ぶ為に司書専門学校に通いはじめた。
学園都市に家を借りて、主に母親と侍女などと一緒に暮らしている。
仕事柄母親が家にずっと居る事は叶わないが、誰かしら家族が家にいる様にしてくれているみたいだ。今日は2番目の兄だった。
「おかえり」
「ただいま」
2番目の兄は寡黙だが、その分スキンシップが他の兄に比べて多い。今も玄関から抱っこされて手を洗い、リビングのソファに降ろされた。
「婚約の話しが出た」
「わたしの?」
「違う。俺か弟だ」
どうやら、『聖女の家系』から婿を取るらしい。ん?婿???
「ムコ???男性?」
「そうだ。婿と養子を取って将来的に俺か弟は他の城壁に移る」
「………」
わたしが政略結婚しないからかと思ったら、どうやら違うらしい。
政略結婚には違いないが、色々事情があるみたいだ。多分『血』の制約がある国の城壁結界関係だろうなとアタリをつけた。
「椿は話しが早くて助かるな」
わたしも2番目の兄は会話が簡潔で、家族の中ではコミュニケーショが取りやすくて楽だ。
結局わたしはカイザス国の王都クリスタの王宮司書を目指す事にした。
なんたってエデンで一番蔵書数が多い。わたしの将来の夢は「毎日本に囲まれて暮らす事」から「カイザス国の王宮司書」と具体的な物になった。
月日はめぐり専門学校を卒業してからは一旦国に帰って留学を終了させ、ずっと免除されていた公務と家庭教師の勉強の側、帝都立図書館でアルバイトがてら司書の業務を学んだ。後は時間の許す限りずっっっと本を読んでいた。
そして、ある時チャンスが巡って来た。
そう、カイザス国の王宮司書の席が空いたのだ。
わたしは求人募集に速やかに応募して、書類審査、筆記試験2回、実技試験2回、集団面接2回、個人面接1回。
健康診断を経てやっと最終面接まで漕ぎ着けた。ここにたどり着くまで半年…長かったな。
「17歳ですか………」
「来月で18歳になります」
年齢制限は就職までに18歳以上だったけど…アウトか?ギリギリセーフ。
面接官がわたしそっちのけで話し合っているけど、これは果たして面接と言えるのだろうか。
わたしがどうしたものかと困り顔でいたら、お爺さんがお茶を出してくれた。ありがとうございます。喉がカラカラで…いい味の紅茶ですね。
あそこの産地は今年天候に恵まれて例年より味がいいですよね。ははは…え?クッキーも?いただきます。
好きな本?わたし雑食なんで何でも読みます。さっき待ち時間で読んだ若者に人気のデートスポット集とか面白かったです。読んでみたい?えっと、今鞄から出しますが………どうですか?絵も付いてて中々見やすいですけど文章が…………あ、何ですかこれ???
いつの間にか合格通知をもらって、お爺さんに部屋から出される。
後日、お爺さんこと王宮司書長にお話しを聞いた。
「わたし絶対面接落とされると思いました」
「馬鹿言いなさんな。筆記2回共に1番の実技試験の言語ごちゃ混ぜ本の速読、暗記100冊クリア。未だに魔力伸びてるのに人族にしては高魔力。保留にされてた魔道具関係の免許も18歳に発行予定で、至って健康。他の図書館で仕事経験もあるから即戦力。どうやったらこんな者が落ちたんだ。落ちる方がおかしいだろう」
いや、面接官が「若すぎる」とか「皇族は『聖女の家系』から苦情が」とか「移住する気か?」とか色々言ってた気がするが。
「何か言いたい事がある奴は仕事で黙らせるんだ。キッチリ働け」
「はい。頑張ります」
キッチリ真面目に人より多く働いた結果、ある時王宮司書長に指名された。
「えぇ?わたしが次の司書長???」
「当然の結果だ。文句がある奴は仕事で示せ」