142話
「給湯室の説明をして、ついでに食後のお茶でもいかがかしら?」
「是非」
「お茶を淹れる時は部屋にいる人にも飲むか私は確認してるわ。つばめさんも淹れる時は一応声をかけてみてね」
「わかりました」
「奏君は飲むかしら?」
「いただきます。ユリエル長官とロジャー副長にも聞いて来ますね」
「よろしくね。それじゃ、淹れながら物品の場所とかを説明しちゃうわね」
「よろしくお願いします」
食器の場所や使った、食洗機で洗ったり、電気ケトルみたいな魔道具でのお湯の沸かし方等。
途中で奏君が帰ってきて、聞いた2人も飲むそうなので全部で5人分。
「ここの物品はロジャー副長やユリエル長官の私物なんだけど、自由に使っていい事になってるから気にせず使ってちょうだい。茶葉も定期的にロジャー副長が補充してくれてるから気にしなくていいわ。部署によってはもっと細かく私物なんかは名前を書いて分けてる所もあるけれどウチはゆるいのよね。今の所ここにある物は共有で使うって認識ね。お茶はみんなストレート。ジジイが帰って来たらシュガーポットを目の前に置いておけば勝手に自分で入れるから大丈夫よ」
「わかりました」
カップやソーサー、ポットをお盆に乗せて瑞希さんと一緒に運ぶ。
「お茶はいりましたよー」
「ありがとうございます」
「…ああ」
全員でテーブルとソファーに移動して、お茶を飲みながら雑談した。
どうやらこの第7長官室の仕事は重要な外交にも関わる文書も扱うため、仕事の話をする時はこの部屋内で行うと暗黙の了解があるみたいだ。
「普通の日常の話なら食堂でしてもいいのよ?でも、仕事の些細な質問とかはこうしてお茶でも飲みながら雑談したりしてるわね」
「わかりました。気をつけます…個人的なことで申し訳ありませんが、ユリエル長官質問してもいいですか?」
「……なんだ?」
「私のペンダントにお金が入っているんですけど…何故ですかね?」
「………コンスタンティン様だ。手紙を書いて確認してみろ」
「手紙ですか?」
「……連絡手段だ」
「?」
「何か用事がある時は手紙で知らせてくれって、前にコンスタンティン様がおっしゃっていたんですよ。手紙を書いて奏にでも届けてもらいましょう」
どうやら、私事でも仕事中王宮内の相手なら手紙を出してもいいらしい。
奏君が午後の書類を各部署に提出したりする時についでに一緒に届けてもらえばいいと言われた…スパイに手紙配達って大丈夫かな?
「つばめさんは時間給とかではないので、気にしないで下さい。忙しくなければ仕事中抜けても構いませんし、コンスタンティン様絡みなら、むしろそちらを優先して下さい」
「わかりました…」
キーンコーンカーンコーン…
午後の始業10分前の鐘が鳴ったので、食器類の片付け方など教わる。
自分の仕事机に戻るとユリエルさんがレターセットを何枚かまとめてくれたので、早速手紙を書いて奏君にお願いした。
「よろしくお願いします」
「はい。では行ってきますね」
奏君に任せるの不安しか無いが、ユリエルさんが何も言わないので大丈夫なんだろう…多分。
しばらくすると奏君は帰って来て、コンスタンティンさんの手紙を手渡されたので、早速読んでみる。
『就職祝いと支度金含めて100万ぺリンつばめ名義の口座を作って振り込んだから好きに使って。足りなくなったらまた言ってね』
あ、給料振り込みなのに口座の開設とか頭からスポーンと抜けてたわ。
コンスタンティンさんナイスフォローありがとうございます。そして100万も入れてくれたのか………今度会ったらお礼を言おう。
足りなくなる事は無いと思うけど、来週の給料日までありがたく使わせてもいますね。
さて、稼がねば!
黙々と仕事をしてまとめて『つばめ用』と書かれた箱に書類をまとめて入れていると何やら視線を感じる。
「?」
「つばめさんって辞書とか使わないのかしら?」
「私も言おうと思ったんですけど……棚にある資料や辞書は遠慮なく好きに使ってください」
「………必要無いなら無理に使うな」
「あ…はい、ありがとうこまざいます」
視線はユリエルさん以外の3人。
皆んな辞書片手に書類を翻訳している様だった…ユリエルさんも使って無いしいっか。私が使っても辞書も読めるので意味が無い様に感じる…このまま行こうかな。
しばらく翻訳作業をしていると、ロジャーさんに声をかけられた。
「つばめさん、そろそろお時間なのでキリのいいところで今日は終わりにしましょう」
「わかりました。この書類が終わったら上がらせてもらいますね」
「……それは急ぎでは無い、付箋でも張って明日にしろ。部屋に行く」
「あ、はい」
この机にある物は仕事中好きに使っていいが、この部屋から持ち出し禁止みたいで、補充など必要になったら下っ端の奏君に頼めば補充してくれるそうだ。
言われた通り付箋を張って挨拶してからユリエルさんと一緒に部屋を後にした。