138話
「これはレプリカなんだ。神聖帝国で1番古い文字じゃないかな?本になってるのは私の書庫にあるよ」
「え?あの禁書庫の中にか……中にですか?」
「閲覧禁止棚にあるから君は見れないね」
へー、禁書庫ってコンスタンティンさんの所有なんだと呑気に思っていたら、前に言語系の資格受けた場所じゃない?と、思った………あそこ禁書庫なんだ………。
「昔、君の所の教団創立記念にってもらったんだよ?創設者に」
「ーーーッッッ!?!!!?」
「?」
椿さんは声にならない悲鳴を上げながらオーバーリアクションだか、私はピンと来なかった…記念品だと言う事はわかったけど。
「ところでこのレプリカの解析依頼は出てるの?」
「い…いえ、いつものメンテナンスでして……どういたしましょう?」
「別に危険物って訳じゃ無いから私はどっちでもいいよ?秘匿するのが一番楽だけど、君はそれを望むの?」
「出来れば公にしたいです。知識は宝だ」
「そう言うと思ったよ。でもレプリカの所有者に解析依頼をどうするかを聞く前ににつばめに確認するけど、つばめはどうしたい?」
「私ですか???」
「読んだのはつばめだから、解析依頼を出すとしたらつばめに来るだろうね」
コンスタンティンさんも読めるのに何で?と思ったら、どうやらこのレプリカは神聖帝国の国教『大地神教』の総本山『聖女の家系』所有の物らしい。
「ほら、私が読むと大ごとになるから、あそことはあんまり関わりたくないんだ」
コンスタンティンさんはコソッと私に耳打ちした。耳元での低音ボイスのご褒美ありがとうございます。
じゃなくて……自分達が崇めてる神様に創世記を読んでもらうとか『神託』とか『御告げ』とか言われそう。
「本も返すって言ったんだけど、私の近くが世界で1番安全だから持っててくれって言われちゃってね。君は本いる?」
「っっっ!!?」
椿さんは全力で首をブンブン横に振っている。
大体『大地神教』の人に聞くとあんな感じの反応されると、コンスタンティンさんは笑いながら説明してくれた。神様のイタズラが悪質。
性格フレンドリーで見た目魔王だから、私はコンスタンティンさんが神様だって言われても未だに「凄い人だな」と思うだけだが、普段から崇め奉っている人達にしたら『神』そのものだもんね。
「私もコンスタンティン様って呼んでもいいですか?」
「人前で呼ぶ時はそれでもいいけど、普段はマイダディって呼んでくれるかな?」
「コンスタンティンさん」
「つばめは素直だね。性格ねじくれたユリエルも見習って欲しいよ」
結局、依頼が出たら私が受けるか受けないかは一旦保留となった。
とりあえず、教団?教会?神殿側に「もしかしたら文字が紛れてる可能性がありますが、解析しますか?」と問い合わせだけしてもらって、向こうの出方を見る作戦に出た。
「つばめの好きにはさせるけど、無理強いはダメだからね?」
「かしこまりました!」
コンスタンティンさんは作業スペースを出て行って、椿さんはその場にへたり込んでしまった。
「………腰が抜けた…」
「大丈夫ですか?手を貸しますから、椅子に腰掛けられそうですか?」
「ありがとう」
手で引っ張りあげるのは無理そうなので、肩を貸して近くの椅子に腰掛けてもらった。床は冷たいからね。
「………本当に神様だったんだな…」
どうやら、コンスタンティンさんが椿さんに「君のところの神らしいよ?よろしくね」と初対面の時に挨拶されたそうだ…軽いよコンスタンティンさん、そりゃ信じないって。
カイザス国の王宮に『人族の神様』と言われてる人が住んでいる事は知っていたが、しばらくして『コンスタンティン』と自称神(笑)から名乗られた時も偽名だと思ったらしい。
まさか本人だとは思わなくて、禁書庫の管理でも任されている人だと思っていたみたいだ。さっきまでは。
「神様も恋愛小説読むのか…それが一番ビックリだな」
「何それ詳しく知りたいです」
「就職したら教えるよ…申し訳けないが、上から人を呼んで来てもらってもいいだろうか?」
「わかりました」
こうして、司書の職場見学は無事には済まなかったが、見学自体は終了した。「採用試験はいつでも受け付ける」と言われたので、どうやら就職拒否は今のところ無さそうだ…よかったよ。
お昼を客間で食べて、午後から第7長官室の職場見学に向かった。