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144話



「つばめに翻訳関係で会いたいって人がいてね。ほら、昨日のレプリカどうするかって話しだよ。ユリエルもさっきの仕返しで道連れね?今日は退出禁止」



「………わかった」



「昨日の今日でもう話しが行ったんですか?」



「レプリカを本国からこちらに運ぶ際に担当者がいたからね。会ってみる?」



「話を聞くだけなら…」



「じゃあ、上の図書室に行こうか」



 そう言うと食器類はそのままで、コンスタンティンさんの書庫と言う名の禁書庫に入り更に部屋の先にある扉の前に来た。

 扉横にいつもの様にペンダントをかざして3人で入る………行き止まりだった。



「昇降機だよ。つばめには『エレベーター』の方がわかりやすいかな?階段もあるけど、今日はショートカットしよう」



「この世界にもエレベーターってあったんですね」



「………」



 作りは確かにエレベーター。

 階を選択するボタンが無い代わりに入力式だった。


 そして、先程から全く喋らなくなったユリエルさんだが…眉間の皺が凄い事になっているが、話しかける勇気は私には無い。







「着いたよ。ここは地下1階だから、真っ直ぐ行って左に曲がれば階段があるから上の階に上がってね?カウンターで聞けばわかるよ。私は地下に戻るね」



 そう言われてユリエルさんと私はエレベーターを降りる。

 手を振るコンスタンティンを乗せたエレベーターの扉が閉まると、そこは何の変哲も無い壁になった……ふぁんたじー。



「………行くぞ」



 しばらく壁がどうなってるのか気になって見ていたが、ユリエルさんに声をかけられて歩みを進める。



「……コンスタンティン様の居住と同じで主がいないと開かない扉だ」




 呼び出された時は別だが、こちらの用事でコンスタンティンさんの居住区に一人で行く場合は先ぶれを手紙で出せと言われた。

 コンスタンティンさんが不在の時は居住区の扉が開かない的な事も説明を受けたので、もし一人で行く場合は気をつけよう。







 地上に出る階段を登り、カウンターで用事がある事を伝えると、誠一郎さんがカウンター奥から出て来て対応してくれた。


 椿さんが地下にいるとの事で、また来た道を戻ってこの間は入った事が無い階段横のドアをノック。


 あれ?この部屋は身分証いらないのかな?お入り下さいと言われたのでとりあえず入る……あれだ、応接室みたいだ。


 ソファに椿さんと椿さんの正面に黒いスーツ姿の男性が腰掛けていたが、私とユリエルさんを見ると2人とも立ち上がってしまった。




「わざわざご足労いただき、誠に有難うございます。私は神聖帝国『大地神教』『聖女の家系』に末席を賜るジョンと申します」



「………私はカイザス国第7長官室所属、長官のユリエルだ。こちらは昨日から第7長官室臨時補佐官のつばめ」



「こんにちは。つばめと言います」



「……エルフ族……ユリ……エル?失礼ですがファミリーネームは『カミュ』では?」



「……………….…………ああ」



「カミュ様っ!?あぁっ!神のお導きに感謝します!!!」





 何故かジョンさんは膝をついてそのまま土下座の姿勢でユリエルさんに頭を下げた……えぇ……?椿さんにこそっと教えてもらったが、なんでもユリエルさんのお祖父さんが有名人らしい。


 あれか、カールさんの弟さんでコンスタンティンさんの友達で字が読みづらい人。


 私、ユリエルさんのお姉さんの子どもって設定だから知らないの不味いかな…後でユリエルさんに詳しく聞こう。ジョンさんは娘さん共々『カミュ様』なる人のファンらしい。



「ごめんなさい。感動の余り取り乱し、失礼致しました………サインいただいても?」



「……………………ああ」



 ジョンさんは鞄から本を取り出してユリエルさんが見開きを開いた。



「宛名は『マリー』でハイルング語でお願いします!」



「…………ああ」



 ちょっと気になって覗いてみたら『マリーへ、サミュエル・カミュより』と書いていた。ユリエルさんじゃなくてお祖父さんの名前かな?



「………君の分はいいのか?」



「…伴侶がいますので…我慢しま…あ、いや欲しいですけど……」



「.……本を出せ」



 ジョンさんは頬を赤らめながら、サッと鞄から違う本を出していた…素早くて残像しか見えなかったよ。


 パートナーの名前や家名を聞き出していたが『皇家へ 健介、ジョン、マリー末永くお幸せに サミュエル・カミュより』……皇家すめらぎけ?すめらぎ………あ、教科書に載ってた気がするけど気にしない様にしよう。



 ジョンさんが頬を赤らめ、目を潤ませながら「家宝にします」と言ってサイン会は終了した。






 そして本題の話し…うん、何しに来たか一瞬忘れてたけどレプリカの話しをしに来たんだよね。



「つばめ様は…王宮司書にはなられないのですか?」



「はい、ユリエル長官の所でお世話になろうと思います」



「そうですか………」



 ジョンさんはしばらく考え込んでから、翻訳の依頼申請が神聖帝国の『聖女の家系』から既に出ている旨を教えてくれた。

 しかし、カイザス国の司書では無いので個人依頼になる………それだとかなり面倒な事に。面倒な事ってなんぞや?と聞いたら、翻訳作業場所が神聖帝国内になるみたいだ。



「王宮司書でしたら、こちらの地下に作業設備がありますが、個人宅ですと難しいかと…貴重な物です。普段は一般公開されてはおらず、専用の厳重な金庫に保管されている物になりますので、警備の面でも問題があります。恐らく、翻訳するとしたら立会人と金庫の中での作業になるかと…」



 うん、それは確かに面倒臭いね。依頼を断る事は可能なのか聞いたらすっっっごい悲愴感漂う雰囲気と涙目で「か…可能ですよ」と言われた。


 どうしようかな………私が悩んでいると椿さんが提案をしてもいいかと言われた。何だろう?




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